表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/21

第二章 1

 翌朝、目が覚めて萌はベッドから起き上がり、一階へ降りた。トイレに入ろうとして、はたと萌は立ち止まる。すぐそこに男が倒れているのに気づいた。

 ビックリして、萌は思わず大声で叫んだ。

「キャーーーー‼」

 萌が叫んですぐ二階でドタドタと足音がした。

「萌ちゃん!?」

「どうかしたの!?」

 翔喜や励、羽鳥さんが急いで降りて来た。

「何……?」と、翔喜が萌に訊く。

「そ、そこに……あいつが……」

 萌がトイレの前に倒れている男を指しながら恐る恐る言った。

「え!?」

 翔喜たち三人は男のその様子に驚いた。

「こいつ、寝ているだけなんじゃ……」

 翔喜が言った。

「え? そうなの?」と、萌が翔喜を見て訊く。

「いや……」

 励が言いかけて、

「違うわ!」と、羽鳥さんが目を大きくして言った。「せ、背中のところ……()()()()()()()()……」

「本当だ!」と、翔喜。

「うん、死んでるよ……」と、励が男を見て言った。

「ウソ……マジか……」と、翔喜は呟く。

「いやーー‼」と、萌が大声で言った。

 ややあって、二階から足音が二つした。二つの足音は一階へ降りてくる。降りてきたのは、健斗と穂乃果である。

「どうしたんですか?」と、健斗が四人に訊いた。

「見ろよ」と、翔喜が(あご)でその場を指した。

「……え?」

 健斗は男が倒れているのを見て、驚愕する。

「もしかして、死んでるんですか? その男が」と、健斗は言った。

「いや!」

 その後、穂乃果がそう言って手で顔を隠した。

「そうみたいだ」と、翔喜が言う。「見たくないよな……こんなの」と、翔喜は今度、穂乃果を見て言った。

「わたしも嫌!」と、萌が不機嫌な顔で言う。

「私も……」と、羽鳥さんも同調する。

「俺だって嫌だぜ」

 翔喜も言う。

「僕は……」と、健斗が口を開く。「こういうのも変な話ですけど、僕は今、ものすごく()()()()しています。……だって、今、()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 健斗はそう言うと、にやりと笑った。

「気持ち悪い……。なんでこんな時に笑えるの?」

 萌が健斗を横目に言う。

「本当! 人としてどうかと思うけど……」

 羽鳥さんが嫌そうな顔をして言う。

 健斗が口を開く。

「お二人にそう言われるなんて、僕、心外です……。だけど、僕も調子に乗りすぎました……ゴメンナサイ」

 そう言って、健斗は二人に謝る。

 しかし、萌や羽鳥さんは何も言わずに黙っている。他の皆も黙ったまま立ち尽くす。

「しかし、皆さん、考えてみてください」

 再び健斗が口を開く。

「この男が殺された。おそらく凶器は背中に刺さっている包丁で間違いないと思います。ということは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 健斗は、自分がまるで探偵であるかのような口ぶりで言った。

