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119.ノースブリッジの戦い

 『ツインブリッジ』の2本橋、左手『ノースブリッジ』の中間地点を『ヘルヘイム』帝国側に過ぎたところ。

 対峙(たいじ)するゴブリン魔導兵の部隊に、金等級の武闘家でもあるサンダースと聖女アイリスが立ち向かう。


「アイリス様、お願いします」

「サンダース様、あなたに力を・・『聖なる力の付与(ホーリーウェポン)』」


(ピカァァーー!)


 アイリスが魔法を唱えると、サンダースの体から発せられていた黄金色の光が、白く輝くオーラに変わる。

 サンダースの体に、『光属性』が宿った。


「失せろゴミども!!」


「ギギィィーー!!(バスバス!!プシュー・・コツン コツン)」


 サンダースが怒りの形相(ぎょうそう)でゴブリン魔導兵に拳を打ち込むたびに、ゴブリン魔導兵が黒い霧となって消えていき、次々と魔石が地面に転がっていく。


「ギギ・・・」


 たじろぐゴブリン魔導兵たち。


「死にたいものから、かかってこんかーー!!」


「ギ、ギ・・ギギィィー」


(バス!ドス!バスバスバス!!・・プシュ~・・コツン コツン コツコツコツン・・)


(丘の上 『作戦司令本部』)


「え~サリー、『ノースブリッジ』の進行速度が遅くなっておるようですが~」

「はい副ギルド長。現在『ノースブリッジ』防衛軍の最前線ではサンダース様と聖女アイリス様が交戦中。聖女ジャンヌ様とライン=ハート伯爵も奮闘しておりますが、ゴブリン魔導兵の大部隊に進行を阻まれているようです。現在『ノースブリッジ』中間地点を過ぎたところで、進行はストップしております」


「え~やはりブロンズ冒険者主体の部隊ではここまで・・もはや金等級のサンダース様と聖女様しか、ゴブリン魔導兵に太刀打ち出来ておりませんな・・スズキ君」

「へ?はい」


「え~君ならどうします。『ノースブリッジ』の進行速度をもう少し上げたい」

「ああ、それなら簡単ですよ。サンダース様とジャンヌ様がいるんでしょ?楽勝ですよ」


「・・サリー、『ノースブリッジ』へ指令を伝える『結晶石』を持ってここへ」

「ちょっとセバス様!まさか、スズキ君に『ノースブリッジ』防衛軍の指示を出させるおつもりですか!?無謀です」


「え~私がすべて責任をとりますゆえ~スズキ君、どうすれば宜しいですかな?」

「そこまでセバスさんがおっしゃるならやりますよ。僕も早く戦争終わらせて帰りたいですし。サリーさん、ジャンヌ様に・・・」


(『ノースブリッジ』最前線 ゴブリン魔導兵と交戦中の聖女ジャンヌ)


「(ギルドカードぷるぷる)何?まったく、この忙しい時に一体誰よ!(ぽちっ)は~い、こちら聖女ジャンヌです。はい、え、ええ・・はい?誰よそんな指示出してるの?え?『作戦司令本部』の命令?分かりました、はい(がちゃ)なんなのよ一体・・パパ~」


「どうしたジャンヌ?」

「パパ、あのねあのね。ジャンヌ、ゴブリン魔導兵見てたらね、ちょっとお腹、痛くなってきちゃったの」

「な、なにーー!!貴様らーー!!(しゅぼぼぼぼぼぼ!!)」


「ギギィィー・・・(たじろぐゴブリン魔導兵のみなさん)」


 サンダースの体から、稲妻のごとく怒りのオーラが爆発する。


「わしの可愛い娘に、何て事をしてくれたかー!!」


(ドカァァァァァーーン!!)


(丘の上『作戦司令本部』)


「副ギルド長!戦局が変わりました!サンダース様の一撃で敵の前線が崩壊、我が『ノースブリッジ』防衛軍が前進を開始しました。進軍率、55パーセントに前進」


「あっ、サリーさん。その兵士の配置する『結晶石』で、各部隊の配置の変更をお願いします。女性兵士、女性冒険者、女性魔法使いは男性の後ろに下げてください。男は全員、ゴブリン魔導兵に向かって突撃開始、さらに後ろの女性陣に指令を・・」


「えっ!?」

「え~指示通りに」

「も~知りませんよ私~」


(『ノースブリッジ』最前線 防衛隊 女性陣のみなさん)


