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竜魔玉  作者: 鈴神楽
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トランシルバニアのドラキュラ城で繰り返される、吸血鬼の吸血音

ドラキュラ城に現れる吸血鬼

「ここが吸血鬼の本場、トランシルバニアか」

 智代の言葉に優子が大きなため息を吐く。

「言っておきますけど、それは、物凄い勘違いですよ」

 それを聞いて首を傾げる智代。

「でもドラキュラって言えば、トランシルバニアだよね?」

 雷華が頭を掻きながら言う。

「素人は、吸血鬼イコールドラキュラと勘違いしてるが、ドラキュラって言うのは、苗字みたいなもんだぞ」

 驚く良美。

「本当なのか?」

 較も頷く。

「ドラキュラ伯爵と呼ばれていて、日本で言うと水戸黄門みたいな物で、ドラキュラって所が水戸に当たると思って良いよ」

 エアーナが記憶を辿りながら言う。

「でも確か、ドラキュラ伯爵っていうのは、小説に出てきた登場人物だって話ですよね?」

 較が頷く。

「そうだけど、そのモデルになったと言われている、残虐な行為をした貴族がこのトランシルバニアに城を持っていて、俗にドラキュラ城と呼ばれているのは、それね。観光地として有名だよ」

 小較が言う。

「ここに居た吸血鬼ってどのタイプなんですか?」

 今度は、優子も首を傾げる。

「吸血鬼っていくつもタイプが居るの?」

 雷華が頷く。

「まあな、あたしが昔退治していたのは、ドラキュラのイメージに近い吸血鬼だったからここの奴らと近い」

 較が後を続ける。

「そのタイプは、どちらかというと、異界から来たタイプで、他界の能力と知恵を持ち合わせている。他にもゾンビみたいに知性が皆無で、人を襲って血を奪って犠牲者を増やすタイプなんていうのも居るね」

 智代が驚く。

「吸血鬼も色々居るんだね」

 小較が頷く。

「犬にも色んな種類の犬が居るのと一緒です」

 それに対して較が言う。

「犬は、大本は、一緒だからちょっと違う。どちらかというと盗みを働く犯罪者を盗人というけど、その中には、強盗や空き巣狙い、金庫破りが居るみたいな感じと思ってくれれば良いよ」

「解りました」

 元気に返事をする小較を見ながら風太が言う。

「もう少し、穏便な例えにしろよ。それより、ここに竜魔玉があるのか?」

 較が頷く。

「そうみたい。でも、近くの組織に確認したけど、それらしい物を手に入れた魔術師の類の人間は、居ないらしい」

 良美が言う。

「どっかの奴らみたいに嘘をついているんじゃないのか?」

 較は、平然と言う。

「嘘ついたら、死んだ方がましって呪法を使って問いただしたから間違いないよ」

 エアーナが顔を引きつらせながら言う。

「どうして、そう乱暴な方法を使うんですか?」

 良美も平然と答える。

「嘘つかなければ問題ないんだから良いじゃん。嘘をつくには、それ相当の覚悟をしろって事だよ」

 較が頷き言う。

「だけど竜魔玉の反応がこのドラキュラ城にあるのは、確かだから、この城を借りきって調査中。今は、調査結果待ちだね」

 そして較達は、近くの宿屋に泊まる事になった。



「アットホームでいいね」

 店の女将さんの計らいで家庭料理を一緒に食べた智代は、呑気に言うとエアーナも頷く。

「そうですね」

 そんな二人は、その場の勢いで洗い物の手伝いを始めて居た。

「なんで、そんなつまらない事するかね」

 良美の言葉に対して智代が言う。

「ヤヤに家事全般まかせっきりにしてる良美と違うからだよ」

 不機嫌そうな顔をして良美が出て行った後、宿屋の小さな娘が入ってくる。

「何か用ですか?」(片言のルーマニア語)

 エアーナがそう言って、近づいた時、俯いていた娘が口を開けた。

「エアーナ、その子、牙が生えてる!」

 智代が叫ぶが間に合わなかった。

 エアーナの首筋に娘の牙が突き刺さる。

 そして、智代にも。



「まさか、うちの娘が」(ルーマニア語)

 混乱する宿屋の女将を尻目に較が智代とエアーナの吸血鬼化を防ぐ処理をしていた。

「小較、優子と一緒に八刃の調査メンバーが泊まっているホテルに救援を呼びに行って」

 風太が言う。

「どうして、あの二人を連絡にやるんだ? 携帯か電話じゃ駄目なのか?」

 良美が電話を見せて言う。

「電話線を切られてる上、携帯に通じなかった」

 較が続ける。

「多分、吸血鬼側が各個撃破するつもりで、電波を遮断する霧を発生させてるんだよ」

「だったら、俺が行く!」

 風太の言葉に較が首を横に振る。

「今のそとは、危険だよ。あちきは、苦手な他人への治療で手が離せない。そうなったら次に攻撃力ある小較に頼むしか無い。万が一の保険の為に優子さんもついていってもらう」

