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第三十一話 死神、オネエに気に入られる

砂嵐とセルケトの包囲網による窮地を脱したかに思えたセシルたちであったが、そこにヴィジョンで見た人影がついに姿を現した


「人じゃ…ない?なんだよ、あれ!サソリみてぇなシッポ生えてんぞ!つーか、お姉さんって…テメェどう見てもムキムキの男だろうがよ!!気持ち悪りぃな!!」


 敵はお姉さんではなく、オネエだった。


「きもちわ…アンタねぇ!!人を見るなり気持ち悪いはないでしょうがよ!!このクソガキが!!ブッ殺すぞ、オイ!!」


 ドスの効いた声で威嚇しているが、裾が末広がりになったフレアパンツに先の尖ったブーツを履き、筋骨隆々の上半身は裸に直接サスペンダーだけを身につけているーー明らかに異質。そして砂漠に来る格好ではない。


「ジン、気をつけて。その人、たぶん魔物使いだ。その人からセルケトに向かって魔力の糸のようなものが伸びている」


「あら、そこのイケメンボーイはアタシのこと、ちゃんとわかってくれるのね〜合格!」


「いや何がだよ!」


 すかさず麻生のツッコミが入る。どうやら肉体派同士とはいえ、ドレイクと違いこのオネエとは相容れないようだ。


「やかましい"おガキ"は放っておくとして…イケメンちゃん、アタシの名はアウナス。砂を愛し、砂に愛された悪魔よ。まずはここへ何をしに来たのか教えてちょうだぁい」


「誰がおガキだ!!」


 アウナスが現れてからというもの、全てのセルケトはずっと大人しくしている。やはりセシルの言う通りセルケトを使役する魔物使いの能力を持っているのかもしれない。


「ここらへんに生えているアストロペクチっていうサボテンを探してるだけだよ。そのサボテンから採れる生命水が必要なんだ」


「やっぱりそうなのねえ。でもザンネン。あれはアタシの大好物なの。だから、このまま帰るならイケメンちゃんのお顔の良さに免じて見逃してア・ゲ・ル」


 セシルの答えはもちろん"NO"であった。すると、ずっと待機していたセルケトが再び進行を開始した。砂嵐の影響で実力の半分も出しきれていなかった4人だが、グレイスの活躍で今はただの強風が吹くのみ。セシルは一気に大鎌に魔力を集めると、放物線状に前方120度くらいの範囲に向けて鎌を薙ぎ払うように振り切った。


「ジン!ドレイク!屈んで!!ダークネス・サイズ!」


 セシルの掛け声で麻生とドレイクは砂の上にうつ伏せに寝そべった。その上をブーメラン状の黒い波動がいくつもセルケトに向かって飛んでいく。その波動は残っていたセルケトに直撃すると同時に息の根を止め一気に殲滅した。残すはアウナスただ1人となった。


「わーお。イケメンちゃん、すごいわねえ…これはアタシも本気出さないとマズイかもしれないわね…」


 追い詰められたにも関わらず、アウナスは未だ余裕のある素振りを見せる。アウナスの出方を窺いながら、今度は麻生が攻撃を仕掛けようとアウナスに向かって行った。アウナスは避けようともせず、両手を足元の砂の中に突っ込んで魔力を解放した。


「サンド・デス・ストリーム!!」


 アウナスの詠唱とともに地震のように地表が揺れ始め、麻生の進行方向に突如として地面が陥没し渦を巻いた巨大な砂地獄が現れた。


「おわっ!?マジか!?」


 駆ける足を止め、砂地獄の手前ギリギリで立ち止まる麻生であったが、出現した砂地獄は麻生の前だけではなかった。次々と地面が陥没していく。そして、ドレイクが立っていた場所にも流砂が起き渦を巻いて、ドレイクの足を沈め始めた。


