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第三十八話 魔人と悪魔

キリのいいところが見つからずかなりボリューミーになってしまいました、、、


アリューアル砂漠を目指すセシルたち、そして魔人ベリーサと共に麻生たちも同じく砂漠を進んでいた。


 大穴から這い出て半日ーー麻生とドレイクは負傷した傷が開き意識が朦朧とするベリーサをロープで引き上げた後、その近くにテントを建てベリーサの回復を待っていた。


「なあ、オッサン。セシルの遺体も早く埋葬してやらねぇと腐敗してくるってのに、こんなところでじっとしてていいのかよ…」


「仕方なかろう。2人をおぶって砂漠は越えられん。せめてベリーサが回復するまでは待つしかない」


 そんな話をしていると、突如として寝かせていたセシルの遺体が光と共に霧散して消えた。


「え…今、セシル…消えた…よな?」


「あ、ああ…何が起こったんだ…神さんは死ぬとああなるのか?」


「知らねーよ!それにしては死んでから消えるまで時間差ありすぎだろ…どこいったんだ…クソッ!」


「あんな未知な現象、考えてもわからん。ここは前向きに考えて荷物が減って動きやすくなったと考えよう。セシルには悪いがな」


 薄情ととるか、現実的ととるかーー感じ方は人それぞれだが、麻生は前者だった。


「荷物ってなんだよ!!あいつは俺たちを助けようとして死んだんだぞ!それを…」


「では跡形もなく消えた遺体をどこに行ったかもわからんのにこの広い砂漠の中で探すのか?お前さんがそうしたいなら好きにすればいい。だが、ワシはセシルのおかげで拾った命を無駄にはしたくないんでの…生き残れる方法を優先する」


 返す言葉が見つからず麻生がドレイクにつかみ掛かろうとすると、横から怒号が飛んできた。


「やかましい!!傷を癒すのに寝ることもできん…一体、何を揉めている?」


 ドレイクが事情を話すとベリーサは少し考え込み、導き出した予測を2人に話した。

 普通の人間ではない、神であった者の魂のない抜け殻が突如として消えた理由ーー1つは死後の世界で魂が浄化されるまでは抜け殻としてこの世に身体が残っていたが、その浄化が完了し完全に消滅したことで人間とは異なる肉体であったが故に光に包まれ身体が朽ち消えた。2つ目は死を司る神であったのであれば自らの死も超越できるのかもしれない。死して冥界に行った後、何らかの方法で再び転生したため身体が消えた。


「なるほどのう。この一瞬でそこまで考えが及ぶとはたいしたものだ…後者であってくれればいいんだがの。小僧、お前さんもそれで納得してはくれんか?」


「……ああ、そうだな。悪かった。そう願うよ」


 ベリーサの話でひとまず落ち着きを取り戻した2人は、消えたセシルがまさにこの時、砂漠越えの前に立ち寄った名もなき村に戻ってきたことなど知る由もなかった。


「ところでベリーサ、動けそうかの?ワシら、アウナスに敗れた際に仲間を1人残してきておっての。できれば少し急ぎたい」


「ああ、問題ない。出発しよう」


 まだ顔色のすぐれないベリーサであったが、3人はテントを片付けて生命水が採れるサボテン、アストロペクチが群生するアウナスの縄張りへと急ぐことにした。


「グレイスのやつ、上手く逃げ切れてっといいけど…」


「あの娘は賢い。上手く逃げ切れて無事でいるだろうさ」


「ところで、ベリーサ。アウナスのやつを見つけたらどう戦うんだ?アイツ、砂嵐やら砂地獄やら鬱陶しい技ばかり使ってきやがるけど、対策しとかねぇとまたやられちまうだろ」


