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ボードゥアン4世を救え!  作者: 登録情報がありません
15/20

#15<大航海時代消滅>

冒険の旅に出て1ヶ月が過ぎた。

見えるのは平坦な大海原がどこまでも続いている景色だけだ。


さすがの屈強な船員たちにも不安が広がり始めた。

帰還不能限界点が迫る中、とうとう甲板長が意見具申した。


ルゥルゥ「何?引き返せだと?」

甲板長「もう1ヶ月経ちました、島影さえ見えません」


ルゥルゥは地球が丸い事を確信していたが、船員達はそうではない。

船員には、まだまだ迷信深く、地球が平面だと盲信する輩もいた。


45日後。

とうとう暴動が起きる。

ルゥルゥはあと3日で島影が見えなければ引き返すと約束させられる。


50日目、遠くに漁船を発見。

ルゥルゥ「インドの漁船に違いない」


この漁船に付いていくことにした。

漁船は恐れる様子もなく、ただ漁をして櫂を漕いでいく。


ルゥルゥ「櫂で漕ぐ距離に陸地があるぞ」


51日目。

ルゥルゥは島影を見る。


ルゥルゥ「とうとうインドにたどり着いたぞ!」

早速上陸すると原住民がわらわらと寄ってきた。


ルゥルゥ「通訳を!」

この時の為にインドのダッカからインド人の通訳を連れてきたのだ。

ルゥルゥ「我々が友人だと伝えてくれ」


通訳「コーイー バート ナヒーン」

「アープ・カハーン・セー・ハェン?」


原住民「ヤーマン」

???


通訳「通じません」

???


ルゥルゥ「なにいっ」


通訳「ここはインドではない」


なんとインドに行くつもりがアメリカ大陸を発見してしまったのだ。

ただちに「新大陸発見」の報がアーディルを通じてサラディンの元にもたらされた。


だがサラディンも、これが後世の世界史を塗り替える大発見だとは気付いていない。

なんかデカい島国でも発見したか……ぐらいにしか考えていなかった。


その後ブラジル探検隊がアマゾン流域でパラゴムノキを発見する。

特異な反発力を持つ樹液は、窒化や硫化、塩化の実験にすぐ晒された。


特に硫化によって凝固が確認され、性質が一変した。

また鉱油によって軟化する事がわかり、輸送中自然凝固の解決にもなった。


ゴムは緩衝、絶縁、防水として液相+気相+固相のあらゆる分野で活用された。


次に南米探検隊はアンデス山脈ウスパジャタ峠を越え、インカ帝国に接触した。

インカ帝国は厳格な独裁国家で、外国人の入国は許可が必要だ。


探検隊はあらかじめ行商人ポチテカ(インカ間諜)に渡りを付けておいた。

紹介状と貢ぎ物を持って、インカ帝国との通商条約にこぎ着けた。


南米の農作物は後の西洋料理に偉大な変革をもたらした。

ジャガイモ、トウモロコシ、カボチャ、トマト……。


そしてコカイン、キニーネ(キナの樹皮)だ!

ついに麻酔薬とマラリア特効薬にたどり着いたのだ。


麻酔薬は躯体の手術に決定的な光明をもたらした。


ルゥルゥは通商貿易の拠点として、新大陸に総督府と商館を築いた。

ムスリム商人のモットーは自由と公正である。


搾取せず、流通と消費拡大で、搾取の数百倍儲けるのだ。

その手練手管はアフリカ大陸で実証済みである。


一方、新大陸を発見するはずの欧州はどうなっているのか?


