第5話 エアフォン
# エアフォン
*えあふぉん* 【名詞】
## 意味
1. 探索者が持つことを許された、特別な携帯端末だよ、わん!
2. ただの電話じゃないんだわん。キミたちの迷宮探索許可証が内蔵されていて、迷宮へ入るための必須アイテムになっているんだわん。
3. メルリン社製の一般向け「ePhone」を魔素浸透型にカスタムした、探索者のための専用機だよ、わん!
## 解説
エアフォンは、正式には「æPhoneS(Aether Phone for Seeker)」って呼ばれるんだ、わん。ボクたちが住む世界に突如現れた魔素に対応するために、特別にエーテル演算ユニットが搭載されているんだわん!これのおかげで、キミたちのステータスを測定したり、迷宮内での位置情報を管理したり、緊急時には探索者ギルドとの連絡を取ったりできるんだよ、わん。探索者の生命線とも言える、とっても大切な相棒、わん!
---
#探索者 #迷宮探索許可証 #デバイス #魔素
◆ ◇ ◆
「二十三番でお待ちの深西森羅さん、三番の部屋へどうぞ」
待つことしばし、長い赤い髪を後ろにまとめたギルド職員の女性に案内されて小部屋に入る。
ダンジョン発生以降、スキル発現に伴い髪色が変わった者も多い。そのため、ギルド内は特にカラフルな髪色をした人達が多く見られる。ちなみにケモミミが生える等の変化が起きた人もおり、SNS等で話題になっていたが、実際に見たことはない。
小部屋での手続きとなるのは、探索者登録時にはスキルやステータス等の情報も扱われるため個人情報保護の観点かららしい。
狭い部屋の中は小さな机と椅子があるだけのシンプルなものだった。
元々はもっと大きな部屋だったのを無理やり小部屋に仕立て上げたのだろう。
「深西森羅さんは探索者登録でよろしかったですね」
「はい。昨日スキルが発現しました」
向かいに座ったお姉さんが持ってきたカゴから資料を取り出して確認する。
「あ、彼津高生なのね。おめでとう。誕生日に発現するなんて中々優秀じゃない。じゃあ説明はいる?」
資料と俺の制服を見て急にフレンドリーになったお姉さんがエアフォンを箱から取り出して俺の前に置く。
「おぁ、これがエアフォン。あ、エアフォンというか、ePhoneも使った事がないので説明お願いします」
今使用しているスマホよりは一回り大きいかもしれないが、それ以外は普通だ。ePhoneも人気がある機種だが俺が使用しているのは別な機種なので使うのは初めてになる。
「オッケーオッケー、まあ、ePhoneを使った事のある人はいても普通エアフォンは初めてだもんね。まず、探索者の資格確認を兼ねて使用者登録を行います。ということで、指紋認証の要領で画面の中央に指を当ててもらえる? あ、認証完了するまでは指を離さないように注意してね」
電源を入れられたエアフォンは中央に指紋のマークが表示されている。
親指と人差し指で少し迷って結局人差し指を画面へと押し当てた。
ブルっと軽い振動と共に押し当てた指先から画面上に波紋が広がる。
メルリン社のロゴがくるくる回ってエアフォンが起動した。
「おめでとうございます。無事に登録完了です」
「え、これで?」
「はい、エアフォンの使用登録完了が探索者登録も兼ねてますので、登録手続きは完了ですね」
詳しく聞くと指紋登録時に魔力の登録も行われるらしい。
ステータスやスキルの情報はエアフォン内のアプリで確認可能だが個人情報扱いのためギルド職員であっても確認はしないとのことだ。なお、ステータスは推定値の表示でスキルは自分で登録する必要がある。
鑑定のような便利なスキルはなく、探索者の地道なデータ登録を元にした鑑定ソフトがエアフォンにプレインストールされている。
そこらの辞書よりも分厚いエアフォンの説明書を受け取って探索者ギルドを後にした。
探索者登録時には姿を消していたわん太だが、どうやら『ダンジョン辞典』の『エアフォン』の項目を執筆していたらしい。
そして今度はきちんと『æPhoneS』と書かれていた。




