第22話 偽装された祭壇
# 偽装された祭壇
*ぎそうされたさいだん* 【名詞】
## 意味
1. ダンジョン内で、神聖な祭祀に用いられる祭壇のように見せかけられているけど、実際には隠し部屋や秘密の通路を開くための起動装置として機能する構造物なんだわん。それに加えて、供物を備えて特定の操作をすることで、供物の数に応じたスキルオーブを得ることもできる、特別な仕掛けだわんね。
## 解説
偽装された祭壇は、探索者たちの注意を逸らしたり、謎解きの鍵として配置されたりすることが多いわん。ボクたちの調査では、彼津野第三迷宮の三層で見つかった例が有名だわんね。「ゴブリンの宝物庫」にあるこの祭壇は、特定の宝箱を開けた後に触れることで、奥の壁を消し去って隠し部屋へと続く道を開くわん。また、供物を備えてレバーを回すことでスキルオーブを得られる場合もあるわん。供物が祭壇に「気に入られた」場合は、より高レアリティなスキルオーブや、探索者が望むようなスキルオーブが出やすいという未確認情報もあるわんね。その多くは周囲の環境に溶け込むような意匠が凝らされているため、罠探知スキルなどを用いても見破ることが難しい場合があるわん。見た目は古びた石造りだったり、豪華な装飾が施されていたりと様々だけど、いずれもその下に秘められた仕掛けを隠すための偽りの姿なんだわん。
## 類義語
- 起動装置
- 隠し扉
- 秘密の仕掛け
- 供物台
## 追記メモ
- 供物として捧げるアイテムのレア度や種類によって、得られるスキルオーブの質が変わる可能性あり。特に魔石は効果が高いとの報告が多いわん。
- 特定の役職を持つ探索者だと、祭壇の真の機能が視認できたり、供物の「気に入られやすさ」が上がったりするかもしれないわん。
◆ ◇ ◆
「待つにゃーーっ! おとなしくウチのクナイの錆となるにゃ!」
「ちょっと姉さん! 全滅させては駄目ですってば! 宝物庫を探すんですよね?!」
本日は彼津野第三迷宮調査の三日目、第三階層の調査でゴブリンを生かさず殺さず追いかけ回している。
え、二日目の昨日の戦果? 俺達が担当した範囲をくまなく探したが隠し部屋は発見できなかった。
まあ、それもあって不忍先輩が荒れているのだ。
「三階の隠し部屋は『ゴブリンの宝物庫』にあるんだったか。ホントにそんな部屋があるのか?」
『ボクに聞かれても困るわん。ボクは書いてあることがホントかどうかまではわからないんだわん』
二階の隠し部屋は見つからなかったとはいえ『ダンジョン辞典』に記載された内容の信憑性は高いとみている。
「え、消えたにゃ?! にゃっ、にゃにゃーっ! シンラっち、あった、あったにゃーっ!」
「ちょっ、ちょっと姉さん! 確かめたい事があるから宝箱には触らないでくださいね! あ、シンラ君こっちです」
ゴブリンを追いかけていた立夏さんが岩の陰から手を振って呼んでいる。
先行していた不忍先輩の姿がないことから恐らくは岩陰に隠し通路の類があったのだろう。
「どれが正解だと思うにゃ?」
岩陰に隠されるように開いていた穴をくぐるとそこには三つの宝箱が置かれた小部屋があった。
なお、追いかけていたゴブリンは既に先輩が倒したっぽい。
「えーと、真ん中ですかね? 左右の宝箱より少しボロいのが気になります」
『ボクはノーコメントわん』
『うなぁ』
「姉さんもシンラ君も今朝話したこと忘れたんですか? まずは、あの祭壇です。もう、ダンジョン辞典になんて書いてあったか覚えてます?」
―― 「ゴブリンの宝物庫」と呼ばれる部屋の特定の「宝箱」を開けた後、部屋の隅にある「偽装された祭壇」に触れると、奥の壁が消え去って隠し部屋が現れるわん!
「これは、罠、罠ですよ! 『偽装された祭壇』を使用してスキルオーブを取得できるか試すのが先です」
そう、『ダンジョン辞典』の記述を信じるなら宝箱を開ける前に祭壇を使用する必要があるのだ。
「そうだったにゃ。つい、宝箱を前にして忘れるとこだったにゃん。それで、この四角い岩っぽいのが祭壇かにゃ?」
「えぇ、横にレバーっぽいのがありますし、多分これが『偽装された祭壇』で良いと思います」
少し自信なさげな立夏さんだが、他に祭壇らしきものもない。
「で、供物はこの岩、あ、祭壇の上に置けばいいんですかね? けど、ホントにそれを供物にするんですか?」
「わん太っちのお墨付きだし、これでも高級品にゃ」
そう言って先輩がカバンから取り出した栗どら焼きを四つ祭壇の上においた。
『あぁ、ボクのおやつが……』
「何を言ってるにゃ。昨日隠し部屋が見つからなかったから報酬がないのは当然にゃ」
―― ガチャ
先輩が横のレバーを無造作に回した。
「うわっ!」
「にゃ、眩しい!」
一瞬祭壇が強烈な光を放つ。
―― ゴトッ、ガラン、ガラン、ゴトッ
「にゃ、にゃにゃにゃ」
祭壇の正面から転がり落ちてきた四つの手のひら大のボール、恐らくはスキルオーブを先輩が器用に全部受け止めている。
「半信半疑でしたけど、本当にスキルオーブが出ましたね」
「それで、このスキルオーブどうします? 売れば高いんですよね?」
「高いにゃ。けど、ウチらは探索者にゃ。スキルオーブで強化できるなら強化するべきにゃ。特にシンラっちは攻撃スキル持ってないなら尚更にゃ」
「ですけど、ギルドに報告も必要です。というわけで供物を四つ備えたんですけどまさか本当に四つスキルオーブが出るとは思いませんでした」
「というわけで、三つはウチらで一つずつ使うにゃ。何が出ても恨みっこなしにゃ。じゃぁ誰から選ぶにゃ?」
そうして恨みっこなしのジャンケン大会が開催された。




