序章第二節
かつて誰も感じたことのない衝撃と爆音、そして街の崩壊はまさに世紀末と呼ぶにふさわしかった。
群衆がいた場所に人が誰も見当たらず、建物の瓦礫は肉片と赤い液体で染め上げられ、辺りは死臭が漂っている。
アメリカ西海岸は街と呼べるものなどなくなっていた。海から見える景色は以前なら活気あふれ楽しそうなイメージを持たせるサンタモニカピアがあって、その少し後ろには都市が広がっていたはず。
だが、今目の前に広がるのはあちこちで上がっている煙と、ビルや建物の瓦礫と残骸、海岸に活気など一切見られない寂しさであふれた観覧車だけだ。
「おいソフィア、この救助作業が終わった後俺の部屋で楽しいことしないか?」
「はっ、冗談はあんたの顔と器の大きさだけにしな」
ロサンゼルスのある都市で救助作業が行われている。軍人たちが必死に救助を行う中、一人だけその場に似合わない女がいた。
美しく輝く肩までもない金色の髪は太陽の光を思わせ、目は青空を連想させるスカイブルー。そして美貌とつつましくも確かにある胸。別の軍人の男が誘うのも無理はなかった。
「大丈夫?ちょっと!こっちにけが人がいるから誰か手を貸して!」
瓦礫の間にうまい具合に挟まれているスーツ姿の男は頭からわずかの流血しかけがは見当たらない。
「早くしてくれ!死にたくない!」
周りには死体が転がっており男は気が動転し、自力で出ようともがいている。
「来たぞーソフィア。それに力自慢も何人かついでに」
「遅いボブ!ほら、あんたも暴れんな。それじゃ危ないからおとなしくしてな」
ボブと呼ばれた190はあろうという男は巨体を鳴らしながら瓦礫の前まで屈強な男たちを引き連れながら来た。
男たちは瓦礫をずらし、ソフィアは空いた隙間から男を引っ張り出した。
「ちょっとあんた、こいつを救護のところまで連れていきな。頭から血流してるし」
ボブが連れてきた男の一人にけが人を託すと、ソフィアはすこし考えていた。なぜ、こんな大都市に隕石が、しかも世界でも数か所、同じことが同時に起こっているのは天文学的な確率のはず。
「なあボブ……なんで突然隕石がこんなにも地球に飛来したんだと思う?」
「さあな。でも自然現象でこんなことが起きるなんてすごい確率だぜ……?神様が人間の行いにぶちぎれて天罰を下したっての方が俺はまだ信じられるぜ……」
「……まあでも、こんなこと考えたってなんも変わんないし、とっとと次行くよ!」
「はあ……話しかけたお前が言うかね、それを……」
ソフィアとボブはこの異常事態に困惑していた。いや、二人だけでなくこの場にいる者全員が同じだった。それでも彼らは懸命に目の前の命を助けようと東奔西走する。
どこからか女の声がした。
「ソフィア!ごほっ!」
ソフィアはその声に立ち止まり辺りを見回した。
「ねえボブ、今声が聞こえなかった?」
「なんだ?俺は別になんも
「ソフィア!こっち!……瓦礫の下!」
「おいソフィア、あの下からじゃないか?」
二人は声のする方へと走り、瓦礫の中を覗いた。
「やっぱこっからだ……。おいあんた!大丈夫か!?」
「って……シャリ―!?あんたなんでここに……」
「おいソフィア、無駄話は助けた後にしてくれ。この瓦礫なら頑張れば二人でもいけるぞ」
「3カウントだ。行くぞ……3……2……1……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
その瞬間、地面が揺れ、鈍い音があたりに響いた。だが、その揺れも数秒で止まった。
「おいおい……隕石の次は地震ってか?神様ってのは随分ご立腹なんだな」
「……!」
ソフィアは驚きを顔に浮かべ、震える口を開き、指をさした。
「ねえボブ……あんたってゴジラとかって信じる?」
「ああ?どうした突然。んなこと言……って……」
指さす方を見たボブも驚きと困惑を隠せないでいた。
ソフィアの指さす方向には……
巨大な怪獣がいた。
映画やフィクションの中だけの存在。そう思っていた。だが、目の前には何10メートルもある巨大な生物がいた。肌はワニを連想させる黒い光沢のある固そうな鱗、そして四つ足で歩き、雄たけびを上げた。
空気は振動し。みな耳を抑えている。
「ソフィア!お願い、はやく!!」
「おい……あいつ、こっちに近づいているぞソフィア!助けるならっとと助けるぞ!」
「わかってる!!さっさとこれどかすよ!」
二人は気合を入れなおし、力を込め瓦礫の下に手を入れた。
「ん~~~~!!」
「がああああ!!!」
二人が力を入れると徐々に瓦礫は上に動きはじめ人一人が入れそうな隙間ができた。
「早くその穴から出て!あいつが来ないうちに!」
シャリーは手を地面につき前に這って進もうとするがひじから崩れる。
「っ……!……足がっ……」
「ど、どうしたのシャリー!?早くしないと……腕が……!」
「足が……右足が動かせないの!……きっと、瓦礫に挟まれて……」
そうこうしている間にも怪獣は三人の方向にも歩みを進めている。
「シャリ―早く!怪物がもう……!」
気づけば怪物は瓦礫を踏みつけながら三人のすぐ後ろにいた。
ボブは目の前に広がる巨大な怪獣に恐怖し、先ほどまでの顔はどこへ行ったのかすっかり青ざめ瓦礫を持ち上げている手を放し急いでソフィアの手を握った。
「ちょっ、ボブ!何勝手に放し——
「もう無理だソフィア!俺らだけでも逃げるぞ!」
ボブはソフィアの手を引っ張り無理やりにでも逃げようとするが、ソフィアは踏ん張ってその場に残ろうとする。
「やめてよ!まだシャリーが中にいるでしょ!」
「いいから早く!このままじゃ俺らまで死んじまうぞ!」
「うるさい!あんただけでも先にっ……!」
「うあっ!」
最悪なことに、怪獣のルート上に三人のいる瓦礫があった。三人のいる瓦礫を蹴り、瓦礫とボブとソフィアは吹き飛ばされた。二人は数メートル飛ばされ、粉々になった瓦礫と一緒に近くで倒れ、衝撃でうめき声をあげている。
「くっ……」
「ううっ……」
それでも二人は痛む体に鞭を打ち、体を起こして状況を確認した。
「いつっ……。そうだ、シャリーは……」
不安そうに元いたところを見ると、ソフィアの顔に絶望が浮かんだ。
シャリーの脱出を妨げていた瓦礫たちは怪獣の衝撃でシャリーの右足は折れているのかほふく前進で前へと進んでいた。
「ソフィア!あたし出れたよ!」
シャリーは自分の置かれている状況を全く把握してなく、ただ瓦礫から脱出できたことに喜んでいる。
ソフィアはボブに体を羽交い絞めにされながらも必死な顔で前に進もうとした。
「シャリー早く!ボブっ、邪魔しないで!」
「行くなっっつてんだろバカ!命をどぶに捨ててえのかお前は!」
そんな二人をシャリーは首をかしげながら不思議そうに見ている。
「どうしたの二人とも、そんなにあせちゃって。そりゃあ、ちょっと足は痛いけどさ……命があるだけまし——
シャリーの足元に黒い影が生まれた。シャリーは真上を見たあと悲しそうな笑顔を顔に浮かべた。
「早く……逃げた方がいいよ、二人と——
シャリーの周りに落ちる影はどんどん大きくなっていき、最後には。
「いやあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」




