110.決勝トーナメント(後編)
闘技場『コロッセオ』では、決勝トーナメントが次々と進められ、実力者の対戦が激化していく。そして、禁断の組み合わせが次々と開始される。
(決勝トーナメント ジャンヌ(光属性)(風属性)vsライン=ハート(雷属性)ケンブリッジ王立学院所属 職業 騎士)
「ジャンヌ様・・」
「ハート様・・」
「試合始めーー!!」
「(しゅっ・・かちゃーん・・)刃を収め下さいジャンヌ様(かつ かつ かつ)」
「ハート様・・」
「(かつ かつ かつ)これを」
「え?」
「(実況)おおっと!なんとライン=ハート伯爵、ひざまずいて指輪を差し出す!これはまさか・・プロポーズなのかーー!!」
「(キャーー!!)(会場)」
「(いけーー!!)(会場)」
「ジャンヌ様。明日のあなた様の16歳の誕生日。明日の決戦に勝利した暁には、この許嫁ライン=ハートと、結婚していただきたい」
「は・・・はい」
「お受けいただけますか?」
「・・お受け致します・・きゃ、ハート様!」
「(実況)どうやらプロポーズは成功した模様!お姫様抱っこされたジャンヌ様が、優しく場外へ連れて行かれる!」
「(キャーー!!)(会場)」
「ハート様」
「後はこのライン=ハートにお任せ下さい。これより後の報酬、この私のすべてを、あなた様へ献上させていただきしょうぞ」
「はい(びびっ)」
お姫様抱っこされたジャンヌが、試合会場の場外へ優しく降ろされる。ライン=ハートに抱きしめられた後、会場の外へと消えていった。
「(実況)オルレアンの聖女様と『トロント』の英雄の素晴らしいご縁に、会場の皆様、拍手でお見送り下さい」
(ぱちぱちぱちぱち(会場))
「(実況)それでは次の対戦へ移ります。選手入場!」
(決勝トーナメント ミューラ(火属性)vsサラ(水属性)アカデミア王立学院所属講師 職業 レンジャー)
「(実況)おおっと!ここで両学院の人気講師にして銀等級冒険者が激突だー!」
(「ミューラ先生ー!!」)
(「サラ先生ー!!」)
2エルフのスターの登場に、会場の雰囲気が、ふたたび一変する。
「ほとんど私の声援、姉さんの負け」
「ほとんど一緒じゃないの!なんの勝負してるのサラ!」
「属性は私が有利、棄権を推奨」
「属性だけで勝負は決まらない事をサラに教えてあげます」
「みけんにシワ、老化が早まる」
「うっさい!」
「試合始めー!!」
「『水の矢』!」
「きゃ!」
サラ先生、開始早々水魔法の弓攻撃を連続発射。数発の矢をかわしたところで、背中に背負う弓を発射の体勢。
「『炎の矢』!」
(ジュワージュワージュワー・・)
3発の『水の矢』を、ピンポイントで狙撃。『炎の矢』が当たるや、水蒸気となってお互いの矢が消滅する。
(「キャー!!」)
(「凄い戦いだぞ!」)
「打ち落とさないでよ姉さん、『レッドオパール』は私の物」
「サラ!あんたもそれ狙わないでよ!3位以内じゃないと貰えないんだからね!」
「姉さんの物は私の物。私の物は私の物」
「そう言うの、ジャイアニズムって言うの!」
「そんな言葉知らない、『ベネチア』にも『マドリード』にも無い」
「スズキ君から教えてもらったの!行くわよ、『瞬足』!」
「姉さんの男は消す、『瞬足』!」
「(実況)おおっと、消えて見えなくなったが、場内で激しい戦いが続いているぞ!」
「『水流舞』!」
「『竜炎舞』!」
(バァァァーーン・・)
水色のオーラと、赤色のオーラが激しくぶつかり、闘技場を水蒸気が立ち込め、次第に・・晴れていく。
「(実況)おおーー!!なんと、場外へはじき出されたのは・・」
「(しゅー・・)わたし・・負けた・・」
「(しゅー・・)サラ、頑張ったけど、私が一歩上だったわね」
「なぜ・・姉さんの熱い情熱・・やっぱり・・あの男のせいね」
「うるさいわね!スズキ君は関係ありません!」
「今すぐ消してくる(だっ!)」
「こらサラ!スズキ君にイタズラしたら、セバス兄さんに言いますからな!」
「(ピタッ!)それは嫌、ならやめる」
「はい、そうして下さい。まったく」
(会場外 おにぎり屋『毘沙門天』ブース・・に並ぶ列の最後尾)
「(ぐすっ)・・なんでオッケーしちゃったんだろ私・・」