イベリア半島にスペインは建国されなかった。

ベルベル人を追い出す筈のレコンキスタが起きなかった為だ。


地中海東部にオスマン帝国はまだ出来ていない。

イングランドは父子兄弟間、フランス王との骨肉の争いの真っ最中だ。


欧州が新大陸にかまけている余裕は無かった。

新大陸は発見者であるルゥルゥの名をとって新生ルゥルゥ合衆国となった。


これによってまた欧州の未来が1つ消えた。

大航海時代が来ない……。


スペインは建国されなかったがガリシア=アルフォンソ王国がある。

これはポルトガルがある筈の場所にある旧王国だ。


イベリア半島ははシチリア、ヴェネツィアといった地中海貿易から遠い。

地中海の西の果てであり、内海貿易から見放されていた。


これらの西方王国は、新大陸発見で大儲けするはずだった。

奴隷、プランテーション、三角貿易……。


だが既に新大陸はアイユーブ朝エジプトの領土である。

奴隷と植民地を求めて戦えば、大戦争になる。


どこか別の新天地に彼らに隷属する原住民を探すしかない。

そのため新大陸をあきらめ、アフリカ大陸に未踏の地を求めた。


対等の相手として貿易すれば、普通に交易できただろう。

だがそれは我慢がならなかったのだ。


アレクサンドリアのサラディンも間諜からその報告は受けていた。

「西洋人とて愚か者ばかりではなかろうに」


サラディン「ボードゥアン4世の爪の垢を煎じて飲ませてやりたい」

「愚者にして愚なりと知らば、すなわち賢者なり」


自分の高慢ちきな鼻を行く先々でへし折られるしかない。

サラディン「身を以て思い知るしかないのだ」


ガリシア=アルフォンソ国の探検隊は処女地を西アフリカ沿岸に求めた。

だが南下を続けても延々と都市が続き、原住民の集落は現れない。


アフリカ諸国はムスリム商人と貿易して数百年が経過していた。

各諸国はすでにイスラム教国家として独立していたのだ。


奴隷と金を求めて、南下してきた旧王国艦隊はシエラレオネ付近で大敗を喫す。

現地のテムネ人はイスラム圏の武器で武装し、砦から出陣して戦った。

以降、ガーナ、象牙海岸と攻め寄せるが、全て弾き返された。


ガーナにはアカン人による王国が築かれ、2世紀から製鉄が行われていた。

製鉄が行われて既に1000年。

高炉による銑鉄、軽炉による脱硫、平炉による成分調整。

技術は既に充分あり、ムスリム交易の成功でさらに加速していた。


その王国はボノ国と呼ばれていた。

ボノ王国の鉱物資源は鉄、ニッケル、マンガン、石炭、そして石油だ。


すべてがここには揃っていた。

ここを征服すれば、資源の簒奪は思いのままに思えた。


ガリシア=アルフォンソ国の探検隊はボノ国の首都ボノ・マンソに至った。

探検隊「ここならまだ未開の地のようだ」


町は土壁に藁葺き屋根、王城は立派だが、つけいるスキはありそうである。

王城の前の広場に王族らしき一団が出迎えに来ていた。


護衛の騎馬隊はガリシア=アルフォンソ国の探検隊の武装と変わらない。

家司「ようこそ。遠路はるばる」


隊長「我々は外交と商機を求めて、はるばるやって来ました」

家司「大歓迎です、国王がお待ちです、財務政務官にも引き合わせましょう」


副長(チョロいもんだな……)

隊長(所詮は原住民だが、油断するなよ……)


さっそく家司は探検隊を王宮に招いた。

宮殿中庭にズラリと並ぶ儀仗兵たち。


ガリシア=アルフォンソ国人「騎兵だ、馬がいる!」

馬もムスリム商人によって持ち込まれていた。


ラクダしかいない筈が「全身鎧に身を固めた重装騎兵」である。

裸に腰蓑のウホウホいってる原住民のステレオタイプはいない。


隊長「なんかヤバくないか?」

副長「材質も相当のモノです」


その材質は青銅ではなく、鉄でもなく、鋼(炭素鋼S45C)である。

鋼の五元素、熱処理の知識無しにはありえない。


一体どんな圧延装置を使えばこうなるのか?

探検隊の鍛冶部(かぬちべ)も目を回していた。


鋼の精錬技術の高さと資源の豊かさは異常値を示していた。

探検隊の隊員たちは「とんでもない所へ来てしまった」と薄々感じていた。


王宮の中庭の泉のそばに王と宰相が立っていた。

王の鎧は太陽光に反射してキラキラ輝いていた。


ガリシア=アルフォンソ国人「な、なんだ、あの金属は!」

それはステンレス鋼(SUS303)の鎧だった。


ボノ国王「公正な取引なら承ろう」

複式簿記の帳簿をひらひらさせながら、財務政務官がゆっくりと迫っってきた。


「もうかりまっか」


無知な黒人奴隷を騙して捕縛するつもりが、これではあべこべだ。

ガリシア=アルフォンソ国人「ひょんげええっ」

素っ頓狂な声を上げて、イベリア半島に逃げ帰った。

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