第14話 新学期
昨日入学式を終え、今日から新学期。
城南学園には影のミステリークラブが有るらしい。
これは桜子の兄である直人と誠よりの情報である。
桜子には二人の兄がいる。
1番上の兄は直人で、現在大学2年生。家を既に出、都内で一人暮らしをしている。スポーツ鍛錬で科学オタクであり、今は大学の薬学科に所属している。
城南学園の卒業者である。
誠は現在城南学園の3年生で学校では一目置かれる存在だが、一度家へ帰ると、引きこもりのゲームオタクである。
この二人の兄が言うには、城南学園には裏クラブが存在しているという事。
活動内容が怪しい為、学園より認可を受けれないので、秘密裏に活動をしているようだ。
実際に在るのか分からない為、活動内容は分からないが、それが桜子がこの学園を受験した理由だった。
「奈々~おっはよう!」
桜子は奈々を見つけるなり、駆け寄った。
「あ、おはよう桜子!」振り向いて挨拶を返す。
「同じクラスになれなくて残念だったね。」と奈々が言うと、
「でも忘れ物したら借りれるから丁度いいじゃない!」と桜子は呑気である。
「ね、奈々ってもうクラブとか決めてるの?」と桜子が尋ねる。
「私は中学からやってたテニス部に入ろうと思ってるんだけど、桜子はもう決めてるの?」
「家の兄達から聞いたんだけど、この学園って、裏クラブがあるんだって。その中にね、ミステリースラブがあるらしいの。ちょっと探ってみようと思ってね。実際に在るんだったら入りたいわね。」とヒソヒソと話す。
「えっ??? 裏クラブ? 何それ?」
「シーーーっ」と桜子は口に指を当てて見せる。
「これ、秘密ね。学校には知られたらダメっぽそうだから。」
「あなた色んな情報が入ってくるわね。」と奈々が感心している。
「真実を突き止めたら教えてあげる。」と桜子。
「それより、魔法書、見つかったの?」
「まだ、だけどね、今日それらしきものが持ち込まれる予定っておじさん言ってた。だから学校帰りに寄ってみようと思って。」
「探し物だったら良いね。」
「ほんとうに!」と桜子は言ったあと、
「じゃ、私こっちだからまた後でね。」と手を振って校舎の西棟へと進んでいく。
奈々は東棟へと進んでいく。
学校は西棟と東棟に分かれていて、1-3組までを東棟、4-6組までを西棟としていた。
奈々は1年1組、桜子は1年5組だった。
桜子は、靴を靴箱に入れ、シューズに履き替え、1年5組へ向かって歩き始めた。
既に開いているドアの所まで差し掛かった時、後ろからドンっと付かれ前に倒れかけた。
「ギャッ」っと女の子らしくない声を上げると、ぶつかって来た男子は、
「あ、ごめん、ごめん、前を見てなかったよ。ケガはない?」そう言って右手を差し出してくる。
その手を掴んで起き上がると、
「私は大丈夫よ。あなた、名前は?」と聞いて来る。
「俺? 俺は古賀直行。お前は?」と聞き返す。
「お前って失礼ね。私は大木桜子。あなた、このクラスでは無いわね??1年生?」と直行に尋ねる。
「いや、俺のクラスは1組。1-1。このクラスに友達が居るから様子を見に来たんだ。」
「1組…奈々と同じか」とボソッと言い、
「ねえ、あなたの友達って津田和人?」
「おーそうだよ。なんで分かったんだ? それにしてももうクラスメイトの名前覚えたのか?」と不思議そうにしている。
「私、物覚え良いの! それに観察力もあるのよ。様子を見に来たって事は、心配している=新しいクラスに馴染めてるか=友達出来たか?」
「おっしゃるとうり!」と直行が感心している。
「その状況に見合うと言ったら…ほらっ、津田君のみじゃない。」と指を差す。
津田和人は既にいくつかのグループになりつつある教室の中で一人ポツンとしている。
