珍客再び……?
お、お久しぶりです…。何とか年が変わる前にUPできてほっとしております。(――それでも遅い更新ですが)次話はまだまだ構想段階で、どんな話にするかカケラも決まってません。ので、また更新まで時間がかかるとおもいます……。だいたいの流れはあるのですが、それを詰めていくのが……。
こんな作者ですが、更新だけは時間はかかってもしますのでどうかよろしくお願いします!
謎の依頼を受け、手元に目もくらむ金貨と本来の美しさを取り戻した時計が残ったあの日からいつも通りの代わり映えのしない平穏な日々が続いていた。数日にちらほらと訪れるお客や、近所の人、それから気まぐれに遊びに来る鳥や犬、動物たちの相手をして過ごしていた。
だが、そんな平穏な日々に再び珍しいお客がやってきた。
その日もカウンターでのんびりと時計をいじりながら店番をしていると、カランカラン…っとベルが来客を決して広くない店内に報せ響く。
「いらっしゃいませー!」
元気よく、めいいっぱいの笑顔を浮かべて来客を出迎える。が、来客は思ってもみない人物だった。
店に入ってきてすぐ、好奇心で瞳を輝かせ店内をキョロキョロと見回すのはまだ十歳ほどの男の子だった。しかし、少年少女、それよりも幼い子どもも何人か遊びにくることはあるが今回のお客様は違っていた。その身に纏っている衣服がどう見ても、貴族のソレだった。そしてそんな少年のお付と思われる身なりのいい服を着た青年が後から入って来た。背が高く、服の上からでもわかるしっかりとした体つき。騎士なのだろうか、と想像できる。
と、物珍しい客を観察していると、ふと此方を向いた少年と目が合った。
「いらっしゃいませ」
と、もう一度挨拶をしてみる。
「あなたがここの店主か?」
「はい。若輩者ながら、このチェネッロを切り盛りさせて頂いております」
にっこりと、笑顔を浮かべて小さなお客様を出迎える。
「ここにはどんな時計でも取扱うと小耳にはさんだのだが、本当か?」
年齢には似つかわしくない口調に微笑ましい気分になりながら、自然な笑みで接客する。
「時計であれば、それがどんな形状、仕様の物であっても受け付けております。また、販売・買い取りもさせて頂いております。ただ、私の腕が至らないばかりに依頼をこなせない時もございます」
「そうか」
小さなお客様はしばらくキョロキョロと店内を見回した後、
「ここには、数百年前の時計を置いてあると人伝に聞いたのだが本当か?」
「はい。確かに数百年前に作られたと思われる時計を所蔵しておりますが、申し訳ございませんが何分古く壊れやすい為倉庫の方で保管させて頂いております」
「――見ることは叶わないのか」
みるみる落ち込んでいく小さな貴族様に申し訳なく思うも、こればかりは持ち込まれたお客様との契約により長年我が家で保管し続けている。私も定期的なメンテナンス以外では決して触れることはない。
「現在店頭に出ております時計は全て触れてみるだけでも、購入して頂くことも可能でございます」
少年貴族は私の言葉に店内をしばらくうろつき、いくつか手に取って見ていたがそのうちの一つをカウンターに持ってきた。
「――では、これを」
「はい。ありがとうございます。銅貨六枚になりますがよろしいですか?包装によっては増額いたしますが、どうされますか?」
「いつもはどのようにしているのだ?」
少年貴族の質問に私はカウンターの中に用意している折りたたまれた布の入った木箱を上に出し、現物を見せながら説明する。
「一番簡易な包装でこちらの軽く丈夫な木箱を時計の大きさに合わせて数種類用意しており、木箱に布を敷き詰めその中に時計を収めております。贈り物用などですと木箱と布地を良い物にしております。また、ご希望があればリボンなどでの装飾も承っており
ます」
少年貴族は少しだけ悩んだ後、見本で出した一番簡易で安価な木箱を指差した。
「では、その簡易包装で」
「承りました。それでは少々お待ち下さい」
少年貴族の目の前で手早く、かつ丁寧に時計を布で包みこみ隙間がなくピッタリ収まる木箱に収める。
「おまたせ致しました。こちらになります」
「うむ」
時計の入った木箱と引き換えにちょうど六枚の銅貨を頂く。
「この度はご購入いただきましてありがとうございます。ご購入いただきました時計は無償で修理させていただいておりますが、こちらはお客様から買い取らせて頂きました品になりますので木箱に入っております保証書の提示を受付時にしていただいた場合のみ無償での対応としております。申し訳ございませんが保証書の提示がない場合は既定の料金を頂きますのでご注意下さい」
木箱にはこのお店の紋様の焼き印を押してあり、布には同様の刺繍を隅に一つだけ施している。一から作り上げた時計には同様の刻印を押してあるが、買い取ったものは刻印はなく修理などの対応の際には一緒に収めている保証書を提示してもらえた場合のみ受け付けている。希望者には木箱のみ、布のみの販売も受け付けているが店側からそれを伝えることはしていない。あくまで「希望」してきたお客様に対してのみ対応している。
「確かに受け取った。では失礼する。また機会があれば訪ねさせていただこう」
「ご利用ありがとうございました! またのお越しをお待ちしております」
少年貴族は護衛と共に大事そうに木箱を抱えながら帰っていった。
終始少年貴族と直接話していたが、護衛は何一つ喋らず沈黙を守っていた。が、普通は貴族というのは自分の口からは何もいわず護衛もしくはお付の侍女などを介して会話するという先入観があったので違和感はあったがまあ、そんなものだろうと頭を切り替え先ほどの売り上げを帳簿につける。
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文法上誤用となる3点リーダ、会話分1マス空けについては私独自の見解と作風で使用しております。