第18話 秘密
「お母さん、お祖母ちゃんはまた温室?」
そう言って桜子はヒョイとキッチンに顔を出した。
「あ~いい匂い。今日はから揚げ?」そう言ってポイっと一個口の中に放り投げる。
「あ、つまみ食いしちゃダメでしょう?」そう言って桜子の手をペシッと叩く。
「イタッ!でも美味し~」そう言って桜子は手をフーフーしている。
「お祖母ちゃんの所へ行くんだったら、ご飯って伝えて。多分温室だと思うから。」
「は~い。」そう言ってもう一個から揚げを口に放り込んで、桜子は温室の方へ歩き出した。
桜子の家は都心部のはずれの、少し小高い丘の上にある。
家の西側には祖母の温室があり、沢山の観葉植物のほか、探求中に見つけた珍しい植物などが植えてある。
丘からの見晴らしは良く、遠くに都心のビル街が見える。
夜になると、夜景が奇麗だ。
そんな桜子は祖母、両親、そして二人の兄と暮らしている。
祖母の名は大木加乃。
彼女は植物学者で、新種の花や、植物の生態の研究などをしており、頻繁に海外や、日本各地を回っている。
温室にたどり着いた桜子は、ドアを開け、「お祖母ちゃん居る?」と声を掛けた。
「あ、桜子、ここだよ。」そう言って、大きな葉っぱの間から顔を出した。
「やっぱりここだったんだね。お祖母ちゃん、お母さんがご飯って言ってたよ。」と伝えると、
「じゃ、これを植え替えたら行くわね。」と、どうやら植物の植え替えをしているようだ。
「じゃあ私もここで待つ。あ~私、お祖母ちゃんの温室大好き…」そう言って桜子が奥に向かって歩いて行く。
加乃の温室は、ちょっとした隠れ家の様になっている。
奥の方は大きな観葉植物に囲まれているため、丁度良い日陰ができる。
その中央に椅子と、ソファーが置かれ、その間には、ガーデンテーブルがあり、ちょっとした、くつろぎのスポットとなっている。
所々で木漏れ日も入り、お昼寝にはもってこいだ。ハンモックがあればパーフェクトだろう。
桜子はこの温室が大好きで、小さい時は兄弟3人そろって良く遊んだ。
加乃は家にいる殆どの時間をこの温室で過ごした。
自室よりも、この温室の方が、彼女の部屋と言っても過言では無かった。
奥にたどり着いた桜子は、ソファーにドサッと飛び込んで大きく背伸びをして、
「は~気持ちいい~ここから動きたくな~い」といってファ~っと大きな欠伸をした。
「学校はどう?新しいお友達は出来た?」と祖母が聞いて来る。
「うん、いっぱい出来たけど、3人とても仲良くなったのが…」といって静かになった。
「桜子?…桜子?…」そう言ってソファーのところまで歩み寄ってみると、ソファーの上で眠りに落ちてた桜子が居た。
その姿を見て加乃は、「小さい時から全然変わってないわね」とほほ笑んだ。
「よう!」
そう言って桜子の背中を叩くのは直行。
その隣に和人が居た。
「おはよう大木さん。昨日はどうだった?お兄さん、何か言ってた?」和人は心配そうに桜子に尋ねた。
「あ、おはよう、直行、和人君。」そう桜子が挨拶をすると、
「昨日なにかあったのか?」と直行が尋ねてた。
「あったわよ。色々とね。」と桜子が答えた。
「それで、お兄さんから何か情報は入ったの?」と聞く和人に、
「何?何? なんで自分たちだけ分かる会話してんだよ。分かるように説明しろよ。」と直行が急かす。
「話せばちょっと長くなるから、お昼に。」と桜子が言うと、
「おっはよう!」と後ろから奈々がやって来た。
「どうしたの?なんか浮かない顔ね。」と奈々が直行に言うと、
「いや、昨日桜子と和人になにかあったらしくてさ、今すぐ事情を知りたいんだけど、昼までお預けを食らったところさ。」と直行が答えた。
「あら、あら、あら、何か進展があったの?」と聞く奈々に、
「あったと言えば、あったような、無かったと言えば、無かったような…」と何とも言えない中途半端な返事でますます直行は、
「話せ! 今、話せ!」と桜子に迫ってくる。
「まあ、まあ」と奈々になだめられ、「じゃお弁当の時にね!」と直行は奈々に引っ張って行かれた。
