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外側にて

 泣き疲れたのかスヤスヤと寝ている妖夢の隣で、朔は座っていた。

 朔は妖夢の刀をしまってやろうといつも持っていた二本の刀を鞘に納め、黒い刀もと思い辺りを見渡しても刀はどこにもなかった。

 代わりにというべきか妖夢の近くをふわふわと半霊が浮いていた。

 そして疲れた朔はこうして座って一休みしている。横になるとそのまま寝てしまいそうなので堪えている。

「ったく、幸せそうな顔しやがって」

 妖夢の寝顔はとても幸せそうだった。朔はそれを見てやれやれと言いながら笑っていた。


「いやー、青春ですかー?」


「っ!」

 突然聞こえた声に反応して朔は刀を引き抜き構え辺りを見渡す。声の主はあっさり見つかった。

 部屋の中央に、元がいた。ただし何故か分からないが意識を集中しないと認識できないくらい薄っすらとした存在感だ。

「おーお、幸せそうな顔してますなー」

 元は朔に近づきながら妖夢の顔を見て言う。

 朔は刀を鞘に納めながら元に尋ねる。

「妖夢は大丈夫なのか?」

「ん?ああ起きた時には全部覚えてるだろうから心配すんな。・・・しかしあそこまでいった心を戻せるとは流石というべきか」

 途中から独り言に近い呟きを出しながら元は朔に刀を渡してくる。柄と鞘が翠色の刀だ。

「・・・またか」

「これで最後だ。『蛇王大蛇丸』、それがこの刀の名前だ」

 ほれ、と渡してきた刀を腰に下げながら聞く。

「二本も渡されてどうしろってんだ」

「ああ違う違う。お前の持っている刀がもうすぐ消えるからこれを渡したんだ」

「は?」

「ほれさーんにーいーちポンッ」

 ふっと黒い刀が消え、代わりに白い玉が現れた。人魂に似たそれは朔の周りをふわふわ漂っている。

「・・・なんだこれ?」

「なにって、半霊だろ?そこの半人半霊の周りを飛んでるのと同じ」

「・・・誰の?」

「お前の・・・もしかしなくても記憶が完全に戻ったわけじゃなかったのか」

「え? どういうこと?」

 ふーと溜息を吐きながら元は説明してくれる。

「・・・お前を改造した奴が問題点としてあげていたことは覚えているか?」

 言われた朔は記憶、というよりは頭の情報を整理して探し出す。

「えーと、地上の人間は穢れていたから、穢れを嫌う他の月人から隠す方法、だったよな?」

「そうだ。月の奴らは穢れを嫌うからな。何とかして隠すか穢れを取り除けないかと探してたんだ。そんな時、そこの半人半霊と亡霊が月にやってきた」

 ちらりと妖夢を見る。半人半霊は妖夢で、亡霊は西行寺幽々子だろうか、と予想する。

「あいつは偶々、偶然半人半霊を観測して、とてもとても喜んだ。何せ探し求めていた物があったんだからな。地上から来て、生きていながら穢れを持たない人間を」

 そして、そのデータを取り、実験として朔を使った、ということだろう。

「喜んだあいつは早速お前を半人半霊に改造した。結果は成功。あいつは八意にも出来なかった穢れを取り除くことに成功したわけだ」

「その完成した物をなんで地上に捨てたんだ?」

 完成した物ならわざわざ地上に落とす必要はないだろう。何かの目的があって来たなら紫に拾われた理由がわからない。

 そこらへんを聞こうとした朔に、元はあっさりと答える。

「そりゃお前を俺が連れてきたからだ」

「は?」

「いやーなかなかに大変だったんだぞ? 依姫は八百万を抑えればいいだけだが月の兵器はやばかった。周りに被害を出さないように制圧するのはかなり疲れた」

 なんだかさらりと凄いこと言ってる気がした。朔の情報には依姫も月の兵器の情報もあるが、どちらもそんな気軽に疲れただの大変だっただの言えるような実力ではない、はずだ。

「え? お前もしかして強い?」

「最初に自己紹介した時に神とタイマンでやりあえると言った気がするんだが?」

 ・・・最近の幻想郷での神のイメージはかなり迷惑をかける存在程度にしか認識されていないから朔が良くわからないもの仕方のない気もするのだが。

 そんなことをしていると、妖夢がうっすらと目を開けていた。

「ほらそこの剣士が起きたぞ」

「ん?あぁおはよう妖夢」

「・・・えーと・・・あっ!」

 妖夢は勢い良く立ち上がり、深々と頭を下げてくる。

「すいませんでした!!」

「・・・は?」

「お前『は?』しか言ってなくね?」

 元の茶々を無視して慌てて妖夢の頭を上げさせる。

「いきなりどうした!? ほら頭を上げろ!」

「そういうわけには行きません! 私は貴方を殺すつもりで戦ってたんですから!」

「・・・あー」

 さっき元が言った言葉を思い出す。

『起きた時には全部覚えてるだろうから心配すんな』

 全部、つまりさっきの戦いの記憶もということだ。

「死なせませんと言っておいて自分から死なせに行くなんて私はとんでもないことをしました。もう貴方になんて言えばいいかわかりません」

「いや、別に気にしてないんだが。明らかにまともな状態じゃないのはわかってたし」

「そのような状態になってしまったのも全て私が弱かったからです! ・・・許してほしいとは言いません。ですが貴方が望むのであれば私はなんでもします。どうか私に罰をください」

