終り
その後、特に何もなく学校から解放され、健雷とともに帰った。彼の家は、私とは逆方向だったにもかかわらず、彼は私と同じ方向に動いていた。
帰り道、二人でこの世界の魔法について話した。もちろん、「なんだあのつまらない魔法は…」という文句ばかりであったが。そのまま彼は私の家までついてきたうえで、堂々と家に上がろうとした。私も断るわけにはいかず、それを許諾した。この時間、当然母親が家にいたので私は彼をリビングへ上げる訳に行かず、自身の部屋に押し込んだ。
彼は部屋に入るや否や私の教科書棚を漁り、無かった筈の『高校の魔法』という教科書を引っ張り出し、すぐさま目次を開く。そして彼はわざとらしくこちらを煽るような声で読み上げ始めた。
「第一章、小魔法で髪型を変えてみよう。第二章、中魔法で髪色を変えてみよう。第三章、大魔法で髪質も自由自在。発展、最上位魔法ってな~に。」
それを聞いて私はポカンとしながら言った。
「つまらな。」
「だよな!!」
彼は同調するように言った。その言葉以降はずっと文句大会であった。私も呼応して空を飛ばせろだのなんだのと、言えるだけの文句をそのタイミングで言っておいた。思い返せばこんな文句大会はとても懐かしいものだった。
分かってはいたが、やはりこの時間が進むにつれて、嘘吐きへの怒りは増大していく。それほどまでに許せないのだ、望みを聞いておいてそれに応えなかったが、あれほど期待させたくせにこれほどまでにがっかりな結果になったことが。
一通り言い合った後、私達は黄昏れたようにお互いを見つめた。それが少し決まずくて、私は目を下にそらして言った。
「これからどうする感じ?このままこの世界を過ごすのか?」
彼は少し悩んでから、小さな声でつぶやいた。
「この世界を過ごす以外に選択肢はあるのか?」
私はそれに返す。
「さぁな。一度失ったこの命。正直、今また失っても俺は問題ないな。寧ろ変なことして消えてやろうとも思っている。健、お前もどうだ?一緒にやりたい放題して投げ捨てようじゃないか。」
彼は吹っ切れて答えた。
「ああ、そうしよう。楽しもうな!」
丁度ストレスのボルテージが最高値まで達していたからだろう。恐らく今彼は正常な思考回路を持ち合わせていない。だが、そんなことはどうでも良い。私は翌日、浅く渋い欲望の下、クラスの女子3人に告白してすべてアウト判定をいただいた。一方で彼は馬鹿のようにジャンクフードを注文し、一気に食した。
後は死ぬだけだ。
「望みを叶えてあげたんだから、一週間くらいは生きてくれると思っていたんだけど。」




