120.サウスブリッジの戦い
『水青竜』の上空から、2つ橋の右側、『サウスブリッジ』防衛隊の先頭集団を目指して飛行していると、ルナ様たちがいると思われる先頭付近の『ヘルヘイム』魔導兵部隊の間から突如、大きな黒影が出現するのが見えてきた。
「ああ!?セバスさん、右、右!『サウスブリッジ』に、何かでっかい機械みたいなドラゴン出ちゃってますって!」
「え~これは想定外の大物・・エミリー、分析を・・」
「はい、副ギルド長。『サウスブリッジ』に現れたメタル装甲の竜、首が2つ・・これより『ツインヘッドドラゴン』と呼称します」
「『ツインヘッドドラゴン』!?さっきは左側の橋の『ノースブリッジ』に『ゴブリンロード』とか5体も変異種出て来て、今度はいきなりルナ様の方に2つ首の竜ですか!?」
「え~敵も勝負に出たようですな~」
『ツインブリッジ』の2つの橋の戦いが激戦を極める。
2本橋のあちらこちらで兵士、冒険者、魔法使いの戦いが繰り広げられていく。上空ではいまだに残る『ゴブリンの乗るワイバーン』部隊と2体の竜の空中戦が続いていた。
『トロント』市街地上空ではワイバーンの空襲に対する対空戦が繰り広げられているものの、街のあちらこちらで黒い煙が上がっていた。
向かって左手の橋、『ノースブリッジ』では、攻撃特化の防衛隊が前進を続ける中、向かって右手の橋、『サウスブリッジ』では『ツインヘッドドラゴン』の出現。
『サウスブリッジ』防衛隊には、ブロンズ冒険者以外、聖女ルナと防御特化の『月の雫』のメンバーしか向かっていない。
両の橋に分かれる4万の4大陸戦士たちに危機が迫ろうとしていた。
(『サウスブリッジ』最前線)
「ツインヘッドドラゴンだと!?」
「ギィロギィロギィロォォーー!!(ブハァァァーー!!)」
機械のようなメタル装甲。二頭の闇のドラゴン、左の頭から黒い炎のブレスを吐きながら、辺りの兵士たちを吹き飛ばし、薙ぎ払っていく。
「圧倒的じゃないか・・」
「聖女ルナ様、お下がり下さい」
「しかし皆様が危険に・・」
(バッサ! バッサ!・・だっ!)
「ルナ様!ジャック=ハート、ただいま助太刀に参りましたぞ!」
「ジャック様!」
「兵士たちよ、怯むな!必殺!サンダーブレード!!」
(ドガァァァーン・・・・)
ジャック=ハートが『雷鳴竜』に乗って『サウスブリッジ』防衛隊の先頭集団にいた聖女ルナに加勢する。『雷鳴竜』から降り立つや、すかさず必殺の『サンダーブレード』を2つ頭の竜の左側の顔目がけて放つが・・。
「やったのか?」
「ジャック=ハート様がやって下さったぞ!」
「・・いや、まだだ・・。私は黒い炎を出す左首を狙ったはず、右首がかばったようにも見えたが・・右首が!再生していくだと!?」
機械装甲のツインヘッドドラゴンの両の首の、左の首をかばうように前にのめり出した右首に、ジャック=ハートのサンダーブレードが直撃。
右頭部が黒い霧になって散り散りになるや、漆黒の闇の光が一瞬光ると、右頭部は再び元に戻っていった。
「ギィロギィロギィロォォーー!!」
「やはり『光属性』無くば闇を完全に浄化できないという事か・・」
「ジャック=ハート様!危険です、お下がり下さい!」
「こちらの『サウスブリッジ』を突破されれば、敵陣に押し入った『ノースブリッジ』にいるハートの部隊が橋上で挟み撃ちに合う。我が命に代えても、ここは突破させんぞ!」
(ばっさ ばっさ)
「ギャヤァァーー!!」
