次の日
落ちていく中、朔は見ていた。
一人の少女が炎の塊に突っ込んでいくのを。
少女が炎に焼かれていく姿を。
「妖夢!?」
「いっ⁉︎」
「おうっ!?」
起き上がると何かに頭をぶつけた。
頭に痛みを感じながら前を見ると鈴仙が頭を抱えていた。
「何してんだお前は」
「こっちの台詞よ! 思いっきり頭突きしてきて!」
「おおすまんすまん・・・って違う!」
そこでそれどころじゃないと思い出す。
「おい他の奴らは!?」
「ほ、他? あの『三人』ならもう帰ったけど・・・」
「三人? 待て、もう一人いるはずだろうが」
「え? あぁ貴方を入れて『四人』ね」
「違う! 妖夢はどこだ!?」
「へ? は?」
話が通じないと思った朔は立ち上がり妖夢を探そうとする。
が、部屋から出て一歩歩いただけで床に倒れた。
「ちょちょっ!? 無茶しちゃ駄目よ!」
その言葉を無視して這うようにして移動しようとする。しかし身体がまるで動かない。
「くそ!」
「動けるわけないでしょ。もうちょっと休んでから動きなさ・・・ん?」
廊下の奥に白い塊が幾つも見えた。兎だ。
「いたいたー。れいせーん、師匠が呼んでるよー」
「師匠が?また買い出しかしら」
「なんかねー、前にも来た怖い剣士が運ばれて来たのー」
「・・・妖夢? 妖夢が運ばれたのか!?」
「あ、この前の一人だー」
「だれー?」
「この前罠に捕まったのを助けてくれたー」
「あの人かー。連れて行こうか?」
「連れていこー」
兎達が朔を囲いもそもそと潜り、朔を持ち上げた。
「え?なになに?」
「出発進行だー」
「全速ぜんしーん」
動けない朔を兎達がえっさほいさと運び出す。しかもかなり速い。
「ちょっと貴方たち私を置いていくな!」
鈴仙も慌てて追いかけていく。
その場に誰もいなくなった後、白い塊がふわふわと追いかけていくのを誰も気づかなかった。
「妖夢!」
朔が運ばれた先で見たのは、火傷をしていない所を探す方が難しいくらい火傷をした妖夢だった。側にいる半霊もぐったりしている。
その近くに永琳もいて、珍しい物を見たというような顔をしている。
「あら、何で貴方兎に担がれてるのかしら?」
「いやそれはどうでもいいから妖夢は!? 助かるのか!?」
「何言ってるの。貴方も私の事は知ってるんでしょ? 死んでさえなければ治してあげるわよ」
「・・・はー」
安心した顔でぐったりとなる朔。それを見た永琳は微笑みながら言う。
「この子がそんなに大事?」
「誰であろうと知り合いが重傷になったら心配するだろうが。関係あると特に」
「ふふっ、そう。・・・ところで貴方の近くを飛んでるそれは何?」
そう言って永琳が指差したのはふわふわと飛んでいる朔の半霊。
「半霊、らしい。これも月でやられた」
「・・・そう、あの子はそんなことまでしてたのね」
「あの子、ねぇ。弟子か何かだったのか?」
「・・・似たようなものよ」
永琳はそれ以上は言いたくないと言わんばかりに口を閉ざしてしまう。
「・・・そういえば俺はなんで倒れてたの?」
「過労と栄養失調、しばらくは動かない方がいいわ。どうせ動けないでしょうけど」
「へいへーい。いい感じにこの兎がベッドになってくれてるしこのまま寝させてもらおう」
「布団で寝なさい」
「よっこいしょっと」
布団から出て少し身体を動かしてみると、身体は問題なく動いてくれた。
「何時間寝たのかねーっと」
何せここは窓も何もなく長い廊下も困らない程度の明かりしかない。昼夜を確かめる術がないのだ。
もらった刀を腰に下げて廊下を歩く。この廊下だけでちょっとした散歩コースになりそうだ。
「あら? ここに人、しかも男性が来るなんて珍しいわね」
突然後ろから声が聞こえ後ろを向く。
そこには腰よりも長いストレートの黒髪を持った女性がいた。
見惚れてしまいそうなくらい綺麗なのだが、頭や肩に乗っている兎で色々台無しになっている。
「こ、こんにちわ。いやこんばんは?」
「こんばんは。私は蓬莱山輝夜というの。貴方の名前は?」
「津後森朔です輝夜さん」
朔が自己紹介すると輝夜は少し首を傾げる。
「晦朔? ・・まあいいわ。それで永遠亭に何の用が?どこぞの巫女とかみたいに暴れたりしないわよね?」
「しません。その人が特殊なだけです」
「あら、他にも魔法使いや吸血鬼にメイド、幽霊まで暴れたわよ?」
「・・・あれ? むしろ暴れない方が特殊なのか?」
朔まで首を傾げていると輝夜に乗っている兎が喋り出す。
「姫様、ボスの所に行くのではなかったのですか?」
「そうだったてゐに呼ばれたのよねー。じゃあね朔」
「さよならです輝夜さん」
輝夜と兎が去って行くのを見送る。よく見ると身体の所々が膨れてるから服の中にもいるのかもしれない。
輝夜が消えた後、朔は一人ポツリと言った。
「・・・綺麗な人は外の世界で幻想なのかなぁ? これだけ綺麗な人ばかりということは」