「・・・」

 ちらりと元の方を見る。元は顔で諦めろと言っていた。

「・・・じゃ、罰を与えるから頭を上げて目を閉じろ」

「ありがとうございます」

 妖夢が目を閉じているのを確認して腰に下げた刀を鞘ごと引き抜き、くるりと回転させて頭を叩いた。ちなみに速度を五倍に加速させてある。

「っっ〜〜!」

「もういいだろこれで、面倒だし」

「っし、しかし」

「しかしも何もなーい。そもそも怪我したわけでもないから気にするこたねぇだろ」

「い、いえ! それでは私の・・・」

そうやって暫く言い合ってた時だった

 ゴッ!! と突然塔が揺れた。

「っとと、なんだ?」

「爆発? どこで・・・?」

「・・・まずい」

 元の方を見るといつの間にか途轍もない存在感を放っていた。その場にいるだけで圧倒されそうになる。

「まずい、予想より早い!」

「お、おい?」

「脱出する!お前ら目を閉じろ!」

 有無を言わさず元は朔と妖夢の腕を掴み、床を勢い良く踏みつける。

 ダンッ! という音を合図に、全てが黒く染まる。

「な、なんなんですか!?」

「おいお前ら二人は巫女共を回収しろ!」

「何が起きてるんだよ!?」

「説明する暇はねぇ! 出るぞ!」

 黒が裂け、色彩溢れた世界に出る。

 出た所は塔の外だった。元は朔と妖夢を置いて何処かへ飛んでいく。

「おい! 何か説明を・・・っ!」

 気配を感じて刀を引き抜く。動かした視線の先には、炎の塊。

「だらっ!」

 炎の塊を横一線に斬りつける。

 炎の塊は半分に割れるが、直ぐに形を取り戻す。

「朔さん! 塔に霊夢さん達が!」

「はぁ!?」

 塔を向くと、そこには黒い手に掴まれ身動きのとれていない三人の少女がいた。

 全員着ている服は焦げ、顔や手が火傷だらけになっている。

「霊夢さん、魔理沙さん、咲夜さんしっかりしてください!」

 近づこうとした妖夢に大量の黒い手が襲いかかる。

「はぁぁぁっ!!」

 妖夢は二本の刀を使い黒い手を切り刻みながら三人の元へ向かっていく。その妖夢に向かって炎の塊が突っ込んでいく。

「させるか!」

 その間に割り込んで炎の塊を叩き斬る。炎は動きが少し止まったが直ぐにくっついて動き出した。

 だがその隙に妖夢は既に三人を助け出していた。

「朔さん!」

「よっしゃ逃げよう今すぐ逃げよう!」

 妖夢と妖夢の半霊が霊夢と咲夜を抱えて、朔は魔理沙を抱えて自身の半霊に箒を引っ掛けておく。

「走れー! 飛んでるけど!」

「朔さん! 後ろから凄い勢いで炎が飛んできてますが!?」

「無視だ無視! どうせ両手も半霊も使えん!」

「って朔さん!? その漂ってるのは・・・!?」

「説明は後だ! いいからさっさと八意の所に・・・」

「行かせるとでも?」

 ドンッ! と朔達の目の前に爆炎が生じ、進路を防がれる。

「貴様らを通すわけにはいかん!」

 声がどこからともなく聞こえてくる。

「どこだ!」

「私はここにいるであろう」

 声にする方を向いてもそこにあるのは炎の塊だけだ。

 すると突然炎の塊が姿を変えていく。

 ズスズッと音を立てながら塊は変化していき、変化が終わった時には、塊は鳥になっていた。

「我が主の命により、貴様らを逃がすわけにはいかん」

「喋った! 炎が喋った!!」

「いや朔さんそれどころじゃないですよね!?」

 炎の鳥が大きく羽ばたき、火の粉が舞う。そしてその火の粉は朔達に向かって高速で迫る。

「止まってろ!」

 魔理沙を右腕で抱えて左手を突き出して叫ぶ。

 火の粉はゆっくりとした動きになり、簡単に避けれた。

「朔さん、霊夢さんと咲夜さんを持っててください!」

「え、いやいや待て待て無茶言うな!」

 妖夢は朔の返事を待つことなく霊夢と咲夜を放り投げる。左腕で霊夢を受け止め、背中で咲夜を受け止める。

「お、重い〜」

 重量に耐えられずに朔はゆっくりと地面に落ちていく。

 落ちていく朔が見た物は、妖夢が炎の鳥に突っ込んでいく所だった。

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