「そうなのか。私は戦うこともなく背後から刺されたからな。強力な魔法でねじ伏せようと考えていたが…具体的にどういう技なのか聞かせてほしい」


 アウナスは不意打ちをするような姑息な悪魔なのだから実力はたいしたことがないとベリーサは考えていたのだろう。しかし、麻生とドレイクが苦戦したと聞いて考えを改めた。

 麻生は歩きながらアウナスとの戦った時の詳細をベリーサに話した。それを聞き、ベリーサはニヤリと不敵に微笑む。


「好都合だな。私は爆炎の魔人だ。砂嵐に私の火力で辺り一帯を高熱にすれば上昇気流が発生して大雨が降るはず。それで砂嵐も砂地獄も無力化できる。あとはお前たちがアウナスを直接叩けば終いだ」


「ハ、ハハ…どえらい強力な助っ人をゲットしちまったな…鬼に金棒じゃねぇか」


 



 一方、名もなき村を出たセシルたちもまたアリューアル砂漠に向かって歩き出していた。


「あっつい〜ビール飲みたい〜水浴びしたい〜」


「イザナミ、ちょっと黙ろうか…」


「に、にぎやかな方ですね…」


 ここでもイザナミは黙ることを知らずひたすら口を動かしていた。暑さで気が立っているのか、セシルも塩対応だ。

 数時間かけてようやく砂漠の入口まで戻ってきた3人は遠くの方に人影を見つけた。


「あんなところに人が…」


「2…いや、3人ですね。冒険者でしょうか…」


「とりあえず声をかけてみよう。イザナミ、行ってきて」


「あいよー!…ん?ウチ!?なんで!?」


「だって、この中で一番足速いのイザナミだもん」


「だもんって可愛く言われても…セッシー人遣い荒いで!」


 グダグダ文句を垂れながらイザナミはひとっ走りして人影のほうに駆けていった。


「文句は言いつつも行くんですね…」


「グレイスも彼女には気を使わなくていいからね」


 無垢な笑顔を浮かべながら黒いことを言うセシルに、グレイスは彼の心の闇を見たような気がした。しばらくすると、イザナミが砂埃をあげながら走って戻ってきた。


「はあ…はあっ…はぁ…あっっっつ。なにこれ、汗止まらんのやけど…。あ…セッシー、ウチ…その、汗臭いから抱きしめるとかそういうのは今はNGな…」


「セ、セシルさん!?イザナミさんとそういうご関係だったんですか!?


「うん、そんなことしたことないよね。ここで意味のわからない乙女感出さなくていいから、あそこの人たちが何者だったのか早く教えてよ」


 どんな光も反射せずに吸収してしまうという暗黒物質のように深い黒色の瞳で無表情のまま催促するセシル。イザナミは背筋に悪寒が走ったような気がして、速やかに報告を行なった。


「それがな、めちゃくちゃ変な組み合わせの3人やってん!エキゾチックな格好したべっぴんの踊り子さんと、毛深い小さいオッサン、それとあれはたぶん日本人…ん?あれ?そういや、あの人、セッシーの魂を回収しに行った時に近くにおった日本人ちゃうん!?そうや!絶対そうや!」


 セシルはその言葉を聞いて急に走り出した。グレイスもそれに続いて走り出す。2人の突然の行動に呆気にとられていたイザナミも勘弁してと言わんばかりの苦悶の表情を浮かべつつ、元来た方向へセシルたちの後を追いかけることにした。


 足場の悪い砂漠を走りながら大声で呼び掛けてくるその姿を砂丘から見ていた2人もセシルの方向へと走り出す。


「セシル!!お前…お前本当に生き返ってんじゃねぇかよ!!…くっ、心配かけさせやがって…っ!!」


「ごめん。待たせたね。2人も無事でよかった」


「ワシらは運が良かっただけだがの。お前さんはさすが元死神ってところか…おお、グレイスもやはり無事だったか」


「はい!みんな無事で本当によかった…」


 敗走し散り散りになっていた4人は再会の喜びを大いに噛みしめ合っていた。そこまで長い期間離れていた訳ではなかったが、互いに困難を乗り越えてきたことでその喜びも一入であった。そんな中、麻生があることに気が付いた。


