#8<ヤコブの浅瀬>
攻城兵器の攻城塔なるものも物々しく登場した。
弓矢隊が偽装の為、その最頂部からパラパラと矢を射かけた。
その間に黒人奴隷兵(アブド)が丘陵地に取り付いて、坑道を掘り始めた。
丘の下には天幕が張られ、坑道を掘る準備は秘匿された。
削孔は人力削岩機の要領だ。
エアーハンマーのロッドに当たる部分は「チクサ」と言い、これを石頭で叩く。
次にチクサを捻ってまたセットウで叩く。
打撃と回転の繰り返しで、これは削岩機そのものである。
アブドA「yallah!」
アブドB「iftah ya simsim!」
人力だけではない。
畜力も導入した。
Pit Ponyという炭鉱馬(ポニー)がいる。
炭鉱で働く子供の換わりに畜力として導入された子馬種だ。
劣悪な炭鉱環境での重労働の為、寿命は1~2年しかない。
身長は人間の2/3しかなく、狭い炭鉱での融通性は抜群だった。
出た土砂はその都度、その炭鉱馬が運び出す。
昼夜の別なく、もの凄い勢いで掘り進んだ。
30mも掘り進むと城壁の基礎部にたどり着いた。
慎重に木材を井桁に組み、基礎部の土砂を抜き、すり替えた。
その頃、砦の中ではおかしな噂が立ち始めた。
戦闘時の休息で、兵士は地面に寝転んで休息する。
そうすると地中から響いてくる音がするのだ。
十字軍兵士A「地中から変な音がするんでさ」
十字軍兵士B「何かこうゴソッガサッっていうかさ」
十字軍兵士C「地獄の悪魔の勧誘かな」
最後のがマズかった……。
あきらかに兵士が意気消沈している。
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カラークーシュ「ナフサ(粗製ガソリン)は準備出来たか?」
工兵「はい、たっぷりと」
カラークーシュ「よし、火を付けろ!」
点火!
グオオオオッ
坑内に炎が充満する。
カラークーシュ「ふいごで空気を送れ!」
畜力でふいごを動かし坑内に送風する。
井桁に組んだ木材は、さながらキャンプファイアーの焚き火だ。
あっという間に焼き崩れた。
ズゴゴゴ~ン!
基部ごと沈下した城壁は粉々になった。
沈下した穴から煙と炎が上がった。
シュゴオォォ~ッ!
炎が突然長くなり、吹き上げ始めた。
爆炎は、トンネルを吹き上げ、ロケットストーブ状態となったのだ。
崩壊した城壁の下の坑内は600℃以上の灼熱地獄だ。
崩壊した坑内から城壁の崩壊した穴までがバーントンネルとなり、炎が噴き出す。
坑内から敵が飛び出してくると勘違いした十字軍兵士が巻き込まれた。
十字軍兵士A「火が、ひがが~っ」
十字軍兵士B「熱いあづい、だれがげじでぐれえぇぇ」
十字軍兵士C「」(倒れて燃えている……)
ナフサと木材は30分もすれば下火となった。
十字軍隊長「来るぞ!」
崩れ落ちた城壁のくすぶる部分を乗り越えて、イスラム兵が侵入してきた。
狭い城内では騎馬はもう使えない。
敵味方入り乱れての乱戦である。
かち合おうとしたその時だった。
イスラム兵A「抵抗は無意味だ」
イスラム兵B「降伏せよ」
イスラム兵C「命までは取らん」
急にイスラム兵が降伏を勧告してきた。
善行の戦士?いいや、ちがう。
季節は8月だ。
殺せば、腐敗が早い。
当時は腐敗すれば疫病となり、軍団の兵士はバタバタと倒れた。
サラディンはこの夏の季節に死体が腐敗するのを嫌ったのだ。
守備隊1500人の内、騎士団は700人。
死ぬまで戦うだろう。
だが死ななければ、腐敗はしない。
生きてダマスカスまで連れて行き、そこで放逐すればよい。