「ジャック=ハート様!上空に、青い竜が現れました!」
「『火のクリスタル』の使徒ミューラ様の『火炎竜』は、今は『トロント』上空にてワイバーンたちと戦闘中の情報です!」
「あの青き竜・・あれは、『水青竜』!」
(ばっさ ばっさ)
『水青竜』が、再生中の右頭部を抱えるツインヘッドドラゴンの前に降り立つ。
サウスブリッジに一瞬噴煙が巻き起こり、『水青竜』の背中からセバスとサラ、エミリーが飛び降り、1人の漁民が転がり落ちる。
「ぬわー!(どさっ)痛たた・・や、薬草・・(もぐもぐ)」
「貴公!?」
「スズキ様!セバス様にエミリー様、サラ先生も」
『サウスブリッジ』の最前線に到着すると、聖女ルナ様の周りにはジャック=ハート、クラウド、エリス、ジョンの姿があった。セバスさんが妹のサラ先生に指示する。
「え~サラ、『水青竜』は真っ先に狙われる、すぐに」
「分かってる兄さん。(ピ~!)さあ、姉さんとあなたのお兄さんのところへ、早く加勢に行きなさい!」
「ギギャヤヤーー!!(ばっさ ばっさ)」
口に指を輪にして入れ、サラ先生が『水青竜』に合図をすると、『トロント』側へ向かって勢いよく羽ばたいて飛んでいく。
このまま『トロント』上空にて交戦を続けている『火炎竜』の元へ、『ゴブリンの乗るワイバーン』たちと戦いに行くようだ。
「ギィロギィロギィロォォーー!!」
「うわ!?やっぱり最前線、死ぬ」
「え~スズキ君」
「分かってますセバスさん。死ぬ前に一発、そのために来たんです。ルナ様!」
「まだ死なないで下さい!お願い致します・・・でも、もうお一人は?」
「ノースブリッジのジャンヌ様に。ここからなら見えます、ほら、遠くに見える左の『ノースブリッジ』の、あそこでぴょんぴょん跳ねてる、あの子!」
「あんな遠くで・・大丈夫なのでしょうか?」
「え~それは実証済み。ノースブリッジは作戦通りそのまま正面突破ですぞ、ルナ様」
「ジャンヌを信じましょう。スズキ様、お願い致します」
「貴公・・」
「ジャック=ハート、許嫁、ちょっと借りるよ」
「・・許す。ここは貴公に任せよう」
「勝手に貸し借りしないで下さい!」
自分の銀色のギルドカードの2つ星のマークタッチ、スキル、スタンバイ。『黄金色』のカードが2枚出てくる。
ギルドカードのタブレットビジョンには、『二重上位昇進』と表示される。
あらかじめ預かっておいたジャンヌの黄色いスキルカードを準備する。左側に緑色のしるしを確認、間違わず1枚セットする。
続いてこれも預かっていたルナの黄色いスキルカード、右側に青いしるしがあり迷わず右から1枚セットする。
「いくよ、ルナ様。みんなを守って!」
「かしこまりました、お願いしますスズキ様!」
「『二重上位昇進』!」
【『二重上位昇進』 マミフレナ=ルナ=ダルク 属性『光』『水』 特殊:『水のクリスタル』使徒】
【レベル】レベル35→レベル105
【職業ジョブ】 『聖神官』→『女神アルテミス(水神)』
【固有スキル】『光の螺旋』『属性(水)第10位界魔法使用可』
【固有装備】『三種の神器:デュランダル(光・杖)』『アルテミスの弓(水・弓)』
【『二重上位昇進』 マミフレナ=ジャンヌ=ダルク 属性『光』『風』】
【職業ジョブ】『聖騎士』→『ロードオブパラディン(神)』
【レベル】『レベル25』→『レベル75』
【固有スキル】『2刀流』『光の螺旋』
