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115.命をかけた戦場へ

 セバスさんと窓口受付のサリーさん、リンダさん、エミリーさんの4エルフと漁民が馬車に乗り込む。

 馬車は一路オルレアン王宮へと向かって行く。それにしても、わざわざ朝早くから、なんで美馬さん会いに来たんだろか・・。

 オルレアン王宮へ到着。入口のお城の正門には、オルレアン中から集まった冒険者たちでごった返していた。


「セバスさん、凄い数の冒険者ですね」

「え~大半はブロンズ冒険者がほとんど」

「それでも僕より間違いなく強いですって。この前の『テムジン』防衛戦なんて、直前にサンダース様に土下座しすぎて足を負傷したまま出撃でしたよ僕」

「無能」

「またまたエミリーさんは~」


「今日は大丈夫なのスズキ君?」

「ええ、重症ですよリンダさん。朝一で宿屋の馬小屋で寝ているところを、聖女の襲撃でいきなりビンタされましたよ」

「えっ、誰よその聖女様?」

「美馬・・じゃなくて、ジャンヌ様ですよ。朝起きたら目の前にいて、いきなりバチンですよ」


「ねえサリー、どう思う?」

「そうね~。ライン=ハート伯爵のプロポーズの後でしょ~。やっぱりそっちじゃないのかしらね~」

「ええ~嘘でしょサリー」


「あなたなんて言ったの?」

「なんですエミリーさん。聖女との話は気になるんですか?」

「あなたが失言して無いかチェックしてるの」


「ああ、そういう事。僕は森会長じゃないんですから。えっと、そういえば、私が結婚しても良いのかとか聞かれたような」

「ちょっと、それってまずいじゃないの」

「サリー黙って。なんて答えた?」

「またまたエミリーさんは~」

「早く言え」


「えっと・・僕じゃあ、幸せにできないって・・」

「・・無能」


「ダメでしょスズキ君。そこでちゃんと答えないと、男でしょ?」

「なんでそんな泥沼の展開に持ち込もうとするんですか~。ライン=ハートなんて貴族のサラブレッドですよ?ちょっと待ったなんて絶対無いですからね僕」


「は~情けない男。どうよリンダ」

「そこで口だけでも良いから、答えてあげるのが男でしょ?」

「借金金貨400枚ですけどなにか?とか言って、逆切れされるのがオチですって」

「無能」


「はいはい、どうせ僕は無能ですよ」

「え~そろそろ到着です。スズキ君」

「あっ、はい。なんでしょうかセバスさん?」


「ジャンヌ様のスキルカードは?」

「ええ、ここに。お姉ちゃんのも預かってますよ、ほら」

「え~他人にスキルカードを渡す行為は信頼のあかし」

「えっ、そうなんですか?」


「当たり前でしょスズキ君。それないと、敵に襲われたってスキル発動できないんだからね?聖女様たちは『光属性』の魔法があるから別として、魔法の使えない一般の冒険者はそのスキルカードが無いと死活問題なんですからね!」


「へ~そうなんですね。僕なんか、『筆記』とか『地図』とかゴミスキルしか持ってないんで。別にスキルカード落としても、気になるのって再発行手数料の金貨の支払いくらいですかね」


「え~まったく君という男は。そういえば、15年前、なぜ君は『風の神殿』ですでに襲われていた聖女アイリス様に『上位昇進(レベルブースト)』をかけられたのです?15年間、その謎がどうしても私には引っかかっていたのですが・・」


「ああ、懐かしいですねそれ。もともとセバスさんに『火炎竜(ファイヤードラゴン)』呼んでもらって、ミューラをドラゴンレンジャーにするつもりで昔のギルド会館の屋上から旅立ちましたよね。えっと・・そうそう、アイリスが落としていったんですよ、あの子」