「な、なあ…後ろにいる、こっちをじぃ〜っと見てる着物の女の子ってセシルのツレか…?」


「え…キモい女の子?ああ、うん。色々あってね…ニホンの死神なんだよ」


「誰がキモいやねん!あ、どーもどーも、ご紹介に預かりました、わたくし死神のイザナミと申しますぅ!ワケあってセッシーのパートナーやってマス⭐︎」


「ご覧の通り、ちょっとイタイ子でね…」


「ちょいちょい!イタイ子言うな!」


「仲良いな…お前ら。つーか、日本の死神!?え、なんだよそれ…日本のって、もしかして俺、死ぬのか…?」


「いや、ちょっと下手こいてここにいるだけだから大丈夫だよ」


「ちょ、言い方!違いますよ〜皆さんのチカラになりたくてここにいさせてもろてます〜どーぞよろしゅう」


 イザナミのキャラの濃さで影が薄くなっているが、このにぎやかな再会を1人少し離れた場所から冷めた目で見つめている者がいたーー魔人ベリーサである。ベリーサは唯一、気を許しているドレイクに声をかけた。


「ドレイク、私は先に行かせてもらうわ」


「ん?おお、すまん。待ってくれ。みんな、あの娘はベリーサだ。彼女もアウナスとの戦いに協力してくれるというんでの、一緒に来てもらった」


「聞いて驚くなよ、セシル。ベリーサは悪魔の力だけを取り込んだ魔じ…」


「おい、よさんか。そこは本人の了承を得てから話すべきではないかの?」


 麻生が得意げに話そうとしたが、ドレイクに止められ、口を押さえた。その様子を見ていたベリーサはセシルたちの元に近づいて来た。


「構わない。秘密にしておくことでもないしな。私はベリアルという悪魔の力を取り込んだ魔人だ。アウナスには思うところがあってな…私1人で片付ける。お前たちはその内に生命水とやらを回収すればいい」


 素っ気なく自己紹介を済ませると、ベリーサはそのまま歩いていってしまった。


「悪魔の力だけを取り込んだ…?ドレイク、本当なの…?」


「ああ、凄まじい魔力を持っておる。おそらく本当だろう。さ、ワシらもそろそろ行くとしよう」


 ベリーサが先に行ってしまったのをきっかけに残りの面々も歩き出し彼女の後を追った。しばらく進んでいくと、サソリの魔物セルケトの群れが徘徊していた。アウナスの居場所に近づいている証拠だと、セシルたちは警戒しながら武器を構える。

 しかし、先頭を歩くベリーサはセルケトを無視して、そのまま群れの中を歩いていった。


「え、え?どうして襲われねぇんだよ!?」


「魔人だから…かな。セルケトはたぶん魔力感知だけで対象を判別していて、ベリーサの持つ悪魔の魔力をアウナスと勘違いしているのかも…」


 しかし、その説だとセシルたちは素通り出来ない。群れに近づくと案の定、セルケトは襲い掛かってきたので仕方なく退治していくことにした。


「なんか、ベリーサの尻拭いをさせられたような気分だぜ…」


「うっわ!ジンくん、女の子に"尻"なんてやっらすぃ〜!」


「なあ、セシル…俺、この子ニガテだわ…」


 セシルは黙ったまま首を縦に振った。ベリーサを除いた他の面々がセルケトに向かって行く中、セシルは八岐大蛇戦で手に入れた天叢雲剣の初陣をどう飾ろうかと思案している。


 ーー重量のある大鎌を利き手の右に持って、左で刀…剣筋がブレそうだな。とにかくやってみるしかない!


 セシルは両手にそれぞれ武器を持ち、一匹目に鎌を振り下ろしつつ身体を反時計回りに翻して二匹目を刀で薙ぎ払った。


 ーーうん、多対一には使えるかも。この刀の斬れ味が凄まじいお陰で多少剣筋がブレても難なく倒せる。


「おい、セシル!なんだよそれ!?鎌と刀の二刀流とか中二かよ!カッコ良すぎんだろ!」


 ーーなに?チューニ?


