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桜子の物語  作者: 樹木緑
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第15話 自己紹介

各教室では、新学期特有の自己紹介が、どこのクラスでも行われていた。

大抵皆、名前、出身中学のみで終わったが、桜子はそうはいかなかった。

「え~次は大木桜子さん。」担任の教師に名前を呼ばれると、

「はい。」と元気よく返事をして、立ち上がった。

そして、「大木桜子です。都立第5中学校から来ました。皆が質問するのでここで発言しますが、私はハーフではありません。

クウォーターかもしれませんが、お祖母ちゃんは100%日本人です。お祖父ちゃんの事は全く知りません。なので、髪の色は地毛です。カラコンもはめていません。

それと、異世界へ行く探求をしてます。もし興味がある人は一緒に異世界探求をしましょう!あ、でももし、異世界に行けても、王子さまは私のなので、そこはよろしく。」と言って席に着いた。

暫くざわついていた教室が、桜子の自己紹介の後でシーンとなったのは言うまでもない。


ハハハとお腹を抱えて思いっきり笑っているのは奈々と直行。

横で顔を真っ赤にして、「何がそんなにおかしいの!」とプンプンしているのは桜子。

奈々と直行は自己紹介の有様を和人に聞いて笑い転げているのである。

「まさか自己紹介で自分のアホさを、さらけ出すとはな!」と直行は更にお腹を抱えて笑っている。

「あら、でも自己紹介の後に皆、がんばって!って言いに来てくれたのよ!」と桜子は満足げである。

「それはな、建前だよ。だれも、変な人って直接言わないだろ?」と直行。

「ふん、私、変な人でも構わないし。」と桜子は半分自棄になって来た。それを見かねた和人が、

「あ、そう言えば大木さんってクウォータなの?」と話を切り替えた。

桜子は栗毛にユルフワの長い髪と、ヘイゼルっぽい色の、茶とも緑とも言えない目の色をし、色は白く、薄紅色の頬に唇をしていた。

「あ、私もそれ、気になってた。」と奈々。

「あ、俺はお前の事ハーフだと思ってたよ。だってお前の兄貴、思いっきり外人みたいな感じだよな?」と直行。

「あ、私、桜子のお兄さん見たこと無いや。」と奈々。

「僕もありませんね。」とは和人。

「おまえら、一目見たらいいぞ。惚れるかもな。イケメン兄弟だぞ。ま、下の兄貴は会える機会は在るわな。この学園に居るからな。」

「え~うちの兄達って家じゃ、すっごいもっさいわよ。結構モテるらしいけど、どこが良いのかさっぱり。」

「お前贅沢だな。一体どこの王子様だとご満足されるのやら。」と直行はからかっている。

「で、ハーフなの?クウォータなの?なんか国際結婚って興味あるわよね。私がしたいんじゃなくって、いったいどうやって知るり合って、恋に落ちたとか? ロマンチックよね。運命って感じ」と奈々がもう一度訪ねる。

「そこまでロマンチックでも運命でも無いわよ。みんなと変わんない。出会いもあれば、別れもあるってところ? 現にお祖父ちゃん、妻子置いていなくなってるし。私の感ではお祖父ちゃんが外国人だね。でも実際には、私も何代目なのか分かんないけど、うちの父親は思いっきり外国人みたいだよ。でも、お祖母ちゃんが100%日本人だからそれは無いわね。だから父親がハーフなのかなって。でも、お祖母ちゃん、お祖父ちゃんの事、教えてくれないの。多分、あれは行きずりの人と恋に落ちて、別れたってとこかな? ま、私はお祖母ちゃん大好きだから、お祖父ちゃんの事なんてどうでも良いよ。」と桜子は言い切った。