「(ギルドカードぷるぷる・・がちゃ・・つーつー)みんな聞いた?」

「とりあえずやれって」

「『作戦司令本部』の命令だし、とりあえずやるわよ」

「うん。キャー、ゴブリンこわーい、助けてーー(女性陣の皆さん)」

「強い男の人に守って欲しいわ~誰か来て~いや~ん(女性陣の皆さん)」


「俺に任せろーー!!(男性陣の皆さん)」

「女性は我々のうしろへ!ゴブリンどもの相手は我々にお任せください!!(男性陣の皆さん)」

「キャー素敵ーー!(女性陣の皆さん)」


(『作戦司令本部』)


「副ギルド長。理由は不明ですが、進軍速度がさらに上がりました!中間地点で拮抗(きっこう)していた我が防衛隊が前進を開始。現在『ノースブリッジ』中間点を突破し、橋の60パーセント地点まで進行しています!」


「サリーさん。アイリスに連絡を・・」

「えっ、なに・・そんな事言って一体なんになるのよスズキ君!」


「え~サリー、スズキ君の指示どおりに」

「も~どうなっても知りませんよ。(ぷるぷる)はい、こちら『作戦司令本部』、アイリス様・・」


(『ノースブリッジ』最前線)


「(ギルドカードぷるぷる・・ぽちっ)はい・・え?・・(ぽっ)・・かしこまりました。皆の者、聞くのです」


「アイリス様!(最前線の男性陣)」

「昨日のわたくしたち三聖女の、『コロッセオ』激励会の握手をお忘れですか。わたくしに続くのです、『聖なる力の加護(ホーリーバースト)』!!」


(ピカァァァァーー!!)


 最前線でゴブリン魔導兵と戦う兵士たちの大集団に、アイリスの『聖なる力の加護(ホーリーバースト)』により『光属性』が付与される。


(丘の上 『作戦司令本部』)


「副ギルド長!アイリス様の『光属性』が一定範囲の兵士、冒険者に一斉に付与されています・・嘘、信じられない・・5000人の兵士が一斉に『光属性』を付与されました!」


「え~スズキ君、アイリス様になんと?」

「え?ああ、この戦いが終わったらご褒美が待ってるって伝えただけですよ」

「え~君という男はまったく・・」

「サリーさん、だめ押しです。ガイア先生は?」


「ガイア様は、昨日の夜、ご自宅で負傷され現在オルレアン連合ギルド会館の治療室に」

「ドリフのおっさん、肝心(かんじん)な時に使えない・・奥様は?」


「はい、まもなく『ノースブリッジ』最前線に参戦されます」

「奥様に『作戦指令本部』より情報を。敵、『ノースブリッジ』ヘルヘイム帝国軍に、旦那様、浮気相手情報あり」


「はい?」

「え~指示どおり」

「は、はあ・・(結晶石で通報中)もしもし、こちら『作戦指令本部』、ガイア様の奥様ですか?実は・・」


(ピカッ!!ドカァァァーーン!)


「きゃ!?」

「なに?」

「副ギルド長。サンダース様とガイア様の奥様の活躍で敵の前線が完全に崩壊しました。進軍率70パーセントまで上昇」


「ふふふ、圧倒的では無いか我が軍は。『ノースブリッジ』、左舷(さげん)に部隊を集中、中央弾幕(だんまく)薄いよ、魔法使い部隊何やってんの!」


「申し訳ありません副ギルド長、ただいま指示を」

「え~副ギルド長は私なのですが~」


「防衛隊進軍率、80パーセント突破!」


「(結晶石ぶーぶー)大変です副ギルド長!闇の大きな反応が5つ、『ノースブリッジ』防衛隊の前線に近づきつつあります。敵の増援です!」

「え~敵の新戦力、事前情報のあった『ゴブリンロード』と見て間違いないですな」


「セバスさん、その『ゴブリンロード』って強いんですか?」

「え~とてつもなく・・スズキ君。ここに『特選隊』のリストが・・」


「はい、なになに・・なるほど。サリーさん、上空の『ゴブリンの乗るワイバーン』部隊の数が減ってきました。ミューラの『火炎竜(ファイヤードラゴン)』は引き続き上空で交戦。ジャック=ハートの『雷鳴竜(サンダードラゴン)』は、至急『ノースブリッジ』防衛軍の進行に加わってください」


「セバス様」

「え~指示通りに」


「はい・・防衛軍なのにこんなに進軍しちゃって良いのかしら・・(ぷるぷる・・がちゃ)ジャック=ハート伯爵、『作戦司令本部』からの命令です、至急・・」


(『ノースブリッジ』最前線)