【固有装備】『三種の神器:エクスカリバー(光)』『ラグナロク(風)』
「(かち かち かち)え~3、2、1、今ですアルテミス様」
「『光の螺旋』!!」
(ピカッ!パァーー)セバスさんがゼンマイ時計を手にしながらカウントをするなり、女神アルテミスとなり天使化したルナが光の杖『デュランダル』を天にかかげる。
光の杖を中心に波紋が広がり、あたり一帯を光が幾重にも流れていく。
「ギギィィ(バン!)・・コツン コツン ガチン ガチン!!」
光がゴブリンに当たった瞬間、周囲を包囲していた『サウスブリッジ』のゴブリン魔導兵たちは黒い霧となって吹き飛び、一瞬にして次々と魔石に変わっていく。
魔導兵が装備していた機械の鎧が、地面に次々と抜け殻ぬけがらのように落ちて行く。
同時に『ノースブリッジ』の『ヘルヘイム』側の方でも、同様に光の波紋が広がる。
『二重上位昇進』で神となったロードオブパラディン、ジャンヌの『光の螺旋』に違いない。
バッチリ息ぴったり、さすが双子の姉妹。
『ツインブリッジ』の場所違いに2つの『光の螺旋』が交差し、広範囲のゴブリン魔導兵たちが一瞬で魔石に変わっていく。
「(光に包まれるツインヘッドドラゴン)ギィロギィロギィロォォーー!!」
「ば、馬鹿な!?」
「え~これは想定外の装甲・・『光属性』を読んでいた・・そこにいるのは誰ですかな?」
「あら、軍師殿も紛れておられましたか」
(すー・・)ツインヘッドドラゴンの影から、黒装束の1つの影が地上に姿を現す。
「え~円華・・ですな」
「まあ、頭が良いのね、好きになっちゃいそう」
「円華だって!?」
「そこの坊や、ちょっと目障り」
「え~サラ」
「分かってる兄さん」
「ふふ、でももう手遅れね」
「そなた、なにを申すか!すでに我が許嫁、聖女ルナの手によって、ゴブリン魔導兵どもは木っ端みじんに浄化されたのだぞ!」
「あら、素敵な坊や。せいぜい強がると良いわ。こんなオモチャ、いくらでも作れるわよ」
「お・・」
「オモチャですって!」
「え~まさか・・今回の『トロント』襲撃・・ゴブリン魔導兵こそ・・陽動とは・・」
「(光に包まれるツインヘッドドラゴン)ギィロギィロギィロォォーー!!」
「(光に包まれる円華)ううっ・・さすがに効くわね。でも、ここまで・・そろそろ3分かしら・・この子の、諸刃の仇は、わたしたちで取らせてもらうわ」
「耐えてやがる・・ルナ様!!」
「え~サラ・・聖女ルナ様とスズキ君を連れて、撤退しなさい」
「セバス兄さん!」
「今ここで聖女様と彼を失うわけにはいきません。『光の螺旋』が効かない以上、『2重上位昇進』の効果もまもなく切れる。ジャック=ハート殿・・」
「分かっておりますセバス様。このジャック=ハート、しんがりはわたくし目にお任せあれ」
「おいジャック=ハート。お前、なにカッコつけようとしてるんだよ!」
「貴公・・いや、スズキ殿」
「え!?僕の名前・・初めて呼んでくれた・・」
「ルナ様を、頼みましたぞ」
「勝手にフラグ立てるなよ!お前、ルナ様と結婚するつもりじゃなかったのかよ!」
「おーほほほほ、あなたたちの絶望、失望、心が闇に染まっていくのが私にも見えるわ。諸刃、もうすぐ、もうすぐあなたの無念、晴らす時が来るわよ。お母さんと一緒に、祝福の時を味わいましょう諸刃!」
「・・行くわよスズキ君、来なさい」
「(ぎゅ!)サラ先生、ちょっと待って下さい」
