襲撃の結末
父様を助けに母様と一緒に行くと、牢屋の入り口の前に野盗が2人立っていたんだ。
「母様」
「……大丈夫よ」
そういうと母様は火蜥蜴を見てから魔法の詠唱を始めたんだ。
「……精霊よ、石を泥に変えて。 トランスキュート・ロック・トゥ・マッド」
母様がそう言うと野盗2人の足元が泥になって沈み込んだよ!
突然泥になって沈み込んだ2人の野盗は慌てて抜け出そうとしたんだ。
「……精霊よ、泥を石に戻して。 トランスミュート・マッド・トゥ・ロック」
と思ったら元どおり石になって野盗の足元が元どおり石になっちゃって動けなくなったよ!
「……ララ、これがドルイドが精霊と契約することで使えるようになる精霊魔法よ」
「精霊魔法?」
“俺っちが力を貸すことで使える魔法ってやつだぁね”
「ふーん」
「……それだけなの!?」
“それだけか!?”
あれ? 何かおかしなこと言ったかな?
そのあと火蜥蜴のお友達を私に戻して動けなくなった野盗を避けて通って、父様のいる牢屋まで行ったんだ。
父様は母様と私の姿を見て怒ったり喜んだりでなんだか忙しそうだったよ。
「つまり頭領と野盗たちをログェヘプレーベが今1人で引きつけてるんだな?」
「うん! 早く助けに行かないと」
「いや、それならあとは俺が助かったことが伝われば問題ない」
父様の言っていることがよくわからなかったけど、牢屋にいた他の兵士たちを出したあとお城の方に戻ると、父様が大きな声で叫んだんだ。
「ログェヘプレーベ! 引きつけ役ご苦労! 俺は助かったぞ!」
そのころ完全に取り囲まれていたログェヘプレーベは、頭領と途切れないようにうまく会話を続けて時間を稼いでいたんだ。
そうしたら父様の『ログェヘプレーベ! 引きつけ役ご苦労! 俺は助かったぞ!』って叫ぶ声が耳に届いたんだ。
「……上手くやってくれやがったようですね」
「なにがだよ」
「ヴォーグ様の救出でやがりますよ」
「ちっ、時間稼ぎしてやがったのか」
野盗たちがざわつき出して、頭領がどうするのか待っているみたい。
「それでお前はこれだけ囲まれていて随分と平然としているな」
その時ログェヘプレーベが妖艶にゾクッとするような笑みを浮かべたんだ。
「それはもちろん……ここにいやがる全員を、逃さず、歯向かえず、圧倒的に皆殺しにして差し上げやがるからに決まってやがるでしょう。
我が名はログェヘプレーベ! 私の手にかかりやがって殺してもらえやがることを感謝しやがりながら死にやがりなさい!」
ここから先のことはちょっと私の口では言えないような惨状になったんだ。
父様を先頭に玉座のある広間に近づくと、父様が母様と私に来ないように言ってきたよ。
「父様、母様なんでなの?」
「まだ小さいララにはこの先にある光景を見せたくないからだよ」
離れているこの場所からでも僅かに血の匂いがしていたから、きっと凄い戦いがあったんだね。
「……それでは部屋で待ってます。 ララ行きましょう」
「……うん」
お部屋に行った私たちはそこで呼ばれるまで大人しく待っていたんだ。
私たちが部屋に行くのを見送った父様は兵士たちと玉座のある広間に向かうと、ログェヘプレーベが1人、血まみれになって恍惚とした表情を浮かべながら立っていたんだ。
周りはバラバラになった野盗の死体だらけで、ログェヘプレーベは全て返り血を浴びたことで血まみれになっていたみたい。
「うふふ……ヴォーグ様ご無事でなによりでやがります」
「こらまた凄い事になってるなぁ。 やっぱララを連れてこないで正解だったな」
「……つい久しぶりにはしゃぎすぎて、やり過ぎてしまいやがりましたわ」
「これが暴食のログェヘプレーベか。 まさにまるで食い散らかしたようだな」
ふふふってログェヘプレーベは妖艶に笑いながら広間をあとにしたの。
父様はどこか背筋が凍るような感覚を覚えながら、兵士たちに広間の死体処理を命じたんだ。
今回の野盗の集団の襲撃はこれで沈静化したみたいで、国の外で戦っていた軍も無事に勝利を収めたみたい。
マクシミリアンは危険を未然に防ぐためという理由で、父様には内緒で捕らえた野盗は全員その場で処刑したんだって。
お城の片づけが終わって呼ばれた私たちは、父様とログェヘプレーベから今後のお話を聞かされたの。
「近日、同盟国のセーラム女帝国、ウィンストン公国、キャビン魔導王国で軍を出してメビウス連邦共和国の立て直しを手伝いに遠征する事にした。
ララ、しばらく寂しくなるけど父様も行ってくるつもりだ」
父様がいない間は母様とログェヘプレーベに国を任せる事になって、その間の王宮の守りは冒険者たちに緊急招集をかけて守らせる事になったんだ。




