那智&恭平2
お気に入り登録7000件突破記念その3。
ネタ提供:月宮 恋さん
設定:
①那智と兄が付き合っている。
②兄がヤンデレ。
[彼女は兄のヤンデレに気が付かない]
紆余曲折を経て、とうとう手に入れたというのに、那智は相変わらず僕だけを見てくれるということをしてくれない。
「今日、僕の知らない男と話してたでしょ」
「いやいやいや。お兄ちゃん、あれはただ宿題のプリントを渡していただけだし」
家に帰ってすぐに部屋に閉じ込めた。
この部屋に入っていいのは那智だけだ。これまで誰も踏み入れさせなかった領域に入っているということを、いまいち那智は分かっていないようだ。
分かっていないなら、分からせるまで。
「うひゃあっ」
まぶたを舐めとると変な悲鳴をあげられた。でも可愛いから気にしない。
この目が誰のことも見なくなればいいのに。
「ちょ、お兄ちゃん」
この唇が誰の名前もあげられなくなればいいのに。
ついばんだ唇の柔らかさに思わず床に押し倒す。那智の体に痛みが伴わないようにゆっくりと。
何をされるのか理解できていないのか、那智が不思議そうに首をかしげる。
「お兄ちゃん……」
そろそろこの言い方も直させないと。
何て呼ばせようか。那智は恥ずかしがってなかなか言えないだろうから、ちゃんと言えるまで間違えたら罰を与えるのもいいかもしれない。
「誰のことも見ないとか、誰の名前も呼ばないとかって無理だからね」
おバカだけど頭が悪いわけじゃないんだよな、那智は。世界中に僕ら二人だけで生きていける場所なんてないということをちゃんと分かっている。
「そんなの分かってるよ。でも嫌なんだ」
普段にない愚痴を言うと那智はそれはもう嬉しそうに笑った。その顔が可愛くてまた口付けを落とす。
那智が両頬に手を当てて僕を見つめる。
「今、目の前に見えるのは?」
「那智だけ」
「今、耳に聞こえるのは?」
「那智の声だけ」
答えると、えへへと笑って首に抱きついてきた。那智独特のふんわりとした甘い匂いが脳を痺れさせた。
今だけはお兄ちゃんは私だけのもの。そう耳元でささやいてくることに、ささくれ立った気持ちが凪いでいく。
那智は僕の扱いが分かっている。
那智は意識してやってなんかいないだろうけど。出会ってからこれまで、那智が那智であるというただそれだけのことに、僕がどれだけ救われてきたことか。――知らないだろう? 那智がいなくなったら、僕は息をすることすら忘れてしまえるって。
ひとしきり理性が許す限り那智の体のあちこちを触り倒してから開放する。
頬を上気させて恨めしそうにこちらを見上げてくるので、また襲い掛かりたい気持ちになった。でも止めておく。
あまり急いで先に進めすぎて逃げられてしまったら困る。
もうしないよ、という意思表示で両手をあげたらやっと許してもらえた。
「今度、指輪を買いに行こうか」
まだ少し警戒して体を離して座る那智の左手を取って薬指に触れる。
「えー、兄妹でお揃いの指輪とか、みんなにからかわれそうで嫌なんだけど」
身近な人たちにはもろバレなのに、まだそんなことを言うか。
「じゃあ、毎日首にキスマークでも付けたら誰も近寄ってこなくなるよね。那智はそっちのほうがいいの?」
笑って言えば、ぶんぶんと首を横に振って嫌がられた。僕としてはそっちでも構わないのに。全力で否定する姿に少しへこんだ。
でも、後日――指輪を買って家に戻ったとき、那智はノリノリで白いレースの布を頭に被って結婚式ごっこを始め出した。本当は欲しかったんじゃないか。素直じゃないんだから。
白い無垢な姿が自分は僕だけのものだと宣誓する。
本当の意味で僕だけのものになったら、きっとこの胸の内の狂気もなりを潜めてしまうだろう。きっとそこにあるのは、胸を締め付けるほどの幸せしかないはずだ。
那智には早く高校を卒業してもらいたい。そうしたら、あらゆる手を使って結婚まで持ち込むのに……。
確実に手に届く位置にあるのならば、何を差し置いても手に入れてみせる。手に入れたと安心できるまで、那智には少し苦しいかもしれないけれど僕に縛られていて欲しいと願う。
「ほら、お兄ちゃんも宣誓して」
腕の中の那智がせがむ。あぁ、本当に好きだ。今、この瞬間だけは那智は僕のもので、僕は那智のものなのだ。
「誓うよ」
幸せそうに微笑む姿に、普段なら首をもたげる狂気も眠りについていた。
可愛らしい花嫁に目を閉じて口付けを落とす。那智の頬に朱が混じる。
うーん、どうしよう……やっぱり襲ってもいいだろうか。押さえが利きづらい。理性にかけた錠前は、とうの昔にボロボロになってしまっているようだ。
那智がさりげに兄のヤンデレフラグを折るので、あんまりヤンデレっぽくならなかった……。ポンコツ兄貴と言ったほうがいいかもしれない。




