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 午後五時頃。桂と竹之内は王子壮の周辺に来ていた。小木曽という少年の証言の下、芹沢を殺害したと思しき女性を捜していた。

 ペンションから少し離れた場所に住宅地があった。二人はそこで聞き込みをすることにした。

 桂たちはその住宅地の家を片っ端から訊き込む。

 桂はインターフォンを鳴らした。「はい」と、女性の声がした。

「すみません。私、八王子警察の桂と申します。この近くで事件がありまして、少しお話をお伺いしたいんですが……」

 桂がそう言うと、ややあって玄関の扉が開いた。

「はい……」

 中から出てきたのは、若い女性だった。三十代くらいの長い黒髪の女性だった。

 桂と竹之内は、彼女の容姿を見るなり目を見開く。まさに二人が捜しているような女性であった。

「あの……実はですね。この近くに王子壮というペンションがあるのはご存知ですか?」

 桂が早速そう訊くと、「ええ」と、彼女は頷いた。

「そうですか。実はそこである男性が殺害されていましてね……。芹沢勇作という人物なんですが、ご存知ですか?」

 桂はそう言って、その女性にその男の写真を見せた。

「いえ、存じ上げません……」

 そう言って、彼女は首を振る。

「そうですか」と、桂は言う。

「因みに、あなたは最近、王子壮へは行きましたか?」

 竹之内が彼女に質問する。

「いえ、行ってませんけど」

 彼女はそう言って、首を傾げる。

「そうですか……。分かりました」と、竹之内は呟くように言う。

「すみません、お忙しいところ」

 桂はそう言って、彼女にペコリと頭を下げる。「失礼いたします」

 竹之内も頭を下げた。

 その後も、桂たちはその住宅地の家を一軒一軒回った。しかし、桂たちが捜しているような人物は見当たらなかった。

「少年が見たという女性は、さっきのあの女性なのかな?」

 車内で竹之内が桂に訊いた。

「さあ?」と、運転席に座る桂が首を傾げる。「でも、面識はないようですね……」と、桂は言う。

「そうみたいだな」

「それに、あの場所にも行っていないと言ってましたね」

「嘘か誠か……」

「うーん、嘘を吐いているようにも見えませんでしたけど」

「それじゃあ、あの少年が見たというのは別の女性か……」

「もう少し情報があればいいんですけどね……」

「ああ。……まあ、もう少しこの辺りを調べてみよう」


 かれこれ三時間くらい捜していた。気づけば、午後八時を回っていた。

 辺りは完全に真っ暗である。桂たちは王子壮の前に停めた車の中にいた。

「全く誰も人は来ないな……」

 竹之内がポツリと言った。

「そうですね」と、桂は頷く。

「犯人は現場に戻る、なんて言うけど、戻って来る気配も更々ないね」と、竹之内は言う。

「犯人が戻って来るとも限りませんが」

「まあ、そうだな」

「あ」

 桂がふと声を上げる。

「どうした?」と、竹之内が訊く。

「もしかして、犯人は外部犯ではなく、()()()()()()じゃないですかね?」

 桂がそう言った。

「え? 内部犯?」と、竹之内は驚く。「内部犯ってことは、()()()()()()()()()()ってことかい?」

「おそらく……」

「そんな……まさか」

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