 小較が頷く。

「淫虫の魔王に寄生された優子さんには、吸血鬼も手を出せないもんね」

 複雑な顔をしながらも優子が頷く。

「解ったわ。直に動いた方が良いわね」

 較が頷くと、小較と優子は、宿を出て行く。

 そんな中、雷華が立ち上がる。

「ヤヤ、あたしが吸血鬼を倒しに行く」

「危険だよ!」

 較の言葉に雷華が言う。

「そうかもしれない。でも、智代とエアーナの吸血鬼化とそこの娘を戻すには、一刻も早く元の吸血鬼を倒す必要があるだろう?」

 嫌そうな顔をしながらも較が頷く。

「それは、確かにそうだけど」

 すると雷華が言う。

「智代も言っていただろう、あたし達だって戦っているんだよ。吸血鬼の相手は、得意なんだから任せろ」

 良美が言う。

「解った、任せた。あたしもついていきたいけど、あたしは、こっちのガードがあるから駄目だ」

 良美は、較が封印した吸血鬼化した娘の監視をしていた。

「吸血鬼を相手に独りで戦うのは、慣れているよ」

 雷華の言葉に風太が言う。

「俺もついていく。エアーナにもしもの事があったら兄貴達に申し訳がたたない」

 困った顔をする較に雷華が言う。

「自分の身だけは、ちゃんと守ってね」

 風太が頷き、八刃から渡されている特殊な拳銃を見せて言う。

「これでも八刃と多少は、関わりある人間だから安心しろ」

 こうして雷華と風太が吸血鬼の待つ城に向かった。



 霧が立ち込める城に入りながら雷華が言う。

「こうしていると、昔の事を思い出す。あの頃は、なんで自分が吸血鬼退治なんて危険な事をしないといけないのか納得できなかった」

 それを聞いて風太が言う。

「今は、違うのか?」

 雷華が言う。

「今は、自分が納得して吸血鬼退治に挑める」

 そんな時、雷華達の前に狼男が現れる。

「厄介な連中が現れた」

 そう言いながらも雷華が心光刀を構えて唱える。

『我が心を喰らい、魔を討つ刃を生み出せ、心光刀』

 光の刃が生まれ、狼男達と相対するが、高速で動く狼男達に苦戦する雷華が舌打ちする。

「こいつらは、スピードだけは、あるから面倒なんだよな」

 そんな時、銃撃音が続き、狼男達が倒れていく。

「狼男レベルだったら、この拳銃も十分に通用する」

 風太が自信たっぷりに言うと何処からとも無く声が聞こえる。

『狼男を倒すとは、ヴァンパイアハンターとみた。ならば、我輩が出るしかない』

 声が終わると同時に霧が一部晴れ、蝙蝠が集まっていき、黒い燕尾服を来た吸血鬼が現れた。

 それを見て雷華が眉を顰めた。

「何かおかしいな?」

 それを聞くと吸血鬼が叫ぶ。

『何がおかしいというのだ! 我輩こそ、真の吸血鬼、ドラキュラ伯爵の生まれ変わりだ!』

 ますます眉を顰める雷華。

「お前、それを本気で言っているのか?」

 それに対して吸血鬼が答える。

『当然であろう。我輩は、誇り高き吸血鬼なのだからな』

 風太も違和感に気付き始めた。

「なあ、もしかしてあいつ、吸血鬼じゃないんじゃないか?」

『何を根拠にそんな事を言うのだ!』

 吸血鬼の反論に雷華は、十字架を投擲する。

 見事に十字架があたった吸血鬼が十字の火傷を負いながら言う。

『十字架だけで我輩を倒せると思うな!』

 大きなため息を吐く雷華。

「本当の吸血鬼は、あたしの十字架でダメージを食らうことは、無いぞ」

 それを聞いて愕然とする吸血鬼。

『馬鹿な、十字架は、吸血鬼の弱点の筈だ!』

 雷華が訂正する。

「十字架にこもった強い信仰心が吸血鬼のダメージになるだけ。あたしみたいな信仰心が薄い人間の持った十字架に吸血鬼にダメージを負わす力は、無い」

 怯む吸血鬼を見て風太が言う。

「それじゃあ、あれは、何なんだ?」

 雷華は、不機嫌そうに言う。

「吸血鬼に憧れる者の中には、魔術で吸血鬼に転化する奴が居るんだよ。その特徴は、吸血鬼より吸血鬼っぽいって事」

 悔しげに吸血鬼が竜魔玉を見せながら言う。

『そうだ! 我輩は、この玉の力で吸血鬼になったに過ぎん。しかし、多くの血を吸って真の吸血鬼になってみせる!』

 吸血鬼が念動力を放ってくるが、 雷華は、それをあっさり避けると、一気に間合いを詰める。

「あんたは、勝てない!」

『どうしてそんな事を言えるのだ!』

 雷華が自信たっぷりに答える。

「吸血鬼だって事に拘るあんたには、ヴァンパイアハンターのあたしには、勝てない!」

 そして、光の一刀で竜魔玉を持つ腕を切り落とす。

『それを返せ!』

 縋りつく吸血鬼をニンニクの塊をぶつける。

『止めろ!』

 怯む吸血鬼を雷華が心光刀で切りつけて後退させると、そのまま城内に流れていた水路に落す。

『流れる水の上は、駄目なのだ!』

 完全に動けなくなる吸血鬼を見下ろし言う。

「弱点が解りきった吸血鬼に勝ち目なんてあるわけないだろう」

 こうして、ドラキュラ城に発生した吸血鬼は、退治されたのであった。



 次の目的に向かう為の空港のロビー。

「結局、そいつ何者だったの?」

 優子の質問に雷華が呆れ顔で言う。

「単なるドラキュラマニア。竜魔玉の力だけで吸血鬼になってただけだから、弱点まで忠実に再現していたよ」

 エアーナが不機嫌そうに言う。

「周りの迷惑を考えて欲しいですね」

 風太が頷く中、良美が言う。

「でも、そういうのだったら一度見てみたかったな」

 智代も頷く。

「ある意味、究極のドラキュラのコスプレだよね」

 小較が眉を顰めて言う。

「その言い方、何か嫌です」

 苦笑しながら較が言う。

「とにかく無事に竜魔玉も回収出来たし、次に行くよ」

 次の目的に向かう較達。



 こうして、十一個目の竜魔玉を手に入れた較達が次の竜魔玉の探索に向うのであった。

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