王都観光
外! 外に出たよ!
幼少期に一度だけ出たことがあるけど、今日は違う。 私の足で歩いて王都に向かってるんだよ!
「あまりはしゃぐと目立つのでやめてください」
う……そんなこと言ったって仕方がないじゃない。 生まれてから2度目の王宮の外なんだもの。
それにしてもサーラって何者なのかしら? 何しろあのマクシミリアンを黙らせちゃうし、お父様とお母様の信用もあるみたいだし、アルナイル先生とも知り合いみたいに見えたのよね。
「なんですか?」
「う、うううん、なんでもない、なんでもないよ。 あ、そうだ。 ねぇサーラ、なんでサーラは私を王都に連れて行ってくれるの?」
「簡単な理由です。 いずれは女王になるのだから、世間を知っておくことは大事な事。 けれどそれは危険も伴うからヴォーグ様ももっと大きくなるまで待つことにしていました」
サーラが来たことで安心できたってことらしいのだけど、そうなるとなおさらサーラが何者なのか気になるところよね?
そんなことを話しているうちに色々なお店が立ち並ぶ通りに出て、サーラが何者かなんてポーンとどっかにいっちゃった。
わからないことなんかをサーラに聞きながらお店を見て回っていったわ。 そんな中一際大きな建物があって、人の行き来が忙しい場所があったから近づいてみるとサーラに止められたの。
「あそこはララが行く必要のない場所です」
「お店じゃないの?」
「あそこは冒険者ギルドです。 名前ぐらいは聞いたことがありますよね」
あれが冒険者ギルドなんだ。 幼少期にお父様が遠征に行っている間、王宮の中までは入れなかったけど守ってくれた人たちがいる場所なのね。
冒険者ギルドに興味を持った私はサーラの制止も聞かないで、建物の側まで来て中をちょっぴり覗き込んでみたの。
「わぁ、凄い! ってきゃあ」
サーラかと思ったら知らない人たちが建物に入る邪魔になってた私を、押し入れられる形で冒険者ギルドの中に入っちゃった。
中を見回すとテーブル越しに話をしている人とか、しきりに壁に張り付いている羊皮紙を眺めていたり、そんな様子を見ている人たちでいっぱい。
サーラの姿が見えなかったから、とりあえず壁に張り付いている羊皮紙を覗いてみることにして、人混みをかき分けながら入り込もうとしたところで腕を掴まれちゃった。
「ここはお嬢ちゃんが来るような場所じゃないぜ」
腕を掴んできたのはサーラじゃなくて知らない人。 正確には狼獣人のおじさんだった。
それでもって腕を引っ張ってお店の外に出されるんだと思ったら、お店の奥にある扉の方へ連れて行かれちゃった。
それでもってサーラはどうしたのかというと……
「ちょっ、ララ……」
冒険者ギルドに近づいていく私を止めにいこうとしたのだけど、それを阻むように数名の男の人たちに囲まれてしまったの。
「こりゃとんでもない美人さんだ。 見たところ冒険者ギルドに用事があるって事は、ネタを探してるってとこかい?」
「急ぐのでそこをどいてください」
「釣れないねぇ、俺たちいい報酬のネタがあるんだ。 一緒にどうだい?」
「興味がないのでさようなら」
徹底して断るサーラに対して逃がしてなるものかと言わんばかりの冒険者。 その仲間らしい人たちの中には止めようとしている人もいたみたいなんだけど、見ての通りサーラって外見は凄い美人だからね。
「冒険者ならあまりしつこいと冒険者ギルドに報告しますよ?」
冒険者にはルールがあって迷惑行為が過ぎて報告されると、最悪ギルド追放されることもあるらしいの。
これには流石の冒険者もマズイと思ったのか諦めたようね。
そのあとすぐに冒険者ギルドに飛び込んだサーラが目にしたのは、ちょうど私がギルドの奥の扉に連れて行かれるところだったってわけ。
狼獣人のおじさんに連れられた私は、扉を抜けて更にどんどん奥へと連れて行かれて、だんだん不安になってきたところで書斎のような部屋に連れ込まれたの。
そこに来てやっと狼獣人のおじさんが一呼吸ついて私に聞いてきたんだ。
「腕を引っ張ったりして済みませんでした。 プリンセスララノアですよね?」
バレてるー!?
返事に困っているとおじさんがニッコリ笑って大丈夫ですって言ってきたわ。
「おっと、失礼。 名乗り遅れましたが俺はこの冒険者ギルドのマスターをやらせてもらっているウルヴィス=プレストといいます。
プリンセスの事は国王が遠征に行っている時に見ていたんですよ」
「変装してたのによくわかったわね?」
そうしたらウルヴィスが笑い出したの。
「その程度は変装とはいいませんよ。 プリンセスを知らない人なら十分ですが、見たことがあればすぐにわかります」
バレバレじゃない。 あとでサーラにいっておかなきゃいけないいけないよね。
「それで今日はお忍びとはいえ、たった1人で王都に……というわけではなさそうですね」
そこで扉がガチャっと開いて息を切らせたサーラの姿があったの。
よく見たらしがみついて止めようとしている3人を引きずってここまで来たみたい。
「ララ、無事!?」
「うん、大丈夫だよ?」
私が何事もなく答えると、サーラのこめかみにうっすら青筋がピクピク見えたの。
「全く、この……じゃじゃ馬娘ぇぇぇっ!」
「ヒッ……ごめんなさいぃ」
このままじゃお説教タイムがはじまっちゃうよぉ。
「まぁまぁ、こうして無事にいることだし、ここは俺に免じて許してやってはくれないか」
ここでウルヴィスの口添えのおかげで助かっちゃった。




