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ステータスALL Sの受験生が170キロで高校野球を終わらせた件  作者: 白峰レイ
第2章 大学編

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第9話「戦術そのもの」

会議室の空気は、すでに「評価」から「設計」に移っていた。


ホワイトボードには、投手陣の名前が並んでいる。

その中で、一つだけ赤丸が付けられていた。


――夏目孝太郎。


投手コーチが、ペンを持ったまま言う。


「問題は、使い方です」


監督が頷く。


「全力で投げさせれば、短期決戦では無双する」

「だが、それは“切り札”の使い方だ」


バッテリーコーチが口を挟む。


「先発になると出場試合数が減る」

「大会を通して考えるなら、勿体ない気もする」


一瞬、沈黙。


投手コーチが、別案を出す。


「じゃあクローザーは?」

「九回を全力投球。回跨ぎも問題ない」

「170オーバーを連発できる」


監督は首を横に振った。


「それも違う」


視線を、夏目の名前に落とす。


「彼の価値は、球速だけじゃない」


森山が、静かに言った。


「右も左も使える」

「しかも、投球フォームが安定している」


「7割、8割の出力でも」

「世界レベルの打者を抑えられる」


投手コーチが、考え込むように言う。


「……やはり先発か」


「そうだ」


監督が、はっきり言った。


「先発で投げさせる」

「全力じゃない」


「右だけの登板」

「左だけの登板」


「連投はさせないが交互にすれば登板間隔も狭くできる」

「対戦国によって切り替えてもいい」


ホワイトボードに、丸が書き足される。


〈先発・調整〉


森山が続ける。


「強豪相手には、できれば左で当てたいですね」


「完全な初見殺し」

「対応する頃には、試合が終わってる」


「球数も抑えられる」

「登板間隔も詰められる」


監督は、さらに言った。


「それと――」


少しだけ、口角を上げる。


「彼は、打てる」


その言葉で、会議室がざわつく。


「外野守備も、一流だ」

「肩も強い」


投手コーチが言う。


「つまり……」


監督が、結論を出した。


「投げない日は、外野で使う」


一瞬、冗談のように聞こえた。

だが、誰も笑わなかった。


「投手でエース」

「野手でも主力」


森山が、ゆっくり言う。


「……代表史上、前例がありません」


「だからだ」


監督は言い切った。


「前例がないから、世界は対策できない」


ホワイトボードの前で、監督は振り返る。


「夏目孝太郎は」

「ただの“エース”じゃない」


一拍。


「戦術そのものだ」


その言葉が、会議室に落ちた。


誰も反論しなかった。



同じ頃。


宿舎のジム。


「……なあ」


ダンベルを持ちながら、上野が言う。


「俺たち、とんでもないやつと同じチームになっちまったな」


「今さら気づいたんですか?」


九条が、呆れたように返す。


「ガチの化け物っすよ、あいつは」


夏目は、ベンチに座り、黙々と汗を拭いていた。


自分が、どう使われるか。

そんな話が進んでいることを、まだ知らない。


でも――

自分が「投げるだけの存在じゃない」ことだけは、分かっていた。


(……忙しくなりそうだな)


そんな感想しか、浮かばなかった。


だがその裏で、

このチームは静かに一つの答えに辿り着いていた。


夏目孝太郎は、

一人で試合を変えられる存在だ。


それを、どう使うか。


それが――

この代表の、最大の武器になる。



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