「あ~やっぱり馴染めないでいるか!」と直行が心配している。
その様子を、何があったの?と言うような表情で見ている桜子に、
「いや、あいつさ、SFオタクでさ、ちょっとそれが原因で中学の時、いじめにあってるんだよ。」
「えっ!SFオタク? そこのところをもっと詳しく…」と桜子の目が光る。
「お前、いじめるんじゃないだろうな?」と訝し気る直行に、
「ご心配なく! 私、異世界ファンタジーオタクなので!オタク同士で仲良くなれるじゃない!」と何のことか自信満々で桜子が答える。
「お前、変わってるな。」と直行が呆れている。
「ほら、紹介してよ。私がお友達になってあげる!」そう言って和人のところまで直人の手をグイグイ引いていく。
「おい、和人!」
「あ、直君。」
「お前、新しいクラス大丈夫か?」
和人は眼鏡を直しながら直行を見上げ、
「俺は大丈夫。直君は新しいクラスはどう?」
「俺の事はどうだっていいんだよ。おまえ、現に今でも一人で座ってクラスに馴染もうとしてないじゃないか!」と直行が少し腹を立てる。
そこに桜子が「おっほん!」と咳払いして、肘で直行の脇腹をつつく。
和人が桜子に気付き、「直君のガールフレンド?」と聞いて来る。
そこで桜子が、「ちょっと、やめてよね、こいつとは今、会ったばっかり。私、王子様意外と付き合う気ないから!」のセリフに、二人はポカーンとして桜子を見ている。
「お前、何夢物語みたいな事言ってるんだ? 日本は皇室で王室ではないぞ? それにお前に似合った年の人間なんて皇室には居ないぞ?」と直行。
「馬鹿ね、何で私が現世の王子と付き合わなくちゃいけないのよ!」
ますます二人は、は~???っとなっている。
「私が求めるのは、異世界の王子様!」
もう二人は開いた口が塞がらない。
「あのね、私、絶対異世界ってあると思うの。そこで魔法使いになって、王子様と結婚するの!」
「お前、頭大丈夫か?」と直行。
そこで和人が、
「凄いね、異世界ってあると思うの?」と聞いて来る。
そのセリフに直行が、お前までナニ???と言うような形相で和人の方を見る。
「あなたはどう思う?」
「そうだね…」と言いかけた時、
「あなた、SF好きなんでしょ?」と問いかけ、和人は直行をジロッと睨む。
一方直行は、「あ、いや、ほら、お前何時までも一人だから、心配して様子見に来たらこいつがさ…」と冷汗をダラダラと流したように言いつくろっている。
「和人君、大丈夫よ!私もオタクだから!ね、一緒に異世界探求しない?」と両手を掴で目をキラキラとさせた。
「お前、次から次にポンポンと。思考脈路が激しいな。」と直行が言うと、
「あら、あなたも参加する?」と尋ねる。
「いや、俺はJリーガを目指して忙しいからさ。」そう言うと、
「あなたはサッカー少年なのね。私の兄もサッカー少年だったのよ。」
「だったって事は今は違うのか?」
「もう大学生ですもの。でも、この学園の卒業生だから、あなたの先輩になるわね。」
「へー何て名前?」
「大木…」と桜子が言いかけると、「直人?」と直行が続ける。
「あら、良く知ってるわね?」に、「お前の兄貴、ちょー有名人じゃん!」
桜子は興味なさげに「そうなの?」と一言。
「一時凄い騒ぎになったじゃん。プロの道蹴って化学の道を選んだって…」
「私、サッカーには興味ないし、知らないし…」
「はー、あんな凄い兄貴居て、お前贅沢な奴だな。」と直行はうらやましそうである。
「私、異世界へ行く道を探すのに忙しいから!」と、とことん興味なさそうだ。
「ねえ、大木さん、何故そんなに異世界に行きたいの?」と和人がたずねる。
「聞いてくれる?!」と張り切る桜子に、直行が一言。
「それって、長くなる?」




