邂逅
竹林の中を一人で歩く少年がいた。
少年は周りを見ながら歩き続ける。周りの景色には竹しか入ってこない。
やがてその足を止め、空を見上げる。
空には満月のように輝く欠けた月があった。
少年、津後森朔は大きく息を吸い、叫ぶ。
「・・・たぁぁぁぁすけてくださぁぁぁぁぁい!!」
叫びが誰かの耳に届くことは、ない。
少し前、朔は起きた。
部屋の窓を開けると真夜中。こんな時間に起きた理由はとても単純。
昼に寝ずぎて眠れないのだ。
暇なのとちょっとした理由で散歩でもしようとそのまま窓から外に出たのが間違いだった。
ここは『迷いの竹林』。妖精でさえ迷うこの場所は、人間が簡単に出れる場所ではない。
そして現在進行形で迷子である。
ここにはかなりの数の妖怪がいるはずなのだが、幸いなことに妖怪にはまだ出会ってはいない。
ただしそんなものは時間の問題だ。もし出会ってしまえば死は確定する。
なのでさっさと抜け出そうと歩いているわけだが・・・。
「うわー、最近は不幸すぎる・・」
どこまで歩いていても景色が変わらない。道を戻ってみても道が竹で塞がれているのだ。
殺せ。
抜け出すちょっとした理由とは、この頭に響く声だ。
「・・・殺せ、ね」
殺せと言う声と共に情報が流れ込んでくる。紙を見せられるわけでも頭に声が響くわけでもなく、まるで知っていたかのような状態になり、気持ちが悪い。
「こんなところにいた」
突然後ろから声が聞こえ、身構えつつ振り向く。
そこにいたのはうさ耳を付けた少女。永琳から優曇華と呼ばれていた。
「あ、えーと、優曇華?」
「貴方に優曇華言われる筋合いはない。呼ぶなら鈴仙って呼びなさい」
「は、はぁ」
鈴仙は朔の腕を掴み、引っ張る。
「ったく、怪我人が抜け出すんじゃないわよ」
「すまんすまん」
朔は特に抵抗することもせずに鈴仙について行く。
途端に、足が固まった。
「っと、どうかしたの?」
鈴仙が突然止まった朔の顔を覗き込むようにして話しかける。だが朔にとってそれどころじゃなかった。
殺気、それも尋常じゃないレベルの。
まるで数十人分の殺意を圧縮したような、そんな風に朔は思った。
「見つけましたわ」
朔の視線の先に、一人の少女が立っていた。
黒いドレスを切り刻んだような服を着て、その手には奇怪な物を握っている。
鉄だ。L字に曲がった奇妙な鉄は、外の世界でリボルバーと呼ばれている銃だった。
少女の顔は見えない。長い髪の毛は顔の口元以外を隠してしまっている。
「・・・だ、れ」
少女に気付いた鈴仙が、怯えた声を発する。
殺気を向けられているのは朔だ。なのに鈴仙の身体は恐怖に縛られていた。
「・・・ようやく、見つけましたわ」
少女は嬉しそうな声を発する。待ち焦がれた恋人に出会った時のような声を。
少女が銃を朔に向け、引き金に指をかける。
「ジャァァァクザリッパァァァァァァァァァァァッッッッッッッ!!!!」
聞きなれない音が、朔の鼓膜を叩いた。




