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第二十四話 バルムンクの剣

本日はリエリカ編です〜


ギリシア神話をベースにしていたはずが、今回はガッツリ北欧神話、、、神さま多すぎて困りますね


 ヴァルキュリアーー主神オーディンに仕え、戦場で散った英雄の魂をヴァルハラへと運ぶ女騎士。

 ラグナス王国騎士団の副団長を務めるリエリカ・ルブランはこの地上、オルテシアに降臨する以前はヴァルキュリアとして神々の戦いで天馬を駆り戦場を駆け巡っていた。


 そんな彼女がパンドラの石で飛ばされたのは、まさにその戦乱の地であった。


「ここはヴィーグリーズ?!では、これはラグナレクの再現…か。なかなかに手の込んだ試練だな」


 リエリカはここで何を成せば試練クリアとなるのか見定めるため、ひとまず天馬で戦場を見て回ることにした。

 太陽と月が消え去り星が降り注ぐ中、大地が裂け炎を噴き上げる。その炎の中から現れた巨人スルトと豊穣の神フレイが一番近くで戦っていた。そしてその先では修練窟の神殿の前でも遭遇した世界蛇、ミドガルズオルムと雷神トールの熾烈な戦いが繰り広げられている。しばらく進むと、巨人たちの大軍勢に対して、リエリカを始めとしたヴァルキュリアたちがこの日のためにヴァルハラへと運び込んだ英雄たちの魂に甲冑を纏わせ派遣された、死せる戦士エインヘリヤルの軍勢が迫っていた。


「エインヘリヤル…あんなにも大勢の魂がヴァルハラに運ばれていたのか。ん……あれは、まさかそんな…ジークフリート!?」


 エインヘリヤルの軍勢の中に、リエリカは1人の戦士の姿を見つけた。

 生前、邪竜ファフニールを退治した竜殺しの英雄である。その時代、リエリカは今と同じく人間に扮して、ジークフリートの邪竜討伐隊に同行していた。そこで戦友となった2人は次第に惹かれ合い、愛し合うようになった。

 しかし、ファフニールを討伐した際に竜の返り血を浴びて人ならざる強靭な肉体を手に入れた彼は、次第に野心と闘争心に狂い、リエリカとは袂を分つことになった。

 その後、王位に目が眩んだ彼は後に痴情のもつれで暗殺されてしまったが、ヴァルハラに帰還していたリエリカが彼の死を知り、再び地上に降りてその魂をヴァルハラに運んだのである。


「久しいな…あの時、私が彼の元を去らなければ彼はは死なずに済んだのだろうか。骸になっても尚、まだ戦いを強要させられているのは私の責任だ…すまない」


 天馬からエインヘリヤルの軍勢を眺め、リエリカは感傷に浸っていた。かつて愛した男の哀れな姿に胸を傷めるリエリカは耐えきれず目を閉じた。


 ーーラグナレクの時、私はオーディン様と共に巨狼フェンリルとの戦闘に身を置いていた。こうして俯瞰で見ることなどなかったから知らなかったが…まさかエインヘリヤルに彼の魂も駆り出されていたなんて。


 今になってパンドラの石の力によって知り得た新たな真実。後ろ髪引かれながらリエリカはそのまま別の戦場も見ておこうとその場から去ろうとすると、地上から巨人たちの断末魔が聞こえてきた。地上を見下ろすと、剣一つでジークフリートが次々と巨人兵を討ち取っている。


 ーー死してもやはり凄い…あの強さは本物だ…。


 元恋人の勇姿に、その場から移動するのを忘れ魅入るリエリカ。そんな隙だらけの彼女に巨人が気付き、走りながら石鎚を投げつけてきた。


「危ないっ!!」


 その声で我に返ったリエリカは僅差で石鎚を回避した。そして、石鎚を投げた巨人は駆け付けたジークフリートによって瞬時に首を刎ね落とされた。


「大丈夫かい?戦場でよそ見はいけないな、リエリカ」


 惹かれ始めた頃の彼の優しい声にリエリカはハッとした。


「ジーク…ごめんなさい」


 それが何に対する謝罪だったのかはリエリカ自身にもわからなかった。よそ見をしていてごめんなさいなのか、見捨ててしまってごめんなさいなのか、はたまた、魂を弄んでごめんなさいなのかーーとにかく謝りたいという気持ちから謝罪の言葉が口をついて出た。


「よくわからないが、構わないさ。君は昔から注意力散漫だったからね」


「ジーク!もう…意地悪だな」


「謝らなければならない僕の方だ。竜の血を浴びて僕は変わってしまった。血にまで潜んでいた竜の邪気に当てられて、どんどん欲望の抑制が効かなくなった。そして、君を失った。あの時の僕はどうかしていた。今更こんなことを言うのは痴がましいけど…もう一度、もう一度やり直せないか?」


 再会してようやく知ることができた真相。その言葉をずっと待っていた気がする。リエリカの頬を涙が伝う。


「もう、無理よ…だって、貴方は死者だもの……」


 その返事を聞いてジークフリートの顔がみるみる歪んでいくーー邪竜にでも取り憑かれたかのように。


「どうしてだ!!俺が下手に出てこんなにも懇願してるのに断るのか!!ならばいっそのこと、ここで死ね!!」


 豹変したジークフリートは剣を振り下ろしてきたが、それを剣で弾き返すとリエリカは魔法の詠唱を始めた。


「穢れし御魂よ、邪を滅し清め、天へと還したまえ…セント・レクイエム」


 ジークフリートの身体が発光し、白い炎に包まれると悶え苦しみながら悲鳴を上げ消え去っていった。塵一つ残さず消え去ったところに残ったのは一本の剣だった。


「宝剣バルムンク…思えば、この剣を手にした時から貴方はすでに目の色を変えていた気がするな…」


"愛する者への未練を断ち切り、内に潜む闇を見抜きし戦乙女よ。その心眼、見事であった。宝剣を手にし、次なる終末への戦に備えるが良い"


「この声は…なるほど。試練クリアのご褒美がこの剣か。まぁ、彼から受けた悲しみの慰謝料として頂いておこう」



 神殿に戻ってきたリエリカを見て麻生とグレイスが駆け寄ってきた。


「お疲れっす、リエリカ姉さん!」


「リエリカさんはどんな試練だったのですか?」


「え?あ、いや…えーっと、そうだな…昔の男への未練を吹っ切るための試練…みたいな感じだった…」


「む、昔の男ぉっ!?」


「リ、リエリカさん!その話、詳しく!!」


 下世話な話だというのに、野次馬根性まる出しの2人にせがまれて、リエリカは仕方なく面倒くさそうに試練の全容を話すことになったのであった。

リエリカの元カレ、ジークフリートのご紹介。

伝記ではジークフリートは王女と結婚したにも関わらず、王子と結婚した女性にも手を出したそうな、、、それが原因で殺されてしまうという。

そんな訳で、脳内再生で声をイメージをすると古谷徹さんが思い浮かびました。←それ、声というかプライベートのイメージでは


ドラゴンスレイヤーでも、女性の恨みには勝てなかったんですねぇ、、、神話の世界も世知辛い。



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