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第96話 最奥の部屋

源志(げんし)くん、着替え終わったよ」


 声と同時にゆっくりと襖が空く、部屋から出てきたのは、紛うことなき巫女服黒髪美人だった。


 いや、しかしこれは。


 元々漆原(うるしはら)さんのことは綺麗な人だと思っていたが、ここまで和装が似合うとは。


「源志くん?」


 おっと、見とれてたせいで首を傾げられてしまった。


「いや、似合ってるなと思って」


「本当に?なら良かった、源志くんもやっぱり男の子なんだね」


 俺が目をそさすと、漆原さんは少し前かがみになりながら、こちらの顔を上目遣いで覗き込んでくる。


 っ!!


 この破壊力よ!


「さ、行こうか」


「源志くんも袴姿似合ってるよ?」


「……ありがと」


「あ、照れてるでしょ」


 くそ、漆原さんには敵わないな。

 ダンジョン内なのに気が抜けそうだ。

 いくら敵が居なさそうだからって、気を引き締めないと。


「でも実際この後どうするつもりなの?」


 長い廊下を歩いていると、そんな質問が飛んでくる。

 まぁ、普通に気になるよな。


「とりあえず祈ってみる」


「え?」


 そういう反応になるよな。


「昔の人たちは神様に祈る事で、願いを叶えて貰らっていたらしい」


「それもダンジョンギミック?」


「いや、昔はダンジョンって無かったから」


「あ、そっか」


 まぁ、今回はそれを利用して上で戦ってる敵を弱体化させようとしてるのだから、ダンジョンギミックってのもあながち間違いではないか。


「ハデスが行ったのは、祈りによるパワーアップ何じゃないかと思ってる。神様を身に宿す、神降ろしとか神懸かりと呼ばれる類いの技だ」


「つまりこっちも神様にお願いして強くしてもらうってこと?」


「いや、神様に帰っていただくってこと」


 さっきあの場で祈るのも考えたが、多分あの状況で祈りも捧げたとしても、分かった、首を差し出せで終わってしまっただろう。


 それじゃ意味が無い。


 だからこそ、ここに祀られているであろう神器に直接願いを叶えてもらう。


「でもあれだけ凄いことができる神様が、祈っただけで帰ってくれるの?」


「ああ、普通に祈っただけじゃ無理だろう、そこでこれだ」


 俺は懐から封筒を取り出す。


「なんか書いてある、初穂料?」


 厳島ダンジョンでの騒動のあと、俺は色々と日本の伝説を調べまくった。

 その時にこういうギミックがありそうなダンジョンには目星をつけていた。

 熱田ダンジョンもそのひとつだ。


 その為に用意したもの。


「有り体に言うとお金だ」


「え?お金」


「10万包んである」


「奮発したんだね」


「必要経費だと思って」


「……」


「言いたいことは分かるが、こう言うのは感謝の気持ちが大切らしい」


 いや、分かる。

 俺も思ったよ。

 願いがお金で買えちゃうんだなって。


 だけど調べているうちに、結局こう言うのはお金自体が大事なのではなく、気持ちが大事なのだと言うことが分かった。


 今それを説明するには考え方が色々難しすぎて、なんて伝えれば良いのか分からないんだよな。


「とにかく、これを使って漆原さんが神様に帰るように祈って欲しいんだ、もちろん俺もサポートするから」


「それ祈るのって源志くんじゃダメなの?」


「古今東西、神様の怒りを収めると言えば巫女と相場が決まっているからな」


「それどの辺の古今東西なのかな?」


「ゲームやアニメはそうなってる」


「おっと源志くんが急に馬鹿になっちゃった」


 漆原さんにすごく可哀想な人を見る目で見られてるんだけど、どうしよこれ、ちょっと不安になってくるんだけど。


「どうやらここみたいだ」


 そんなこんな喋っているうちに、今までとは見た目も雰囲気も異なる扉の前にたどり着く。


「なんて言うんだろう、どう考えても開けちゃだめな扉だよねこれ」


「ダンジョン的に言うのなら、ここが本当の最下層のボス部屋になるんだろうな」


 扉に手をかけた途端、怖気にも似た何かが背中を走る。


 だがここで引く訳には行かない。

 それに何故か分からないけど、多分この部屋は今、本来の力を持っていない。


 そう確信できる何かが俺の胸の中にある。


 その勘を信じて、ゆっくりとか慎重に扉を開ける。


 軋むような音とともに、大きな扉が開いていく。


 そこはかなり広い部屋で、畳に赤い絨毯が敷かれている。


 まさにボス部屋といった雰囲気の広さを有しており、本来であればここにボスが待ち構えているのだろうということが伺える。


 しかし、神降ろしの結果なのだろうか。

 そこにボスの姿は存在しない。


 あるのは圧倒的なまでの雰囲気を醸し出す小さな建物。

 間違いなくあの中に神器が祀られているのだろう。


「漆原さん」


「とりあえずこのお金をあの前に置いて祈ればいいんだよね」


「ああ、その筈だ」


「とりあえずやってみるね」


 神器の祀られている場所の前に二人で正座をし、手を合わせる。


 …………。


 ………………。


「どうだ」


「特になんも感じなかったけど、これで良かったの?」


「あぁ、多分」


『良いわけなかろう!このたわけ者めが!!』


 頭の中を白虎の叫び声が響く。


 耳から聞こえた訳じゃないのに耳がじんじんする程の声量だった。


「どうしたの源志くん」


「あ、いや、どうもこれじゃダメだって白虎が」


「それならどうすればいいの?」


『たく、世話のやける童共じゃ、良いか今から言うことをよく聞くがよい』

読んでいただきありがとうございます!

皆が頑張って戦ってる中、

イチャイチャしてる源志くん達に喝をいれよう。

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