第23話 スキルオーブ
# スキルオーブ
*スキルオーブ* 【名詞】
## 意味
1. 手のひらに収まるほどの、神秘的な輝きを放つ透明な球体だわん。これを使用することで、使用者自身に内包されたスキルを覚醒させ、習得できるわん。大半のオーブは、使用するまでその内容が秘匿されているわん。しかし、ごく稀に、あらかじめ習得できる スキルが判明しているものや、何らかの法則に基づいてランダムなスキルを与える特殊なオーブも存在するわん。
## 解説
魔物からのドロップや、迷宮の奥深くにある宝箱から発見されることが多いわん。オーブに内包されるスキルのレア度が高ければ高いほど、オーブ自体の出現率も低い傾向にあるわん。使用する際には、わずかな魔力を消費するわん。また、スキルの習得には、個人の魔素適合率や精神状態が影響するとも言われているため、誰もが望むスキルを確実に習得できるわけではないわん。
## 類義語
- スキル珠
- 能力結晶
## 閲覧者コメント
* あのドキドキ感がたまらないんだよな。一か八かの賭けだが、それがまた探索者をやめられない理由の一つだ。 -- 熟練探索者 ヴァン
* 初めて使った時は手が震えたわ……。結局コモンだったけど、それでも嬉しかったのよね。 -- 新人探索者 リーナ
* うむ、良い品だ。特に未鑑定のものは、夢がある。夢には値が付くものだ。 -- 謎の古物商 ゲド
## 追記メモ
- 『迷宮種』が変化したものという説もあるわん。未確認情報だわん。
- 『概念スキル』のオーブは、存在するのかしらわん?見たことないわん。
◆ ◇ ◆
―― コツコツ
螺旋階段を下りる足音だけが静かに響く。
「……なあ、やっぱ引き返さない? どう考えてもこの先に居るのは厄介事だろ」
「シンラっち、探索者は探索するから探索者にゃ。隠し階段を見つけて下りないのは探索者じゃないにゃ」
「大丈夫ですよ、シンラ君。下りる前にギルドに連絡は入れましたし、後追いで別な探索者も来ると思います。それに、この階段は明らかに四層、五層より下に続いています。第六階層の調査は進んでいないみたいですし、私達が未踏破領域一番乗りの可能性が高くなってきました! あ、それとですね……、先程ギルドに連絡を入れた時に聞いたんですけど、第六階層に外があったそうです」
「外?! え、遺跡型じゃなかったってことか?」
「実は野外型だったってことかにゃ」
先程のスキルオーブといい、野外型の第六階層といい、着々とフラグが積み重ねられていく……。
「着いたみたいです。下りてきた高さを考慮してもあの扉の先は第六階層、さあ、未踏破領域の調査へ向かいましょう!」
「にゃ、さあ、シンラっちもレッツゴーにゃ!」
いつになくはしゃいだ風の立夏さんと相変わらずテンションの高い先輩の後に続いて未知への扉を開く。
「……森?」
『にゃぁ』
『森の中わん』
うん、半分ぐらいは予想していた展開だ。
後ろを振り向くと出てきた扉は天へと続く塔の入口だった。
塔の上の方はなぜか霞んでいて見えないが、頭の上には青空が見えた。
「見られてるわね」
「二人、いや、三人居るにゃ」
「へっ、マジ? 俺、全然わからないんだけど……」
気付かないフリをしろと囁かれたが、そもそも、本当に人が居るとは思えない。
―― カッ、カカカッ!
「ꕈꕣꗒ! ꕓꕞꕭꗛꕝꕟꕈꕏ?」
森へと続く道へと踏み出そうとしたところで足元に複数の矢が刺さった。
「えーと、私達は探索者です。|もしや此処はあなた方の私有地でしたか《ꕧꕓꕯꕟ꘩ꖌꕶ꘡ꕧꘅꕊꕲꘞꕷꖌꗔꖊꕟ》?」
立夏さんが俺をかばうように一歩前へでて両手を上げる。
―― スキル『言語理解』を自動発動しました
「探索者? 冒険者の事か? 我々はアウレム王国騎士団第十三部隊だ。こちらも敵意はない。矢を射掛けてすまなかった」
そう言って大木の陰から現れたのは大剣を背負った男性だった。続けて木の上から弓を手にした女性が音もなく地上へ降り立つ。
いずれも見目麗しく、褐色の肌に尖った耳、ファンタジー世界あるあるなエルフ、ダークエルフと呼ばれる姿をしていた。
「アウレム王国騎士団第十三部隊」、そう名乗った彼らは全部で十二名、六名ずつの二パーティ編成で彼らの国、アウレム王国にあるダンジョンを探索していたそうだ。
そして、迷宮再構築と思しき異変に伴い発生した転移魔法陣の罠に巻き込まれ、気付けば部隊全員がこの森にいたらしい。
これが彼らから聞き取った内容である。
そして、彼らが話している言葉はアウレム語と言われるアウレム王国で話されている標準的な言語らしい。
俺達が彼らと会話が出来ているのは「偽装された祭壇」で出てきたスキルオーブのお陰である。
まあ、全員がSSRスキル『言語理解』を覚えた時にはびっくりもしたが、逆を言えば彼らと出会うフラグが立ったと諦めもした。
そんなこんなで俺は今『アウレム王国騎士団様御一行』と書かれた旗を片手に彼津野市内を練り歩いていた。
「日本でのダンジョンの発生はまだ歴史が浅いのですが、最初のダンジョン発生地の一つでもあった此処彼津野市は全国でも探索者人口の多い都市の一つとなっています。そのため、探索者関連施設も多く見られ――」
「ちょっ、ストップ、止まってにゃ。信号が赤の時は道路に出たら駄目にゃ!」
「あっと、すんません。無馬車自体は見たことあるんですが信号とかはなかったもので……」
「あー、あれ何ですか? ちょっと寄って食べてみたいんですけど」
俺が解説をしながら引率している一方で不忍先輩が車道に飛び出しそうになった一人の首根っこを掴んで止めていた。
ちなみに、立夏さんは探索者ギルドの方でこのダークエルフの一団『アウレム王国騎士団第十三部隊』の受け入れ方法や扱いについての会議に通訳も兼ねて参加している。
なお、SSRスキル『言語理解』がほぼ確定していたスキルオーブはギルドに高値で、本当に高値で売れたのでウハウハである。
今現在はギルドからの異世界人、ダークエルフに関しての発表はなく、箝口令が引かれているため、周囲からは人目を引く外国人の集団が観光旅行をしていると見られているようだ。
そのお陰で出歩いていても大きな騒ぎにはなることもなく一行に現代日本の案内を行うことが出来た。
彼らがこうしてゆっくりと街を歩くことができるのも異世界人の発表があるまでだろうと思うと少しばかり同情する。