「あっ、お~い、ジャンヌ様~・・って、泣いてる・・もしかして負けたの?」
「(ぐすっ)あっ、エリスさん・・え~ん」
「はいはい、お~よしよし、良い子良い子。ルナ様と一緒で、可愛い可愛い」
「(ぐすっ)ルナお姉様もこっち来てるの?」
「あっ、その・・」
「(すいません、聖女と握手できて食事が出来るブースってここですか?)」
「えっ?はいお客様。ここが最後尾になります。『ルナ様が笑顔でお出迎え致します』ので、このまましばらくお待ちください」
「ちょっとエリスさん、その声かけ、あいつが指示したに決まってる!」
「あちゃ~」
「あいつ・・ううーー(しゅん!)」
おにぎり屋『毘沙門天』
「おにぎりセット2ついただきましたー!!」
「はいどうぞ『おにぎり』です」
「(ルナ様!大ファンの武闘家です、握手をお願いします!)」
「はあ・・(ぎゅ!)」
「(ルナ様!魔法使いです、ぜひ握手を!)」
「どうぞ・・(ぎゅ!)」
「さすがルナ様!もはや握手目当てに大盛況です!(ぎゅっぎゅっ)」
「そうだな銀等級。なんだか男の割合が圧倒的に増えてきたような・・」
「ええ!?そうなのですか?」
「(ルナ様!あなた様と握手出来たら、俺戦士なんです、明日頑張れます!)」
「えっ?はい。ぜひ頑張って欲しいのです(ぎゅぎゅ)」
「さすがルナ様!明日の決戦、1日限定でルナ様親衛隊、新規メンバーが大量に発生する勢いです!我が軍の士気は上がりまくりですよ!(ぎゅっぎゅっ)」
「勝手に親衛隊増えないで下さい~(ぎゅぎゅ)」
「さあルナ様、僕は『おにぎり』を、ルナ様はお客様の手を握りまくりましょう!(ぎゅっぎゅっ)」
「ルナお姉様、こんなところで何してるの!」
「ああ、ジャンヌ、助けて欲しいのです~(ぎゅぎゅ)」
「ほらジャンヌ様も、そんなところで油売ってる暇があったら、そこのクマちゃんマークの『毘沙門天』のエプロン装備してから手伝って下さいよ(ぎゅっぎゅっ)」
「なんであんたの店を私が手伝わないといけない・・ちょっとお姉ちゃん、なんで『おにぎり』買った人全員に握手してんの~」
「よく分からないけど、こうなっちゃったのです~(ぎゅぎゅ)」
「聖女坂46です、みぽりんですよみぽりん。ほら美馬さん、なんならエリスと同じようにその鎧脱いでエプロン付けてもらって構いませんよ」
「美馬言うな、美馬。あんた馬鹿でしょ!私のこのスーツ、『メタモルフォーゼ』は特殊素材で作った私のお手製なの!『裁縫』スキルで自分で作ったんだから、これ1枚しか着てないの!」
「最高じゃないですか美馬さん、ぜひお願いします。いよっ!さすが新妻の必殺エプロン、今夜にも救世主爆誕ですよ美馬さん」
「馬鹿言ってんじゃないわよあんた!ルナお姉様、そいつから離れて!やらしいオーラ凄い出てるよ!」
「はい・・ジャンヌもこっちに来てわたくしを守ってくれるのですね。お客様、ちょっとお待ちを・・ジャンヌ、はいエプロン付けてあげるから後ろ向いて」
「うん・・お姉ちゃん」
「(しゅしゅ)はい可愛い、髪も整えて(ささっ)。ジャンヌ、このブースに来る皆さんのお話を聞くと、冒険者の皆さん、後方で支えられる技術職の皆さんも明日頑張ってくれるって言ってますよ」
「本当にそうなの~?ただお姉ちゃんと握手したいだけなんじゃないの~」
「それでも良いのです。わたくしが握手する程度で明日の決戦を戦ってくださるなら、お姉ちゃんはいくらでも頑張れるのです」
「素晴らしい姉妹愛。この看板娘2人を並べれば・・ふふ、ふふふふ(ぎゅっぎゅっ)」
「ひっ・・お姉ちゃん。『感知』スキルで、こいつから闇のオーラが凄い出てる!黒装束よりヤバいやつ一杯出てる!もっとこっち寄って、そいつから少しでも離れて!」
「分かりましたなのです(すすっ)」
「ル、ルナ様が・・お、俺の・・す、すぐ隣に・・ジャ、ジャンヌ様まで隣に・・俺、俺・・」
「なにやってんのよルナお姉ちゃんの親衛隊!さっさと『お味噌汁』つぎなさいよ!」
「はい、喜んで!両手に花、俺、もう、死んでもいい!」
「ジョン様!明日の決戦まで死ぬことは断じて許しません!」
「かしこまりましたルナ様!はい、『お味噌汁』です!どうぞ!喜んで!!」
「ルナお姉ちゃん、こいつの動きが早くなった・・」
