鬼教官
サーラがどれだけ鬼なのか今日は話すわ。
付き人になって早1ヶ月が経ったの。 もーう毎日毎日毎日毎日、午前はアルナイル先生と勉強の時はずっと後ろに立って見張っているのよ。 しかもなぜかアルナイル先生と知っていたように親しいし。
もっともこうなった理由は私にあるんだけどね〜……
最初の頃は午前中のアルナイル先生の勉強は2人きりだったのだけど、午後からプリンセス……というよりは侍女の真似事をさせられてね、それはもう肉体労働から何やらまでやらされたから嫌になって、3日目の午後逃げ出して見つかりにくい場所でノンビリしてたんだけど、どういうわけかあっさり見つかっちゃったの。
その日は怒る代わりにいつも以上にキツくお茶の入れ方とか仕込まされたわ。
それでその翌日、私は午後の勉強が終わってグリフィンとお城のてっぺんまで飛んで連れて行ってもらって、そこでノンビリすることにしたんだけど……
サーラは全然恐れることなく私のところまで来ちゃったの! 信じられる? 落ちたら大怪我じゃ済まないような場所よ?
そのまんま連れられて昨日よりもキツい事をさせられたわ。 しかもグリフィンとは自由時間以外合わせてもらえなくなっちゃうし。
それからはアルナイル先生の勉強の時もこうして見張るようになっちゃったってわけ。
あ、でもどういうわけか、湯浴みの時と着替えの時だけはいなくなってるんだけど、なんでだろう?
そんな見張られるようになっておとなしく従っていたある日、私は意を決してサーラに言ったの。
「ねぇサーラ、私、王都に行く約束まだ一度も守ってもらえてないんですけど?」
「プリンセスが言う事を聞かないからです」
「でもそれじゃあ約束が違うじゃない!」
もう我慢できない、約束も守ってもらえないのならお父様にいって今回こそ辞めてもらうんだから!
そうしたらサーラがハァとため息をついたから、どうせダメって言われると思ったんだ。
「わかりました。 それじゃあ今日は午前中の勉強が終わったら……王都に出かけますか?」
「わかったわ、お父様に言って……え!? 本当? 本当の本当に!?」
「はい、約束して1ヶ月間頑張ったし、私もたまには少し羽を伸ばしたいかな」
「やった! やったぁ! ありがとうサーラ」
午後になってサーラに言われた通り服装は王宮で着ているようなドレスはやめて、サーラが動きやすいからと用意してくれたドレスローブというのに着替えたの。
「ねぇサーラ、これって冒険者の女の人がオシャレ兼ねて着るやつよね?」
「ええ、着心地悪いですか?」
「うううん、完璧! いつものより動きやすい」
「それは良かったです。 あ、ティアラは外してくださいね。 それと……」
サーラが私の髪の毛を手にとってポニーテールに結んでくれたの。
「これならぱっと見ではプリンセスと思う人はいないでしょう」
「ありがとうサーラ」
サーラが笑顔で返してきて、一緒に王都に向かいはじめたの。
鼻歌を歌いながらお城を出て王宮の入り口まで行ったのだけど、そこにはマクシミリアンがいて怪訝な顔でサーラと私を見てきたの。
「そのような冒険者共が着るような格好をして、どちらに行かれるおつもりですかな、姫君」
「うん、これからサーラと王都に行くのよ」
「付き人と2人でですか!? 了承しかねますな」
サーラと一緒ならお父様の了承を得ているというのにマクシミリアンは何を言っているのかしら?
「ヴォーグ様の了承は得ています。 そこをどいていただけますか?」
「そうはいかん! 付き人如きがもし姫君に何かあったらどうするつもりだ!」
「そうですか。 プリンセス行きますよ」
サーラが私の手を取って引っ張って連れて行こうとする。
サーラは約束を守ろうとしてくれたんだし、仕方がないよね。って……え?
あれあれあれれれ?
手を引っ張って連れて行こうとする方向がマクシミリアンを横切ろうとしているよ?
「貴様! 人の話を聞いているのか!」
マクシミリアンがサーラに向かって怒鳴るけど、足を止める様子は見られないの。
そしてついにマクシミリアンがサーラを止めようと手を伸ばしたの。
「もし私に指一本でも触れたら、国王に対する反逆行為とみなしますが、その覚悟が貴方にあるのならどうぞ」
凄〜い、悩んだ顔を見せたマクシミリアンが伸ばした手を悔しそうに引っ込めてその場を離れていっちゃった。
「さぁ、行きますよ……ララ」
「え? サーラ、今なんて?」
「町に出るんです。 プリンセスなんて呼べないでしょう?」
す、少しでも喜んだ私が馬鹿だったよ。
サハラがサハラらしくない気がする……