 麻生の羨望の眼差しを受けながら、セシルはセルケトを圧倒していき、群れは間も無く全滅した。

 皆がセシルの新技に湧く中、少し離れた場所で爆発が起きた。


「ベリーサのやつ、始めおったか!?」


 どうやら先に行ったベリーサがアウナスと遭遇し攻撃を開始した音らしい。セシルたちは急いでベリーサの元へと走った。

 そこにはベリーサが火球を次々と放ち、アウナスがそれを小さな砂の竜巻を発生させて相殺していく姿があった。


「お嬢ちゃん生きてたのねぇ〜でも、しつこいオンナって好きじゃないわぁ」


「お前に好かれるなんて反吐が出る。好都合だ」


 一気にケリを付けようとベリーサが指で陣を切ると、アウナスの足元に赤く光る魔法陣が出現した。アウナスは高くジャンプしながら魔法陣が出現した地面を砂地獄へと変えて魔法陣を地中へ流し込むと、地中で大爆発が起き、砂が舞い散って地面が隆起しながら波打っていく。

 あまりに激しい戦いを前にセシルたちは固唾を飲んで加勢するタイミングを見計らっていた。


「悪魔の力同士の戦いってこんなに激しいのかよ…ゾッとするぜ…」


「へえ〜あれが悪魔…って、ただのキモいオネエやん!!悪魔ってオネエのことなん!?」


「いや、違うから…この世界はそこまで歪んでない…はず」


 ベリーサから離れた場所に着地したアウナスは砂嵐を発生させた。ゆるやかだった風が急に猛威を振るいだし、セシルたちをも呑み込んで辺りは一瞬にして視界最悪の砂嵐に包まれた。

 それでも一向に動じないベリーサに対してアウナスは追い討ちをかけるように砂地獄をベリーサの足元に発生させる。身体が徐々に沈んでいく中、全身に魔力を巡らせて身体が紅く染まっていく。そしてそれを放出すると至る所から火柱が立ち昇り気温が急激に上昇していった。


「ぬぅっ…ここにいるとワシらもあの熱の巻き添えを食らいそうだの。もう少し離れるか…」


「あの…私の雷撃で砂嵐を無効化した方がいいでしょうか…?」


「大丈夫だよ。あの火柱が砂嵐を止めてくれるはずだから」


 腰あたりまで砂に呑まれたベリーサは狼狽える様子もなく冷静に両手を砂の中に突っ込み、爆破魔法を放っていとも容易く砂地獄から抜け出した。

 砂嵐ですでに薄暗くなっていた一帯が、空が次第に雲に覆われ始めたことでさらに暗くなっていく。そして、堰を切ったように突如豪雨が降り出した。雨の勢いで砂嵐は一気に沈静化していく。


「ア、アナタやるわねぇ〜アタシのとっておきを2つも潰すなんて。こうなったら本気出しちゃおうかしらぁ〜」


 セシルたちを苦しめた2つの技がベリーサには通用しないことを悟ったアウナスは、セルケトを呼び出す指笛を吹いた。砂の中から次々と現れるセルケトだったが、すぐにベリーサは爆破の魔力を込めた球体を投げつけセルケトたちを爆散させた。

 しかし、その隙をついてアウナスが肉弾戦に持ち込むべく接近してきていた。剛腕から繰り出される右ストレートにベリーサは防衛する術がなく殴り飛ばされた。


「お嬢ちゃん、魔力は強いみたいだけど…思った通り腕力は全然ダメねぇ〜アタシ、腕っぷしにも自信があるのよぉ〜ボッコボコにしてアゲル」


 吹き飛ぶベリーサを追いかけて更に乱打を繰り出す。ベリーサも何とか凌ごうと炎のベールを自身の前に展開するが、アウナスはそのベールを突き破って攻撃をしかけてくる。


「ちょっとマズそうだね…加勢に行く!」


 押され始めたベリーサを見ていられなかったのか、セシルは戦闘区域に駆け出していった。髪にまとわりついた雨混じりの砂を払っていたイザナミもセシルが動き出したのを見て追いかける。