「『二重上位昇進』を使ったあなたはもう用済みの無能。まもなく効果も切れる。レベル1はさっさと退場。聖女ルナ様も、まもなく元のお姿に」
「僕はまだ用済みでも無能でも・・」
(そっちじゃないよ・・)
「啓示・・『トロント』には・・オルレアンには・・まだ・・帰れない(ピカッ!)」
「あなた・・スキルカードが光って!?」
「え?本当・・あれか。セバスさん、まだ手はあります!」
「え~私に未申告の何か手でも?」
「はい、自分でも全然分かってないスキル、とりあえず使います!」
自分の黄色いスキルカードを起動する。
この前ジャンヌが窓から突然現れて、間違えて押しちゃった15000スキルポイントの『毘沙門天』を押してみる・・でもこれって・・起動条件がたしか超厳しくて・・『おにぎり』屋の名前くらいにしか使えないとか勝手に思ってたけど・・。
「あれ・・(ぴこん)使える・・なんで・・」
「ギィロギィロギィロォォーー!!」
「(かち かち かち)え~スズキ君、残り20秒で『二重上位昇進』が・・」
「いけます。アルテミス!!」
「・・無能」
「無能じゃ無いって!アルテミス!こっちに合わせて、あの技を!」
「無能・・・かしこまりました、我らが主よ」
「(光に包まれる円華)あの子・・今度は何をする気?」
「スキル『毘沙門天』!」
(ぴこっ・・ピカァーーーー!!)
自分とアルテミス、元々天使化して光の翼を伸ばしているルナと共に、2人がまばゆい光の輝きを発する。
「(ピカァーー)こ、この光・・」
「え~これは・・紛れも無く『光属性』・・なぜスズキ君が『光属性』を・・・」
「(光に包まれる円華)あなた・・一体なにをするつもり!?」
「起動した・・それなら・・(ぴこっ)いける。アルテミス!」
女神アルテミスとなったルナは、光の杖『デュランダル』を、持っていた弓に装填、そのまま射る体勢。
「無能・・いけます!」
「無能じゃないよ、スズキだよ!アタックモード!!」
自分とアルテミスの背中から光輝く2体の竜が具現化する。『デュランダル』を射る体勢のアルテミスに、光の2体の竜が『ツインヘッドドラゴン』に向かってかまえる。
「この光の竜・・『テムジン』防衛戦でアルテミスと竜神のミューラが放った『竜聖斬』と同じ竜が・・2体も!?」
「(光に包まれる円華)私の子を2度も、やらせない!(びゅん!)刹那!?」
「陽動は成功した、諸刃はもうあきらめろ」
「離して刹那、諸刃はまだここに(パチン!)なにするの!」
「ギィロギィロギィロォォーー!!」
「もうこやつは・・諸刃などでは無い。お前と私には、守らねばならぬ子がまだいるであろう・・」
「・・分かったわ刹那・・あなたに従うわ・・」
「・・ありがとう円華。『しんがり』は任せたぞ諸刃・・これが・・最後の頼みだ・・(びゅん)」
「ギィロギィロギィロォォーー!!(ドスン!ドスン!)」
「ツインヘッドドラゴンが突っ込んで来ます!」
「ルナ様!スズキ殿!」
「無能」
「スズキだよ!」
「『越後二天』!」
(ギギャアアァァァァァ!!)2体の光の竜がアルテミス弓に乗って同時に放たれる。二筋の光の閃光となり、光の竜がツインヘッドドラゴンの両の頭部に直撃する。
「(ダァァァァーーーン!!)ギィロギィ・・・カ・ア・サ・ン・・・(しゅー・・・)」
「え?」
「今こいつ・・母さんって・・」
ツインヘッドドラゴンは、2体の光の竜が直撃した両の頭部から胴体にかけ、黒い霧となって散り散りになり・・消えていった。