「へ~、そんなに美形家族なんだったら、一度会ってみたいわ。」と奈々。

「お前、妹は居ないの?」と直行。

「ベ~っ、居たって会わせません。」と桜子は直行に向かって舌を出した。


今日は入学直後の実力テスト期間が終わり、初めての全日授業の日だった。

4人は試験中にすっかり仲良くなり、今日は校庭で一緒にお弁当を食べていた。

「そういえばさ、桜子、本は見つかったの?」と奈々が聞くと、

「あ~あれは見当違いの本だった。魔法を研究していた人、ま、言わば私のような魔法オタクね、が書いた同人誌のようなものだった。」と桜子が返す。

「へ~そんなのがあるのね。」と奈々がかえすと、

「魔法の本?」と直行が聞き返す。

「そうなの、桜子ったら異世界への扉を開ける呪文を探しててね、魔法書を読み漁ってるのよ。」と奈々が答える。

「や、でも、やらないで後悔するよりは、やって砕け散った方が…」と和人が助言?をする。

「和人ってホント良い人ね。奈々は応援してくれるからまだいいけど、直行ってほんと…」と言ってお腹をグーでパンチする。

「それで、ミステリークラブって本当にありそうなの?」と聞く奈々に直行が、

「ミステリークラブ? そんなクラブうちの学園にあったっけ?」と聞く。

「違う、違う、普通のクラブじゃなくって裏クラブみたいよ?」と奈々が言うと、

「それ、何処情報?」と聞く直行に桜子が、「家の兄達」と即座に答えた。

「えーなんか疑わしいけど、お前の兄貴だとホントっぽいな。」と直行。

「ちょっと、それ、どういう意味?」と桜子は更に直行のお腹にパンチを入れる。

「おまえ、暴力的だな~」と言ってるのは直行、

「力入れてないから、痛くないでしょ!。」と返すのは桜子。

その二人のやり取りを見てほっこりしているのは和人。

せっせとお弁当を食べ、桜子のから揚げにも手を出していたのは奈々だった。


「ね、和人、あなたクラブは決めてないんでしょう? ちょっと私と来て。」と桜子は和人の手を取り、教室を出る。

「大木さん、何処に行くの?」

「生徒会室。本当に裏クラブがあるのか生徒会長に直談判してみる。お掃除のとき、偶然に焼却炉で会ったから、約束取り付けといたのよ。」そう言ってグイグイ和人を引っ張って行く。

「大木さんって勇気あるんだね。」

「馬鹿ね、これは勇気っては言わないの。少なくとも私にはね。やりたいことに向かって前進するのに怖いと思った事は一度もないもん。」

「大木さんって凄いね。怖いって思う事あるの?」そう尋ねる和人の方を振り向いて、桜子は立ち止まった。

「和人、怖いって思っても良いのよ。怖くっても、やらなければいけない時は、やらなければいけないの。ダメなのは、やれることをやらない事。」

そう言ってズンズン生徒会室の方へ向かって進んでいった。


コンコンコン

戸をノックすると、中から副会長の土井学が出てきた。

「1-5の大木桜子です。生徒会長と面会の約束があります。」と言うと、

「あ、聞いてるよ。どうぞ。」と中へ通してくれる。

「失礼します。」と一礼して中へ入ると、

「生徒会長は今、校長の呼び出しで出ているから、ソファーに掛けて待っていて下さい。」と桜子と和人を通してくれた。

そして待つ事10分ほど、生徒会長の高野海がやってきた。

「待たせて悪かったね。大木君と、こちらは?」

「同じクラスの津田和人です。」そう言って和人は一礼をした。

「それで私に話と言うのは?」

「率直に言います。この学園では、学園で認可されていないクラブがあると聞きました。」桜子が切り出した。

「何故、認可されていないクラブを生徒会が知ってると思うのですか?」そう高野が聞くと、

「生徒会は生徒のための組織だからです。生徒が学園生活に於いてやりたい事を、生徒のための生徒会が黙って見過ごしておくとは思えません。ましてや、今の生徒会長は生徒の為に自分を犠牲にするような人だと聞きました。」

そこで高野海はハハハと笑って「誠だね。」と言った。

「家の兄をご存じですか?」

「彼は裏の生徒会長だからな。」との一言に桜子と和人は目を見合わせてやっぱりと言うような顔をした。

「なんだ、知ってたのかい? 裏会長の事。」と高野が言うと、

「思い当たる節があったので。」と桜子が答えた。

「それじゃ、君の兄さんに聞いたら良いじゃないか。」と高野が言うと、

「兄から間接的にここへ来るよう仕向けられたんです。」と桜子が答えた。

誠のヤツ!とポツリと言って、

「大木君は何を裏クラブに探してたのかい?」と尋ねる。

「ミステリークラブがあると聞きました。そしてその中に面白い人が居ると聞きました。会って話してみたかったのです。」

「なんの為に?」

「異世界の扉を開けるために。」桜子はそう言い切った。

高野はなるほどね、とこぼすと、何かをメモに書き、桜子に渡した。

そして一言、「ここへ行ってごらん。面白いものが見られると思うよ。」と。






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