「っしゃあ!多勢に無勢とか言ってらんねぇ!!ここらでケリつけてやろうぜ!!」


 2人に続き、麻生、ドレイクも飛び出していき、グレイスは矢を構えアウナスに狙いを定めた。

 アウナスの猛攻を受け、ベリーサの傷口からは再び血が滲み出してきている。腕を前にガードして耐え忍んでいるところにセシルがアウナスの背後から大鎌を振り下ろしてきた。


「あらぁ〜?イケメンちゃん、死んだんじゃなかったかしらぁ〜!?アナタ不死身なのぉ〜?」


 背後からの攻撃だったにも関わらずアウナスはセシルの鎌をノールックで横に避けつつ、ベリーサを強力な一撃で遠くに殴り飛ばしてセシルへの対応に切り替えた。

 そこに今度は神速で現れたイザナミが横から斬りつけてくるが、アウナスは刀を手で掴み、そのまま地面にイザナミごと叩きつけた。


「ヤダァ〜モテ期到来かしら?そんなに大勢で迫られると困っちゃうわねぇ〜でも、アタシは今イケメンちゃんと2人きりがいいのぉ〜」


 セシルは大鎌をブーメランのようにアウナスに投げつけた。これを交わせばセシルは丸裸も同然と考えたアウナスは飛来する大鎌を屈んで回避して一気にセシルへと詰め寄った。しかし、セシルの手には天叢雲剣が握られていた。


「ウソぉん!?もう一つ武器持ってたのぉ〜!?」


 油断して接近してきたアウナスにセシルは刀を全力で薙ぎ払った。咄嗟にガードしたアウナスの左腕の上腕から下が宙を舞った。しかし、斬り落とされたはずの左腕は落ちずにセシルへと向かって来て首に掴みかかってきた。


「ヒドイわねぇ〜イケメンちゃん。アタシの腕を斬るなんて、でもアタシってば執念深いのよぉ」


 首を絞められ動きが鈍ったセシルは地面に膝をつき苦しんでいる。そこに砂地獄が発生した。雨も混ざって底なし沼のような様相の砂地獄に引き摺り込まれていくセシル。首を絞められいるため砂地獄への対策として考えていた地中の岩盤を凍結させる、もしくは石化させるための魔法が詠唱できず、セシルの身体がみるみる沈んでいく。


「セシル!?待ってろ!オッサン行くぞ!!」


 ようやく戦闘区域に入った麻生がアウナスへと襲い掛かる。セシルの元へ急ぐドレイクを追い抜いてイザナミが目にも止まらぬ速さでセシルの元へと駆けつけてそのまま腕を掴んで引っ張り出した。


「セッシー、油断しすぎやで…雨が降ってるってことは雨を遮って行くんやから雨を弾く音とかで背後でも動きは読まれやすい。それにアイツ重力を操るんやから、自分の腕を重力反転させて浮かせることも出来るやろ。待ってや、今斬り刻むから」


 イザナミが鞘から抜刀した瞬間、見えない太刀筋がアウナスの左腕を細切れにしたことで解放され、セシルは大きく咽せた。


「げほっげほっ…ありがとう。あの悪魔、ふざけた言動の割に頭がキレるね…」


 左腕を欠いてるアウナスに麻生が左側から乱打を仕掛け、その反対側をドレイクがハンマーで殴りかかる、そこに遠方からのグレイスの矢が迫り来る。それら全てを同時に防ぐためにアウナスは自分を中心に砂の竜巻を巻き起こした。