「なによそれスズキ君。君が石になったあの日、治療室で肋骨折れて寝てたあなたを見たのは私たちなんだから。その前からアイリス様のスキルカード持ってたの?」

「ああ、えっと・・その・・」


「まさか・・会いに来てたのアイリス様!?」

「は、はは。実は・・なんか暇だったみたいで、その時、アイリス、あわてんぼうで・・落としてって・・」


「それ絶対ワザとだって」

「私もそう思う、絶対。なるほどね~、そりゃあ15年前『ベネチア』行くわね、おひとりで」


「ちょ、ちょっと皆さん。何言ってるか僕、全然ついていけてないんですけど」

「どうよエミリー、この男」

「脳みそ魚・・いや、それ以下」

「またまたエミリーさんは~」


「え~大体事情は分かりました。まさかそんな事情でアイリス様のスキルカードを持っていたとは・・スズキ君」

「はい」

「聖女様はオルレアンの宝です。どうか、大事に接してあげて欲しい」

「朝一で目覚めたら襲撃を受けた身としては、なんともお約束しかねるお願いなんですけど・・」

「え~まあ、できる範囲でよろしい」


「ああ、それくらいなら。ジャンヌ様も今日で16歳なんですよね?身を固められたら、少しは、おしとやかになるでしょうし。僕もしばらく1人で過ごしたいですし」

「え~それつまんない~」


「勝手に韓国ドラマの泥沼に持っていかないでくださいよサリーさん。今晩、(がけ)とか嫌ですからね僕」

「なによその崖って」

「崖の上の漁民ですよ。公爵(こうしゃく)と平民の禁じられた恋がバレて、伯爵(はくしゃく)に崖から突き落とされる話ですって」


「それ最高」

「しびれる展開ね」

「それでいきましょう」


「ちょっと皆さん、なに楽しんでるんですか~。結婚式が明日あっても、ちょっと待ったなんて絶対無いですからね」

「え~到着です」

「は~い(3エルフと漁民)」


 馬車が王宮内部に到着し、馬車から降りる4エルフと漁民。王宮内部では、鎧を身にまとう兵士たちの姿。

 ある集団はリーダーと思われる兵士長の指示で槍を持ち、ある騎士の集団は剣を装備。

 杖を持つ魔法つかいのような集団、武闘家の集団。まさにオルレアン中の戦士たちが王宮内に集まりひしめき合っていた。

 突然、王宮広場に集合していた戦士たちに向かって、建物のベランダが開くや、兵士の大きな叫び声が飛んでくる。


「オルレアンの戦士たちよ!これより、シャルル=ドゴール女王陛下のお言葉を聞くのだ!!」

「おおーー(全員)」


 がやがや騒いでいた集団が、シャルル=ドゴールと言われるや一斉に静かになり、全員が、兵士が叫んでいた王宮建物の2階ベランダを見上げると、建物から少し突き出たベランダに三聖女が先に現れ、先頭に聖女アイリス。

 アイリス側から右に聖女ルナ、そして左に聖女ジャンヌの姿が現れるや、オルレアンの戦士たちの興奮がピークに達する。


「(三聖女様がお姿をお見せになられたぞーー)」

「(アイリス様ーー!!)」

「(ルナ様ーー!!ジャンヌ様ーー!!)」


 やっぱりアイリスママが一番人気か。


(目がきらん!)


 びくっ!!な、なんか(にら)まれたような・・気のせい・・だよな。

 アイリスママが少し横にずれると、その間から、王冠をかぶり杖を持ったシャルル=ドゴール女王陛下が登場すると、三聖女をしのぐ喝采(かっさい)と拍手がその場を包む。


(パチパチパチパチパチ!)

(「女王陛下ーー!!万歳ーー!!」)


「皆の者、静粛(せいしゅく)に」

(ざっ!)


 女王陛下が一言放っただけで、一瞬で拍手と喝采が鳴りやむ。全員が静粛し、先頭の騎士の集団が剣を天に向かって突き上げる。


「オルレアンの戦士たちよ!時は来た。今日はそなたらの命、私に捧げるのです、よいですね!!」

「おおーー!!(全員)」


「これより『トロント』防衛戦を開始する。戦士たちよ、退却は許しません!前に進むのです、前へ!!」

「おおーー!!(全員)」


「最後に・・その命、絶対に無駄にしないとわらわに誓うのです。私の可愛い子供たちよ、オルレアンの戦士たちよ。必ず生きて、我が前に帰ってくるのです・・必ず帰ってくるのですよ!」

「おおーー!!(全員)」


「女王陛下ーー!!」

「万歳ーー!!万歳ーー!!万歳ーー!!(全員)」

「(兵士)ゲート開けーー!!」


(ギィィィーー)


 『転移結晶』の青い光のゲートが開かれる。まずは『ベネチア』を経由して全員が『マドリード』を目指す。

 いつもは1つしかない白い(ほこら)近くにあった『転移結晶』が今日は4つゲートが開かれ、次々と戦士たちが青い光のゲートをくぐって『ベネチア』へ入国していく。

 その様子を、群衆の最後尾から眺めていた4エルフと漁民。セバスさんから声がかかる。


「え~スズキ君。君の出番は私が決めます」

「ええ、もちろんです。いきなり女王陛下みたいに先陣を切れなんて言われても、どうせ何にも出来ないですからね僕」


「サラ」

「(しゅん!)はい、兄さん」

「うわっ!サラ先生、いつの間に・・」


「今日はお前がこの子のそばに。その命に代えても、彼を最後まで守り抜くのです・・これを」

「兄さん、これ・・分かりました」

「セバスさん、その化石みたいな笛。それって、ミューラやジャック=ハートが持ってた笛に似てるような・・」


「魚にしては頭が働く」

「魚は魚でも『たい焼き』ですよ僕。ちゃんとお腹に餡子(あんこ)詰まってますって」

「意味不明。生存確率0パーセント」


「いきなり殺さないでくださいよサラ先生。も~ミューラと違ってネガティブなんですから、もっとポジティブに行きましょうよポジティブに」

「意味不明」


「早く戦争終わらせて、みんなで帰ったらパーティーしましょうって意味ですよ」

「ふふふ」

「あはは、スズキ君らしいね」


「そうですよサリーさん。こんな命を懸けるみたいな戦い、さっさと終わらせちゃいましょうよ。僕がちゃちゃっと・・聖女を野獣に変えて敵に襲わせてきますから」


「え~それではスズキ君。しばらくは私から離れないように」

「兄さんの隣は私」

「え~サラ、まったくお前は」


「サラ先生。終わってからお兄さんにしっかり甘えて下さいよ。僕、早く帰って借金の返済したいんで、お手伝い宜しくお願いしますね」


「いい心がけ。戦死したら遺体は運んであげる」


「勝手に殺さないで下さいよ。とりあえず死にそうになったら逃げの一手でお願いします」


「さっき女王陛下が退却は許さないと言った」


「そんなの知りませんよ僕。逃げるは恥だが生き残れます。臆病者(おくびょうもの)の方が長生きできますって」


「・・無能」


「はいはい、無能ですよどうせ」


「え~そろそろ兵士が全員いなくなりました。我々も『ベネチア』へ参りますぞ」


「はい(全員)」


気づいた時には、王宮のベランダから女王陛下と三聖女の姿もいなくなっていた。兵士もあらかた『ベネチア』への青いゲートをくぐり終わった様子。後に残るは、王宮を警護する若干の兵士が残るのみであった。


『闇のクリスタル』を(よう)する『ヘルヘイム』の部隊と、4大陸の連合軍が激突する『トロント』の『ツインブリッジ』の戦いが近づいてくる。



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