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桜子の物語  作者: 樹木緑
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第13話 合格発表

「え~っと1025…1025…」

桜子は今、合格発表が行われている私立城南学園高等学校に来ている。

校門に張り出された合格者の看板を見ながら、自分の番号を探している。

その時視線を感じた。

視線の方を振り向くと、一人の女子が桜子を見ていた。

少し気になったが、続けて自分の番号を探す。

そして合格者の中に自分の名前を見つけてガッツポーズを静かに決める。

「あなたも受かったの?」

「キャッ!」と言って後ずさると、さっき自分を見ていた女子が横に並んでじーっと自分を見ている。

「びっくりした~。脅かさないでよ。」そう桜子が言うと、

「あなた、オタクでしょう?」とずかずかと聞いてくる。

「えっ?なんで…わかっ…じゃなくて、ちょっと不躾に失礼じゃないの?」と答えると、

プップップッと笑って、「だってあなた受験の時…」と言ってまたプップップッと笑っている。

「あ~あなた、あれ、見てたの!」と桜子が真っ赤になって捲し立てている。

「あなたも受かったみたいね。私は月野奈々。よろしく。」そう言って手を差し伸べる。

その手をチラッと見て桜子は、

「ね、あなた、異世界って信じる?」といきなり聞いている。

月野奈々は差し出した手を収めて、

「異世界? ファンタジーなんかの?」と聞き返した。

「そうそう、その異世界。」

「そうねえ、もしあるんだったら行ってみたいわね~」と奈々。

桜子の顔がぱあ~っと晴れて、

「ねえあなた、この後時間ある?ちょっとどこかでお茶していきましょうよ!」と聞く。

「ちょっと待って、私まだ、あなたの名前も知らないんですけど?」

「あ、そうだったわね、私は桜子。大木桜子よ。」といって右手を差し出す。

「あなた、本当ずうずうしいわね。空気読めないって言われない?」そう言いながら奈々が手を差し出し、握手を交わす。

「あ~確かに私って脈絡無いって言われるわね。ま、国語苦手だし。」と桜子は訳の分からないことを言っている。

「ま、良いわよ。あなたとはいいお友達になれそう。行きたいカフェとかあるの?」そう奈々が尋ねると、

「最近目を付けたカフェがあるのよ! その名も、ファンタジーカフェ!」と目をキラキラとさせて桜子が答える。

「なに?そのファンタジーカフェって。胡散臭いわね。」

「内装がね、ファンタジーなの!ま、行けば分からるから、行こうよ。」そう言って奈々の手を引いてバスストップまでやって来た。


「このカフェ、ちょっと隠れ家的な所にあって、分かりにくいんだけど、私その辺良くいくから案内してあげる。学校からもバスで10分程と近いのよ。」と説明していると、バスがやって来た。