砂塵の壁に阻まれて麻生たちの攻撃はアウナスに届かない。


「何だこれ!?攻撃が届かずに弾かれる!?」


「やりおるわい…応用の仕方から見て、なかなかに戦い慣れておる」


「褒めたって何も出ないわよぉ〜あと、脳筋ブラザーズに用はないから〜」


「だから、テメェに言われたくねーよ!!」


 砂の防御壁を張ったままアウナスは後退していく。現状、左腕を落としたとはいえ虚をついたセシルの一撃しかダメージを与えられていない。

 前回は砂嵐と砂地獄という癖のある技に敗れ対策を練ってきたが、アウナスは戦闘センスも抜群に優れていた。ベリーサからセシル、セシルからイザナミ、そして麻生、ドレイク、グレイスたちの次から次へと来る攻撃を瞬時に的確な判断によって防ぐことが出来たのは豊富な戦闘経験と高いセンスの賜物だろう。


「さすがのアタシも6マタは疲れるわねぇ〜。キリもいいし、今日のところは帰っちゃおうかしら〜」


 しかしその時、アウナスの真上から直径50mほどの巨大な火の玉が降り注いできた。あまりの高熱に火球の周りの雨が一瞬で蒸発していく。

 アウナスの周囲は砂の壁に覆われているが、竜巻状になっているため真上はガラ空きだった。それを見抜いたベリーサの攻撃だった。


「消し炭になりな!イグニス・インフェルナーレ!!」


「ちょ、ちょっとぉ〜大きすぎるわよぉー!!」


 回避不能なサイズの火球がアウナスを呑み込んで地面に激突した。その瞬間、外側に向かって熱風が辺りへと吹き付ける。皮膚をジリジリと焼くような高熱の風にセシルたちは堪らずローブで身を覆った。

 砂を溶かし、火球は地中へと押し進んでいく。やがて地底で爆発を起こした衝撃波が地面を走り砂漠の砂を空へと舞い上げた。


「す、すごい…」


 その場にいた全員が砂と雨に打たれながらベリーサの渾身の一撃に目を丸くして立ち尽くしていたが、我に返った麻生は走ってベリーサの元へと行き薬草を手渡そうとした。しかし、ベリーサの傷は完全に治っていた。


「ベリーサ…お前どうして傷が治ってるんだよ?」


「殴り飛ばされたところに偶然、サボテンがあってな。生命水とやらを飲んだ」


 セシルたちが探し求めていたアストロペクチ。その群生地で戦っていたのだから生えていても不思議はない。しかし、あの状況で生命水を飲むという発想はベリーサの機転の良さがあってこそだと麻生は感心した。

 遅れて合流したドレイクたちと共にセシルの元へ戻り、ようやく終わった戦いに一同は胸を撫で下ろした。


「はあ…ウチ結局なんもできんかったわ。でも、さすがにアレ食らって生きてたらもう打つ手ないんちゃう?」


「ちょ、それフラグ…」


 イザナミがお約束と言わんばかりに不吉なことを言った瞬間、火球が開けた大穴から何かが飛び出し、近くの陸地に着地した。そこに立っていたのは頭頂部からサソリの尾っぽが伸び、全身が甲殻類のような質感に覆われている紫色の怪物だった。


「はあ…はあ…さすがに死んだと思ったわよぉ…咄嗟に砂地獄で地中に潜ってなかったら……焼け死んでただろうがよおおお!!テメェらぁあああああっ!!!」


「あ、あれがアウナスの本当の姿…」


「めちゃくちゃキレてんじゃねぇか…おい!イザナミ!おめぇが変なこと言うから!!」


「ウチ関係ないやん!?」


「クソムシ並みの生命力だな。今度こそ灰にしてやる」


「みんな、もういい加減、終わりにしよう」

アウナス戦、長くね?

ですよね、、、エルフの里を救うのに何話消費するねんって自分でも思ってます。


オリュンポスのほうでも大変なことが起きてるというのに、、、セシルたち、頑張って!←どこ目線

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