「男の子はよく分からないのです・・(ぎゅぎゅ)」
「そういえばイチロウ、やたらあんた『おにぎり』作る手際が良いわよね。そういえばあんた、『倉庫管理』クビになって、その前『たい焼き屋』潰れて、その前ってたしか・・わたしらが通ってたおにぎり屋の『越後屋』で一時期バイトして無かったっけ?」
「そうそう、よく覚えてますね美馬さん。『越後屋』で修業したスキルを今ここで発動してるんですよ。あの時はバイトのシフト管理も任された名ばかり店長に指名されて、今みたいに高校生の男の子と女の子を、わざと同じ時間のシフトに入れてたんですよ」
「えっ?」
「なんでよ・・」
「ほら、ジョンを見て下さいよ」
「『おにぎり』セット1つ・・ありがとうございます~これ食べたら幸せになれますよ!もう幸せ一杯、俺もあなたも幸せですよ~」
「ほら、両手に花でジョン君の眠っている力が全開です。今日のジョンは良く働きますよ」
「悪魔みたいなやつね、あんた・・そういえば思い出した。このエプロンのクマちゃん・・うちの近所にあったクリーニング店と同じマークでしょあんた!」
「さすが美馬さん、鋭い!」
「あんた、勝手に『中元クリーニングの白熊ちゃん』パクッてんじゃないわよ!」
「それを言うなら『小熊マークの中元クリーニング』ですって美馬さん。そこは秘密のアッコちゃんでお願いします。オルレアンに著作権なんて無いですって、近所のクリーニング店なんてどうせ視聴者には分かりませんから」
「本当にあんたはまったく・・それにしても良く出来たエプロンね・・」
「イチロウ君~」
「ああ、エリスもどうした?またお腹でも痛くなったのか?」
「違うわよ馬鹿!列が凄い延びてるの!材料足りる?『ベネチア』の『たい焼き』の時も足りなくなりそうだったでしょ?」
「さすがエリスリーダー、危ないところだった。えっと『兵式飯盒』と材料で・・ふんふん。エリス、今度は先頭の客から先にオーダー取っていって。残り150セットで打ち切って、材料無くなりましたって」
「うん分かった。後はお断りすれば良いのね?」
「違うぞエリス、分かって無いな。『聖女様と握手されたい方は、そのままお並び下さい』って言っておいてよ」
「あんた!ルナ姉と握手させて、金銀硬貨せしめるつもりでしょ!」
「大丈夫ですって美馬さん・・分け前は後ほどゆっくりと(ぼそっ)」
「あら、あんた、分かってるじゃないの・・(ぼそっ)」
「スズキ様、ジャンヌ?今なんとおっしゃいました?」
「ルナお姉様、何でも無いの・・それであんた、7・3ね(ぼそっ)」
「なんすかそれ・・もちろん5・5で(ぼそっ)」
「6・4でしょ?それ以上は譲らない。あんたなんかに営業力無いでしょ、誰のおかげでこんなに集客出来たと思ってんの?(ぼそっ)」
「後で『味噌おにぎり』献上します。5・5で、ぜひ奥さん、一本」
「・・まあ・・良いわ」
「さすが美馬さん、愛してます」
「ちょっとジャンヌ、一体スズキ様と何をお話しているのですか?」
「なんでも無いの!はい、あなたも明日頑張ってね!(ぎゅぎゅ)」
「(ジャンヌ様と握手が出来るなんて!(うるっ)こ、これは気持ちです!(ちゃり~ん))」
「ちょっとジャンヌ、あなた何で握手する気になったのですか?(ぎゅぎゅ)(ちゃり~ん)」
「ルナお姉様と一緒!ジャンヌも明日の決戦、みんなに頑張って欲しいの!(ぎゅぎゅ)(ちゃり~ん)」
双子聖女の集まるブースに、闘技場に入れなかった4大陸のたくさんの王族、貴族、冒険者が集結、闘技場の入口付近にまで伸びる列に、1人ずつ声をかけるクマちゃんマークエプロン装備のエリス。
「申し訳ございません、ここで『おにぎり』完売しちゃいまして・・もしこのままお並びいただければ、ルナ様とジャンヌ様が握手して明日の決戦に向けて激励していただけますが・・」
(「並びます!」)
(「お金を払えば、聖女様と握手出来るって本当ですか!」)
(「さっき食べたばっかりなんで、正直食事はどうでも良いです!」)
「ええ!?な、なんなのよこの人たち!?」
悪魔の料理人の策略により、おにぎり屋『毘沙門天』の材料が完全に尽きるのを待たずして、ブースは様相を一変、聖女坂46の握手会場へと変貌を遂げていった。