二人でバスに乗り、待つ事10分。2つ目のバスストップで降りて、裏道の方へ歩いて行く。

「あなた、良くこんな所見つけたわね。」と奈々が感心している。

「そうね、あまり中学生は来ないかもね。でも、割りと高校生や大学生は居るんだよ。」そう言って、

「あ、ちょっと待ってて、ここにちょっと寄りたいから。」と言って立ち止まったのは古本屋。

「おじさ~ん、こんにちわ!」

「お~さーちゃん、今日は合格発表だったんだろ?どうだったかい?」と、古本屋のおじさんとは顔なじみの様だった。

「もちろん合格よ!ねえ、何か新しい本、入ってる?」と聞く桜子に、

「さーちゃんの探してる本はまだ無いけど、加乃さんの探していた本は、入ってるよ。」

「じゃあ、私もらってくね。お幾らですか?」

「2冊で税込み5800円です。毎度ありがとう。」

1万円を払い4200円のお釣りをもらって、「じゃ、おじさん、また立ち寄るわね。ありがとう!」そう言って古本屋を後にした。

「桜子ってこの辺り良く来るの?」と奈々が聞いた。

「うん、おばあちゃんがあの古本屋のおじさんの馴染みでね、結構伝手があるらしくって、古い本とか、廃盤になった本とか、珍しい本とか、色々と見つけてきてくれるの。」

「へ~桜子はどんな本探してるの?」

「魔法書!」

「えっ?」と奈々が聞き返す。

「ま ほ う 書!それも、実際に魔女と呼ばれた人たちによって、古代ヨーロッパで使われていたっていう代物!」

「え~そんなの実際に有るの?」と奈々が疑わし気に尋ねる。

「うん、あのおじさん、結構物知りでね、以前見たことがあるって言うから探してもらってるの。」と何食わぬ顔で桜子が答える。

「見つかったらすごいね。でも、もし見つかったら私にも見せてよ!」そう奈々が言うと、

「もちろん!」と元気よく返事をして、


「あっ、あった! ここ、ここ」と言って桜子が何の変哲もない壁の前で立ち止まった。

「ここ? 何も無いんですけど…」そう奈々が周りを見回しながら言うと、

「ちょっと待ってて」と言って桜子が壁に手をかざして何かを探している。

そして一部分を指でなぞって場所を確定すると、そのスポットを押した。

すると、間の前の壁が開き、中からエルフの格好をしたウエイトレスが出迎えてくれた。

「ほら、奈々!ボーっと立ってないで中に行くわよ。」と桜子が呼んでいる。

「ちょっと!これってどういう仕掛けになってるの?」と奈々が今だにドアの所に立っている。

「説明は後々、ほら進まないとウエイトレスの人も困ってるよ。」そう言って奈々の手を引いて進んでいく。

壁をすり抜けると、壁の反対側はまるで別世界に来たような景色が広がっていた。

桜子がウエイトレスに、「魔法の館にお願いします。」と言うと、「かしこまりました。」と、一つの建物の前まで連れて行ってくれた。

そこでウエイトレスがドアのノッカーを叩くと、中から今度はローブを着た、ゲームの中から出てきたようなウエイターが引き継ぎ、桜子たちをテーブルまで案内した。

「魔法館へようこそ。こちらがメニューになります。お決まりになりましたら、こちらのベルを鳴らして及び下さい。」と言い、魔法使いはカウンターの所へ戻って行った。

「ちょっと、ちょっと、ちょっと桜子、ここ一体、どうなってるの?」と奈々は訝し気に周りを見回している。

「なんか、お金持ちが道楽で始めたカフェって言ってたよ。その人、ゲーマーなんだって。いや?プログラマーって言ってたっけ?」と桜子が説明する。

「それにしてもここって凄いわね~、もうあの壁からびっくりよ。」と奈々が今だにキョロキョロとしている。

「あの壁は云わば、門とフェンスね。で、グルーっとこのファンタジー村を囲ってるの。外から見えないようにして、別世界を気取ってるみたいよ。ここではエルフの森、妖精の森、ホビットの洞穴、騎士の城、魔法の館、そして魔王の城と6つに分かれていて、私たちが居るのが、魔法の館。それぞれにエルフ、妖精、ホビット、騎士、魔法使い、魔王のコスプレをした人達がウエイターやウエイトレスとして働いてるわね。それぞれの場所は、この魔法館で分かるように、映画やゲームで見るような場所そのもの。」

「あなた、どうやってここ見つけたの?」と不思議そうに尋ねる奈々に、

「あ~異世界ワールドの雑誌に載ってたのよ。」と割と普通の答えだった。

「はい、これメニュー。」そう言ってメニューを渡すと、

「食べ物は至って普通ぽいけど、このメニューって凝ってるわね~。」と奈々。

メニューは文字も、絵も、全て手書きで、使ってある紙もどういう風に加工したのか、雰囲気が出ていた。

二人はそれぞれドリンクとケーキを頼んだ。


「ね、ね、それで奈々ってさ、異世界に行ってみたい人?」と早速桜子が質問する。

「そう言うあなたは?」と奈々が聞き返す。

「私は異世界があるって信じてるからね~。」

「何を根拠に?」と奈々が聞く。

「根拠なんて無いけど、なんか感じるのよね、異世界の存在を!だから、魔法書を探してるの。もしかしたら、異世界に行く扉を開く魔法があるかもじゃない?」

「あ~、だから魔法書を探してたんだね。」

「もうずっと探してるけど、今だ見つからないんだよね~。」

「いや~、それ、無理でしょ? 私、異世界には行ってみたいと思うけど、実際にはあるって思ってないし。ただ、あれば行ってみたいなってな感じだけで…でもそうね、もしあったら異世界で冒険してみたいわね。」

「私はね、異世界に行って、魔法使いになりたい。」

「えー!何故魔法使い? お姫様とかではなくて?」

「ほら、お姫様だと、お決まりじゃない? 私魔法使いとして王子様を助けて恋に落ちたいの!これ絶対!」

「いや、桜子、その夢、諦めた方が良いよ。あんた、一生彼氏出来なくなるよ!」

「ま、今はまだ15歳だから彼氏はいいの。まず、異世界の扉探しに私の全身全霊を掛けるわ。」

そこに、「お待たせ致しました。」とドリンクとケーキが運ばれてきた。

「うわ~、このドリンクキラキラと奇麗ね~ なんか幻想的?」と奈々が感動している。

「ね、ところでさ、なんで私がオタクってわかったの?」と桜子が尋ねると、

「だって私もオタクだも~ん。RPGゲーム大好き。ドラクエの大ファン。」と言ってピースして見せた。



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