第95話 最下層の地下
「な!お前らなんで!?」
重厚そうな扉を蹴破ると、そこに居た黒服が驚いている隙にスキルを発動させる。
それと同時にに漆原さんが黒服達を一瞬で片付けてくれる。
「ありがとう漆原さん」
「これくらいなら任せて、それより躊躇なくスキル使ってるけど大丈夫なの?」
「この状況で出し惜しみは無しだろ」
命をかけてくれている人達がいるのに、自分可愛さでスキルを隠すのは流石に違うだろう。
それに多分レベル1のまま放置したヤツらがいたから、この組織には俺のスキルは割れているだろう。
エレベーターの前の敵も即座に倒し、エレベーターを呼ぶ。
中に入ると俺は迷わず地下一階のボタンを押した。
「この建物に地下があるなんて、知ってたの?」
「いや、知ってた訳じゃなくて、エレベーター内って何となく視線の位置に困って、ボタン見がちなんだよね。だから最初に乗った時に地下があるの見てたんだよね」
「なるほど、何となくわかるかも、私は源志くんを見てたから気づかなかったな」
……ん?
今俺の事を見てたって言ったか?
なんでだろう。
なんかあったっけと思い出していると、エレベーターが到着した音がして扉が開く。
「急ごう源志くん」
「ああ」
エレベーターを降りた先は和を感じさせる作りになっており、さっきまでの品が無い豪華さとは違うベクトルの豪華な作りになっている。
この建物に入る前の雰囲気からすると、この階が元々ダンジョンに会った部屋なのだろう。
周囲を警戒するが、どうやらこの階に敵はいないようだ。
「なんだろうここ、何となく神聖な場所って感じはするけど」
「実際神聖な場所なんだと思う、この目で見るのは初めてだけど」
「ここはどういう場所なの?」
さて、なんと説明すれば角が立たないだろうか。
「神様が祀られている、いや、いた場所?うーん、違うな、そういう場所がモチーフになっている階層?が正しいかな」
俺の説明に漆原さんが首を傾げる。
「ランカーになったことでアクセスできるようになった古い文献を調べていると、そういう場所が50年前までは存在していた、と考えるのが妥当なんだよね」
「神様が祀られていた場所がってこと?でも神様って物語に出てくる空想上の存在でしょ?」
そう、神も龍も鬼も物語に出てくる空想上の存在で、ダンジョン内には何故かそういう空想上の存在がモンスターとして現れる。
それが俺たちにとっての一般常識。
だが調べれば調べるほど、何かがおかしい事に気づいた。
「そうなんだけど、ダンジョン出現と同時に、その認識に変わってるとしか思えない。まぁその辺はおいおい話すとして、ここからは剣を抜くのはできる限り避けた方がいい。下手すると死ぬ」
「そういうダンジョンギミックってこと?」
「一旦はそう捉えておいてくれ」
神聖な場所での抜刀は基本的にNGだ。
ここに来るまでの間は良かったのかという話もあるが、許されると信じよう。
辺りを見渡し、より天井の高い方へと進んでいく。
「迷いなく進んでるけど、来たことない場所だよね?」
「ああ、だけど基本的にはこういう場所はより天井の高い場所に祀られているらしいから」
「祀られているってまさか、ここに来た理由ってさっきの荒神の本体に会いに行くつもりってこと!?」
漆原さんが驚きのあまり立ち止まる。
「それに近い何か、かな。文献を読み漁ったけど、正確にそれが何なのか掴めないんだよね。自分の認知の埒外に存在する、雲を掴むような話っていうのかな」
説明が難しい。
漆原さんも俺の言いたいことが分からないようで首を傾げている。
自分でも分からない概念を相手に伝えるのは無理というものだ。
うまく説明出来ないけど、俺がこの結論に達した文献をいくつか読んでもらえれば、漆原さんも同じ結論になるだろう。
「とりあえずここには剣が祀られているはず、だと思う」
「剣、私にそれを使って荒神と戦えってこと?伝説の勇者の剣で私しか抜けないみたいな」
漆原さんから伝説の勇者の剣なんてワードが飛び出すとは意外だな。
「いや、多分使えないんじゃないかな。伝説通りなら見たら死ぬらしいし」
「え!?呪いの剣ってこと?」
「いや、神聖すぎて」
「神聖過ぎると見たら死ぬの!?」
「伝説の剣であるのは間違いないんだけど」
「それってもしかして、草薙剣がここにあるかもってこと!?それが本当なら国が動くレベルじゃない!」
漆原さんの言うように、ドイツやイギリスの伝説の武器持ちは、国の英雄と呼ばれて飼われている。
だが多分、こういった武器は自分で入手することは不可能だろう。
人が取るのではなく武器が人を選ぶみたいな話も聞くし。
いや、もしここのボスがヤマタノオロチだったのであれば、自力の入手もできたかもしれないか。
その場合、上にあった酒を大量に拝借する必要が出てくるが、俺の予想ではそれはない。
「源志くん、そっちは天井が低いけど、そっちでいいの?」
途中で進む道を変えると、漆原さんがまたも首を傾げる。
「ああ、流石にこの格好のまま行く訳にも行かないからな」
熱田ダンジョンに関わる古い文献の事を思い出しながらたどり着いた部屋には、お目当てのものがやはり存在していた。
「それじゃあ俺は向こうで着替えてくるから、漆原さんも着替え終わったら教えてね」
「えっと」
「あ、ごめん、漆原さんなら一人で着れると思ったんだけど」
「それは大丈夫だけど、というかこれ着る必要があるから私だったってことか。確かに服部さんか私なら私になるのか」
お嬢様なだけあって一人で着れるようで安心した。
漆原さんに来てもらって正解だったな。
「それじゃまた後で」
「……コスプレじゃないのはわかってるけど、ちょっとやっぱり恥ずかしいな」
部屋を出ようとしたところで後ろからそんな声が聞こえた気がしたが、聞かなかったことにして襖を閉じた。
読んでいただきありがとうございます!
もうお分かりでしょう。
漆原さんが似合わないはずないよね!
え?仲間が戦闘中だぞって?
必要だから仕方ないですね。