「ハハハ 月野さんって相変わらずパワフルだね」と和人は感心していた。
「それで? 一体何があったんだ?」と、桜子の卵焼きを摘まみながら聞く直行に、
「ちょっと、それ私の大好物!」と桜子が箸で直行をつつく。
「昨日僕と大木さん、放課後に生徒会室に行ったんだよ。」と和人が話し始めた。
「なんの為に?」と聞く直行に桜子が、
「裏クラブの真実を確かめる為!」と言って、おにぎりにかぶりついた。
そして続けて、「実は昨日ね、お掃除中に色々と探りを入れたわけよ。」と桜子が言うと、
「あんた、やるわね~。」と奈々。
「それで、色々と話を繋ぎ合わせていたら、表の生徒会長と裏の生徒会長の話が出てきて。」
「何、何、裏の生徒会長?なんか面白そうな匂いがするわね。」と奈々が目を輝かせている。
「そうなの。なんでも、願い事を書いたメモを生徒会室のドアの下に忍ばせておけば、生徒会を通して、その願いを叶えてくれるってね。」
「え、それってどんな願いでもいいのか?」との直行の質問に、桜子が束さず、
「バカね。学校に関することのみよ。あんたどうせガールフレンドが欲しいとかでも言うんでしょ!」と茶化す。
そして続けて、「それで、生徒会長に聞くが一番早いと思って、丁度、焼却炉でかち合ったから面接を申し込んだの。」と答えた。
「あ~だから生徒会長に会いに行ったんだな。」と、直行。
「その通り!」
「で、何が分かったんだ?」と直行が興味深々で聞いて来る。
「生徒会長にここに行けってメモ渡されて、」
「なんかスパイ映画みたいだな」と直行が言うと、
「ほんと、何故私、そこに居なかったんだろう!」と奈々が悔しがっている。
「で、メモ渡されてどうしたんだ?」と直行が尋ね、
桜子が「行ったわよ!和人と一緒に。ねえ。」と和人の方を向いて同意を求める。
「うん、バスで5つ目くらいの停車場だったよね?そこにメモにあった場所があって、高校生のミステリーサークルの活動場となってた。」と和人が答えた。
「何故、生徒会長はそんなこと知ってたの?」と奈々が尋ねると、
「家のマコ兄が絡んでたのよ~~~」と悔しそうにしている。
「それってどういうこと?」と奈々が尋ねると、
「これ、マコ兄には絶対誰にも話すなって言われたから、絶対誰にも言わないでよ。」と桜子がボソボソと話始める。
「家のマコ兄こそが、裏会長だったのよ!」それを聞いて奈々と直行は
「エーーー!ッ」とびっくりしているが、
「なんだそれ、かっこいいな。」と直行は少し興奮気味でもある。
「どこをどうなったら桜子のお兄さんが裏会長になるの?」と奈々が聞くので、桜子は昨日、兄から聞いた全てを皆に話した。
「は~そんな事って本当にあるのね~。私、漫画や映画の世界だけかと思っていたわ。」と奈々が言うと、
「でしょう?私も噂をかき集めなければ、マコ兄がそんなことしてるなんて微塵も思わないわよ。」と桜子が返した。
「でも桜子も、桜子のお兄さんも見たことがあるような魔法陣の絵ってなんか匂うわよね。」と奈々。
「お前の兄貴が書いたんだよな?」と直行。
「そうらしいけど、恐らく、私も、マコ兄も、どこかでその魔法陣見たことがあると思うの。でも、思い出せなくって。マコ兄はゲームの中で見たんであるとすると、私はどこで?って感じだし、もし私が何らかの本で見たんであるとすると、じゃマコ兄はどこで?って感じだから、もし二人が一緒にどこかで見てるとすると、可能性な物が全然見えないのよね~私達、全く趣味違うし、行動圏も丸っきり別だし…」と桜子は困惑している。
「でもね、今度その魔法陣を検証してみようと思ってるの。皆うちに来る?」と桜子が尋ねると、
「行く、行く。」と全員一致で決まった。
「皆の土曜日の予定は?」
「私は午前中クラブ活動だから、午後は暇。」と奈々が言い、
「右に同じ。」と直行。
「僕は一日大丈夫だよ。」と和人が言うと、
「じゃ、皆お昼の1時に学校で会いましょう。その後家へ来て検証してみましょう。」そう桜子が言い終えるのと同時にお昼を終える鐘が鳴り響いた。