「ぬおっ!?アリューアル砂漠の砂地獄はこやつの仕業であったか!おのれ!抜けん!!」


 麻生の前に現れた砂地獄もどんどんと拡大していき、麻生も足を取られ渦に捕らわれる。

 元々浮いていたグレイスと、セシルも咄嗟に浮遊魔法で危機を脱したが、麻生とドレイクが砂地獄に飲み込まれそうになっている。


「ジン!ドレイク!!くっ…どうすれば…」


「ヌフフ。この砂地獄は一度はまったら抜け出せないわよ〜。仲間を助けるか、大技を使って魔力を消耗しているアタシを殺すか…さあ!選んでちょおだぁい!!」


 グレイスは未だ砂嵐の砂を吸い寄せるのに雷撃を発生させ続けていて手が離せない。

 麻生たちを助けようと空中から手を伸ばせばアウナスからの直接攻撃がくる。抜け出せないと本人が言っている以上、そう易々と麻生たちを救い出すことはできないだろう。

 だが、アウナスを攻撃すれば万が一倒せたとしても、それまでに麻生たちが呑まれる。結局、この選択肢はどちらを選んでも詰む。

 セシルが悩んでいる間に麻生たちの身体はすでに腰あたりまで沈んでいる。もはや時間がない。


 ーーダメだ!!もうどうしようもない!


 セシルは滞空状態から一気に加速して飛んでいき、麻生の手を握った。そして、もう片方の手で大鎌の刃に近い部分を握って柄のほうをドレイクに差し出した。砂に呑まれつつある2人が手と柄を握った瞬間、セシルは雄叫びを上げながら上に向かって飛ぼうと魔力を上げる。しかし、やはりなかなか2人の身体は砂から出てこない。


「選択を間違えちゃったわね、イケメンちゃん。グッバイ」


 踏ん張っていたセシルにアウナスが飛びかかってきていた。そして、アウナスの右腕が砂に包まれ剣のような形になって凝固すると、それをセシルの胸元へと突き刺した。

 胸元から滴り落ちる血が砂に滲む。それでもセシルは上昇を止めようとはしない。


「セシル!!バカヤロウ!!俺たちなんかのために…もういい!今すぐここを離れて治癒魔法をかけろって!!」


「君たちを見捨てる訳にはいかない…」


「あらヤダ。イケメンちゃんってば、見た目よりもタフなのね…アタシ燃えちゃう!」


 アウナスの右手の砂が剣から剣山のように無数の針状へと形を変えてセシルの身体を貫く。


「がはっ!!」


 容赦ないアウナスの攻撃にセシルの高度はどんどん下がっていき、やがて握っていた麻生の手から手が離れセシルも麻生のいる砂地獄に落ちた。


「無念じゃ…何の役にも立てんですまんかった若造たち…」


「グレイス!!もういい!お前だけでも逃げろ!!」


 ドレイクの姿が見えなくなり、グレイスに呼び掛けた麻生と気を失ったセシルが順に呑み込まれていき、3人は砂地獄に消えた。


「そんな…セシルさんまで…」


「さあて、お嬢さん。アナタだけになっちゃったわね。どうするの〜?脳筋の子が逃げろって言ってたわねえ。アタシも久しぶりにはしゃぎすぎちゃって少し疲れたから、今なら見逃してあげるわよ〜」


 浮遊しながら雷撃を放ち続けていたグレイスももはや魔力が底をつきかけている。今ここでアウナスに立ち向かっても勝てる見込みはなかった。グレイスは雷撃を止め地面に降りた。再び砂の粒子が風に乗って嵐となる前に、せめて一矢報いようとグレイスは矢を引いてアウナスに向けて放った。しかし、アウナスの操る砂の壁に遮られ矢が届くことはなかった。


「往生際の悪いお嬢さんだこと…あら?いない?ヌフフ、アタシが矢に気を取られている隙に……いいじゃない!あの子!アタシの言葉を信用せずにちゃんと段取ってから逃げるなんて、ちゃっかりしてる!気に入ったわ!また逢えるといいのだけど〜」


 砂漠を直走るグレイスの瞳からは様々な思いが溢れ出ていた。それを拭いながらグレイスはとにかく走り続けた。どこへ向かえばいいかもわからないまま、ただひたすらにーー

今回はいいタイトルが思いつかず、ホーム⚫︎ス、家を買う的なノリになってしまいました、、、


最初は"敗走"にしてたんですが、ちょっとネタバレがすぎると思い、こちらに変更。


主人公だから死んでないんでしょ?とかお思いのアナタ。

ドラゴンボールでも悟空さんは何回か死んでますからね、、、どうなることやら、、、

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