 ライン=ハート、そして聖女ジャンヌが剣を交えて戦っていた。


「(しゅば!しゅば!)ジャンヌ様、とどめはお任せ致します!」

「(ズバ!ズバ!・・プシュー・・コツン コツン)ハート様、任せて!」


「ギギィィーー!!」


「(ばっさ ばっさ)『サンダーブレス』!!(ビィィィーー!!)」

「ジャック兄さん!」


「ギギィィーー・・(バスゥーー・・コツン コツン)」


「間に合ったなハートよ、加勢に来た。さすが『作戦指令本部』、多少取り逃がしたが、あらかた上空の『ゴブリンの乗るワイバーン』部隊は仕留めてやったぞ」

「兄上、ありがとうございます」


「ギギィィーー!!」


「あれは!?」

「変異種『ゴブリンロード』・・しかも5体・・」

「ハート様、あいつらは私が!」

「お待ちくださいジャンヌ様。『ゴブリンロード』、危険な相手です。ここは『作戦指令本部』の指示に従い、残りの『特選隊』の合流を待つのがよろしいかと」


「もう来ておるわい、ジャック=ハート殿。我が名はアームストロング」

「おお、そなた・・先日我が許嫁(いいなずけ)聖女ルナ様にギルドカードの番号を・・」

「その件についてはまた後ほど・・」

「うむ・・まあ良かろう。してそちらの者は?」


「アカデミア王立学院所属、キグナス=メイ。ダーリンのために命をかけて頑張る」

「ダーリンとな?そのような者はここにはおらんが・・今はともかく、力を貸すのだ2人とも!」

「はい!(2人)」


「ギギィィーー!!」


「ジャンヌ様。『ゴブリンロード』は、放っておけば近くのゴブリン魔導兵を吸収し、あの5体、さらに強さを増していきます。セバス様に任命された我ら5人、『作戦指令本部』の指示どおりに動きますぞ」


 聖女ジャンヌ、ジャック=ハート、ライン=ハート、アームストロング、キグナス=メイの5名の前には、『ゴブリンロード』と呼ばれる闇のオーラを漂わせた5体の巨大なゴブリンが立ちはだかっていた。


 『ノースブリッジ』防衛隊最前線の周囲の一般兵は後ろに下がり、『ゴブリンロード』との5対5の勝負が開始される。『作戦司令本部』の指示が飛び、何やら作戦の打ち合わせを始める5人の戦士たち。


「ジャック様、ジャンヌそれ恥ずかしいよ~やるなら4人でやってよ~」

「ジャンヌ様、『作戦司令本部』の指示は絶対です。このハートめと運命を(とも)にしていただきたい」


「え~ハート様もお願いだよ~。それにこれだけのために、なんでセバス様に言われて2人とも昨日レンジャーに転職しちゃったのよ~」

「すべては『円卓騎士』会談の決定事項なのです。この一戦が終わればすぐに騎士に戻りますゆえ。今は『光属性』のあなた様のお力が必要なのですぞ」

「そうですぞジャンヌ様。セバス様より昨日の選抜試験における『特選隊』に我々は任命されております。しばしのご辛抱(しんぼう)を」

「恥ずかしいよ~」


「行くぞみんなーー!!」

「おおーー!!(4人)」


(効果音・チャラチャチャチャ~チャ チャラチャチャ~ ただいま名乗りをあげております そのまましばらくお待ち下さい)


(りゅう)レンジャー!テンカセイ、ジャック!(しゃきーん!)」

獅子(しし)レンジャー!テンゲンセイ、ライオン、ハート!(しゃきーん!)」

天馬(てんま)レンジャー!マミフレナ、ジャンヌ!(しゃきーん!)恥ずかしいよ~」

麒麟(きりん)レンジャー!テンジュセイ、アームストロング!(しゃきーん!)」

鳳凰(ほうおう)レンジャー!集まれ、花のパワーよ!もぎたてフレッシュ、キュア、キグナス!(しゃきーん!)」


「天に輝く、5つ星!!(5人空に右手突き上げパー!)」

五聖(ごせい)戦隊!!(きらん!)ホーリーレンジャー!!」


(ちゅど~~~ん!!)


