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殺意

 目が覚めると目の前にうさ耳があった。なにやら作業をしている。

「あ、起こしちゃったかしら?」

 学生服を身につけた少女は頭の耳を揺らしながら話しかけてくる。ただし目は向けていない。

「えー、と。どこだここ?」

「永遠亭。ホントは入院はさせないんだけど怪我が怪我だったから」

「・・・そんなに酷い?」

「師匠がいなかったら今ごろ冥界かも」

 真顔でそんなことを言われた。朔は力なく笑う。

 朔が頑張って頭を上げると少女は足の包帯を交換していた。足の感触がないのはきっと気にしてはいけない。

 突然襖ふすまが開き、左右で赤と青に色が分かれた奇妙な服を着た銀髪の女性が現れる。

「優曇華、てゐを知らない? ってあら、起きてたのね」

 殺せ。

「ど、どうも」

「おはよう。気分はどう?」

 賢者を殺せ。

「平気です。ただ・・・」

「ただ?」

 八意を殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。

 肉体を殺し、

 魂を取り出せ。

「・・・少し質問いいですか?」

「なにかしら」

 真面目な顔で質問する朔に対して、女性は笑みを浮かべながら対応する。

「貴方は八意さんで間違いありませんか?」

「ええそうよ。私は八意永琳。そっちのうさ耳の変人は私の弟子」

「ちょっ師匠!? 変人ってなんでですか!?」

「あら?うさ耳を付けた年中ミニスカ少女が変人じゃないとでも?」

「いや服これしかないですし・・・」

 八意永琳は自分の弟子を弄り始め、朔はそれを絵か何かのように見ている。

 さあ殺せ。さあ殺すんだ。

 朔の頭に直接、命令のようなものと殺意が流れ込んでくる。それらを全て精神力で叩き伏せる。

「もう一つ質問です」

「なに?優曇華のスリーサイズなら答えれるわよ」

「なんで知ってるんですか!?」

「・・・なんでこんな事をしたんですか?」

 朔の一言で、軽口だった永琳の口が閉じた。

 うさ耳の少女は何か言おうとしたが永琳が視線で止める。

「こんな事って、どんなこと?」

「何かわからないくらい同じような事をやってきたのですか?」

 沈黙。一人少女が状況を理解してなく、視線をあっちにこっちに動かしている。

「『あれ』は私の作った理論が組み込まれてるけど、私が『あの子』や『貴方』を作ったわけじゃないわよ」

「こちらからすれば同じことですよ」

 永琳の言葉に対して朔は冷たく言い放つ。 永琳は少し悲しそうな顔を見せる。

「そうね、貴方たちからすれば同じ月人だものね」

 その呟きに対して朔は冷たい表情のままだ。

(あの子って誰よ! 作ったって何!? 俺人間なのか怪しくなってきた!!)

 ただし内心かなり動揺しているが。

 朔は永琳を見ていると異常と言えるほどの殺意が湧く、というより流れ込んでくるのを感じていた。

 そこまで殺意を抱かれるって何をしたんだと興味本位で鎌をかけてみた結果、これである、

「私が謝ってもしょうがないのだけど、言わせてちょうだい。ごめんなさい」

 深々と頭を下げてくる永琳。そろそろ罪悪感が出てきた。

「いや、もういいよ。自分について知れたし」

「・・・あ、あー私やられちゃったのね」

 朔の言葉の意味を永琳はすぐに理解した。

「あの、師匠? 結局何がなんやら・・・」

 うさ耳少女はまだ良くわかっていないようだ。

 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。

「っ!」

 頭痛と耳鳴りがして、その場に倒れこむ。

 永琳が何かを言っているが、それよりも大きな声が頭の中に直接叩き込まれる。

 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ。

「・・・黒楼剣」

 朔が呟くと、その手にはいつの間にか一振りの刀があった。

 ゆっくりと、壊れかけの人形のように身体を震わせながら動く。

「優曇華!」

「はい師匠!」

 永琳が少女に呼びかけ、少女はその真っ赤な瞳で朔を見つめる。

 朔の視界が、赤く染まった。

こ、ろせ、こ・・・

 声が遠のいていき、そのまま意識を失った。

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