「は? 健斗、お前、何言ってるんだよ!」

 翔喜が大声で言う。

「誰が犯人って言うのよ!」

 萌が怒るように言う。

「それは、推理をしてみないと分からないです」と、健斗は言う。

「推理って、あんた、別に探偵でも警察でもないでしょ?」と、萌が言い返す。

「うん、それはそうだけどね。一介のミステリーマニアとして挑戦してみようと思うんです」

 健斗は明るい声で言った。

「推理って、ねえ……」

 羽鳥さんも呆れるように言う。

「……警察」

 ふと、穂乃果がそう呟いた。

「警察?」と、翔喜が穂乃果を見て訊き返す。

「通報しなきゃ!」と、穂乃果が言った。

「あー、そうだね!」と、翔喜が思い出したように言う。

「でも、どうやって通報すればいいのかしら?」

 羽鳥さんが二人に訊く。

「スマホで……って、そっか。今、俺ら持ってないんだ……」

 翔喜は言って自身がスマホを持っていないことに気付く。穂乃果も残念な顔をする。

「皆、ここを出よう!」

 そう言ったのは、励である。

「出るって……? 出られるの?」と、萌が訊く。

「ああ、この男が殺されたということは、もう僕たちを脅かすものはいないということだよ」と、励は話す。

「ああ、そうか。それじゃあ、二階の窓から出ればいいという訳だな!」と、翔喜が嬉しそうに言う。

「いや、その必要もないよ」

 励はそう言って、倒れている男の前まで行く。そして、励は男のズボンのポケットの上を軽く叩く。

「何してるんだ?」と、翔喜が訊く。

「あった!」

 励はそう言ってそのポケットをまさぐり、中にあるものを取り出した。

「じゃーん!」

 励はにこりと笑って、それを皆に見せる。

「鍵だ!」と、萌がビックリして言う。

「それって、どこの鍵だ?」と、翔喜が訊く。

「多分、ここの」と、励はリビングの扉を指す。そして、励は早速、その鍵で扉を開ける。がちゃりと音がした。

「開いた」ドアノブに手を掛け、励は扉を開ける。「さ、中へ入ろう」

 励が言い、皆でその部屋へ入った。入ってすぐに励はその部屋を見回す。

 リビングは思っていたよりきれいだった。ソファがあり、真ん中にはテーブルがあった。そこにはテレビもある。

「あ!」

 励は()()()()()()()()()()()()()()()()

「窓がある」

「本当だ」と、翔喜も気付いて言う。

他の皆もそれに気付く。

「ここからなら、出られそうだな」と、翔喜が言う。

()()()()は無いのかな?」と、羽鳥さんが言った。

「どこかにあるはずだよ」と、励は答える。「皆で探そう」そう言うと、皆が頷く。

 テーブルにはカップ麺のゴミとビールの缶がいくつも置いてあった。おそらくあの男が飲み食いしていたもので間違いないだろうなと励は思った。

「あ、こんなところに鍵がありますよ」

 そう言ったのは、健斗だった。散らかったテーブルの上に鍵束が置いてあった。

「ずいぶんとご丁寧なこと……」

 羽鳥さんが言って笑う。

「この鍵は、おそらく()()()で間違いないだろうね」

 励がそう言った。

「ホントに!」と、萌が嬉しそうに言う。

 励は頷く。励は鍵を取ると、「皆、ちょっと待ってて」と言ってその部屋の窓の前へ行く。それから、その窓を開けた。励は窓からひょいと身を乗り出し、外へ出る。一階の窓なので、地面まではそう高くなかった。

「玄関で待ってて」と、励は皆に言った。


 久々の地上である。外は暑かった。今の気温は何度だろうか。

 励はすぐに玄関の方へ歩く。玄関の前まで来て、励はポケットから先ほどの鍵を取り出す。

「なるほど……。この鍵はこういう訳だったか」

 その扉を見て、励は納得する。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。どおりで玄関の内側から出られない訳であった。

 すぐに励はその鍵を南京錠に差し込む。鍵を回すと、その南京錠が外れた。それを取り外し、扉を開ける。

 玄関にいた皆と励は対面した。

「わー、開いた!」

「すごい‼」

 皆が驚いて言う。

「励、お前凄いな‼」と、翔喜が褒めるように言う。

「さすが、小木曽くん! 頭良い」と、羽鳥さんも嬉しそうに言う。

 励はそう褒められて、やや照れ臭かった。だが、正直に嬉しくもあった。

「やっとここから出られるのね!」

 羽鳥さんが笑顔で言う。

「長かったなぁ……」と、翔喜は言って笑う。

「ですねー」と、健斗。

「よかったー」と、萌も嬉しそうに言う。

 うん、と穂乃果も笑顔で頷く。

「それじゃあ、帰るとしますか!」

 羽鳥さんが言った。

「あ、ちょっと待って!」

 その後、励が皆を引き止める。

「貴重品は持って帰らないと!」

 そう言って励はリビングに入り、テレビ横にあった貴重品ボックスの前でかがんだ。

 その箱にも南京錠が掛かっていた。励は持っていた鍵束でその箱の鍵を開けようとする。鍵束には三つの鍵があった。一本は玄関の鍵である。励はもう一つの鍵を選び、それをカギ穴に差し込む。しかし、違うようでもう一本別の鍵を試してみた。

「開いた!」

 南京錠が外れ、励はその箱を開ける。それから、励はその箱を持って皆のところへ駆け寄る。

「お、サンキュー」と、翔喜が言って箱の中の自分のスマホを取る。羽鳥さんや萌ちゃん、健斗と穂乃果もスマホや財布などの自分のものを受け取る。最後に励もその中に入っていたスマホと小銭入れを取り出した。

「皆、もう忘れ物は無いかな?」

 励はその箱をその場に置いて訊いた。

「うん」と、羽鳥さんは頷く。他の皆も頷いた。

「よし! それじゃあ、皆で家に帰ろう!」

 励がそう言い、六人全員がそのペンションから出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