「ギギィィィーー!(ザブンザブン!)」


 ゴブリン魔導兵を巻き込みつつ、5色の光の大爆発により、5体の『ゴブリンロード』たちは橋から海へと投げ出され、海の藻屑(もくず)となって消えて行った。


「まあジャンヌ、あなたがここまで立派に成長していたなんて・・お母さん、嬉しい・・(うるっ)」


「お母様、恥ずかしいから見ないでよ~泣かないでよ~」

「わしも若いもんには負けておれんわい。いくぞ必殺!『電撃パ~ンチ』!!」


(分解ウィッシュ!!)(パァァーーン!!・・コツン コツン)


 サンダース必殺の『電撃パンチ』により、ゴブリン魔導兵の先頭集団が吹き飛び、いっぺんに魔石へと変わっていく。


(「聖女様が突破口を開かれたぞーー!!」)

「『聖なる力の付与(ホーリーウェポン)』」


(ピカァァーー)


(「アイリス様のお力が我らの体に!!」)

(「総員、突撃ーー!!」)


 聖女アイリスが、前線の兵士たちに一斉に『光属性』を付与する。光を帯びた剣や槍がゴブリン魔導兵へ突き刺さると、ゴブリン魔導兵たちが次々と絶命し、黒い霧となって消え、魔石へと変わっていった。


(丘の上 『作戦本部』)


「凄いですよセバスさん。『ノースブリッジ』、かなり敵陣近くまで攻め込んでますよ。さすがサンダース様にアイリス、ジャンヌ様も素晴らしい」

「副ギルド長。『ノースブリッジ』防衛隊、まもなく進行率90パーセントに達します」


「え~我が軍の精鋭を集めております。それにしてもここまでの活躍とは、素晴らしい。あとは『サウスブリッジ』の状況次第ですな・・リンダ」


「はい副ギルド長。現在『サウスブリッジ』、敵『ヘルヘイム』帝国ゴブリン魔導兵の猛攻が続き押し込まれています。『サウスブリッジ』の70パーセント地点まで侵攻、まもなく有視界内に入ります」

「セバスさん、なんだか右の橋、凄く敵に押し込まれてきましたよ」

「え~敵の進行が予想より早いですな~」


「リンダさん」

「はい」

「『サウスブリッジ』のクラウドに連絡を、この戦争終了次第、『炎の盾』修理用の結晶石が支給されると。ジェフ=ジョンには、本戦の活躍次第でルナ様が膝枕(ひざまくら)をしてくれるかも知れないと至急伝達を」


「はあ・・(ぷるぷる)もしもし、こちら『作戦司令本部』、はい、はい、ええ、そうですそうです、はい、では・・(がちゃ)」


(ピカァーー!!)


「な!?」

「何があったのリンダ!?」


「『サウスブリッジ』防衛軍奮闘。敵軍『ヘルヘイム』帝国、ゴブリン魔導兵の進行率が80パーセント地点で停止しました」

「え~素晴らしい・・頃合いでしょう。スズキ君、我々は『サウスブリッジ』の聖女ルナ様と合流致しますぞ」


「分かりましたセバスさん・・って、どうやって合流を?」

「サラ」

「(しゅん!)はい兄さん」


「うわ!サラ先生」

「え~サラ」

「分かってるわ兄さん」


 レンジャーのサラ先生が、『瞬足』スキルで突然目の前に現れる。

 サラ先生は首から下げていた化石のような笛を口にすると、水流のような音色を響かせる。


(ピロ~ピロ~ピロピ~ピロピ~ピロピ~ピロ~ピロ~ピロピ~ピロピ~ピロピ~)


(バッサ! バッサ!)


「ギャヤァァーー!!」


「青い竜が!?」

「え~あれは『ベネチア』王国に伝わる伝説の守護竜、『水青竜(ブルードラゴン)』」

「『水青竜(ブルードラゴン)』!?」


(バッサ! バッサ!)


「ギャヤァァーー!!」


「大丈夫、後で食べさせてあげる」

「サラ先生、そいつこっち凄い見てますけど、何て言ってます?」


「え~スズキ君、聖女ルナ様に危機が迫っております。私と一緒に。サラ、それからエミリーも同行しなさい」

「了解しました副ギルド長」

「・・はい兄さん」

「はい!」


 『水青竜(ブルードラゴン)』の背中に乗り込むセバス、サラ、ギルド会館3番窓口のエミリーさん、そして漁民。

 上空へと舞い上がると、2つ橋の右側、『サウスブリッジ』では『ヘルヘイム』帝国のゴブリン魔導兵の軍勢が橋の80パーセント近くまで侵攻を許す状態となっていた。

 このままではこちらの『トロント』側に達するのは時間の問題。聖女ルナと『月の雫』に危機が迫る。

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