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桂と竹之内は芹沢勇作について調べることにした。
「芹沢は四十一歳で独身。八王子市内のアパートに住んでいたようだ」
デスクに座っている竹之内が、正面のデスクに座る桂に向かって話す。
「それから芹沢には婚姻歴があり、五才の子どもがいたらしい……」
「いたらしい?」と、桂が訊き返す。
「そう。その子は勇太くんという男の子で、五年前に交通事故で亡くなってしまったそうだ……」
竹之内はゆっくりとそう言った。
「交通事故か……。可哀想ですね……」
桂は残念そうな顔をして言う。
「そうだな……。あ、それと、芹沢は交通事故で子どもを亡くした後、奥さんの睦美さんと離婚をしている。奥さんと別れてから芹沢は独身なんだそうだ」と、竹之内は言った。
「なるほど……。つまり、芹沢は独身、バツイチ、子なしという訳ですか……。子どもを亡くし、さらに奥さんとも離婚しているなんて、なんだか不憫でならないですね……」
桂が呟くように言う。
「ああ。近所の人の話によれば、芹沢は亡くした息子のことを毎日想っていたらしい」と、竹之内は言う。
「そうなんですね……」と、桂はぽつりと言う。
「芹沢は子どもが欲しかったのかな?」
ふいに、竹之内がそう言った。
「え? 今なんて言いました?」
桂は訊き返す。
「子どもが欲しかったんじゃないかって……」
竹之内がそう言うと、桂は思い出したように「それですよ!」と、大声で言った。
「それ?」と、竹之内がビックリして訊く。
「子どもを誘拐した理由です! 芹沢は自分の子どもが欲しかったんですよ!」
桂は竹之内の顔を見て真剣に言った。
「なるほど。……つまり、子どもが欲しかったから誘拐したと?」
竹之内がそう訊き返す。
「そうです」と、桂は頷く。
「うん、それはなんとなく分かった。でも、なんで奴は六人も誘拐したんだ? まさか六人も子どもが欲しかったとでも?」と、竹之内は訊く。
「それは……わかりません」と言って桂は笑う。
「うーむ」
「芹沢は五年前に交通事故で子どもを亡くしたんですよね?」
「うん」
「その交通事故についてもう少し調べません? 何か分かるかもしれません!」
その後、桂たちは五年前の芹沢の息子の交通事故について調べる。
「あった!」
その新聞に交通事故の記事を見つけて桂は声を出す。竹之内もその記事に目を落とす。
〈八王子市 五才少年 轢かれる〉
見出しにはそう書いてあった。
八王子市内の交差点で五才の少年・芹沢勇太くんが信号無視の軽自動車に轢かれ、死亡したとその記事には書いてあった。
「信号無視か……」と、桂が呟く。
「あ、この軽自動車の運転手の名前!」と、竹之内が気付いて言う。
「小木曽匠」と、桂はその名前を口に出す。
「この小木曽匠って、もしかして……」と、竹之内が桂を見て言う。
「小木曽励の父親かもしれませんね……。すぐに確認してみましょう!」
その後、桂たちが小木曽匠について調べると、小木曽励の「父親」であることが判明した。それから、ビックリしたことに彼は四年前に亡くなっていた。
「やっぱりそうか……」と、桂は言った。
「芹沢は、自分の子どもを殺した小木曽匠に恨みがあったのかもしれん」
竹之内がそう言う。
「しかし、小木曽はすでに亡くなっていたんです」と、桂は言う。「だから、仕返しがしたくても、それができなかった。それでも、芹沢の恨みは消えなかったんですよ。それよりも、むしろ、恨みが増すばかりで……」
「そこで、芹沢は小木曽の家族に注目したという訳か……」と、竹之内が言う。
「そうだと思います。小木曽には子どもがいました。芹沢は子供が欲しかったんです。だから、芹沢は小木曽の子どもを誘拐し、復讐のために殺害も考えたんでしょうね」
「なるほど。それじゃあ、本当は小木曽励を殺害することが、奴の目的だったと?」と、竹之内は訊く。
「ええ。ですが、芹沢は一人だけじゃ物足りなかったのかもしれません」と、桂は言う。
「あー、そういや、王子壮の二階の間取りは部屋が六部屋あったね」
竹之内は思い出して言う。
「はい。そこは元々六人が泊まれるペンションのようなんです。それに気付いた芹沢は、おそらくですけど、その後で子どもを六人誘拐してしまおうと考えたんじゃないかと……」
桂がそう言うと、「せっかくならって、怖い話だなあ……」と、竹之内が苦笑する。
「ええ。もちろん、それが大人でも怖いですよ」と、桂も苦笑いする。
「まあそんなこんなで、芹沢は小木曽少年たちを誘拐し、最終的には全員殺害するつもりだったんだと思います。しかし……」
そう言って、桂は一度黙る。
「先に芹沢が殺されてしまった……」と、竹之内が言った。
「そうです。犯人はおそらく……小木曽励です」と、桂が言う。
「え?」と、竹之内は驚く。
「小木曽匠は子どもひき逃げの罪で逮捕されています。それから、小木曽少年の両親も離婚をしていました。彼は今、母親と二人で暮らしているようです」と、桂は説明する。
桂は話を続ける。
「だから、小木曽少年は芹沢に父親を殺された。いや、家庭をメチャクチャにされた。そう思っているに違いないです。だから、彼は芹沢を殺害することに至った……」
「なるほど」と、竹之内が納得する。
「すぐに彼に話を聴きに行きましょう!」
桂は意気揚々とそう言った。




