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URスキル『万象言海(ダンジョン辞典)』はポンコツかもしれない  作者: 水城みつは


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第2話 アイテム

# アイテム


*アイテム* 【名詞】


## 意味

1. ダンジョン内に存在する、探索者の活動を助けたり、あるいはその身を脅かしたりする様々な物品の総称だわん。


## 解説

ダンジョン内では、倒した魔物の残骸や、隠された宝箱などから様々な「アイテム」が発見されるわん。体力や魔力を回復するポーションのような消耗品から、強大な力を宿した武具、不思議な効果を持つ遺物(レリック)まで、その種類は多岐にわたるわんね。ダンジョンから得られる「アイテム」は、ボクたちの知る世界の一般的な物品とは異なる特殊な性質を持つことが多いわん。特にスキルと同様に、その効果や希少性(レアリティ)によって★1の共通品(コモン)から、ごく稀にしかお目にかかれない★5の超稀品(ウルトラレア)まで分けられているわん。高希少性(レアリティ)の「アイテム」は、探索を有利に進める上で非常に重要な要素となるわんね。


---

## 例文

> 「この回復薬(かいふくやく)は、ダンジョン探索に欠かせないアイテムだわん。」

> *— 『探索者ガイドブック』より*


## 類義語

- 道具

- 物品

- 装備品

- 消費アイテム

- 貴重品


---



 ◆ ◇ ◆



―― URスキル『万象言海』を取得しました。

   このスキルは最初に指定、作成した辞典を閲覧できます。

   作成する辞典を設定してください。

   『 未入力 』残り3515秒……


 中性的なそれでいて機械的な声とともにそのメッセージは授業中の俺の眼の前に突然現れた。

 声を上げずに済んだのは今日が十六歳の誕生日であり、 スキル取得時に天の声と呼ばれる声が聞こえると聞いていたからだった。

 URスキル、世界的にも確認された人数が十人に満たないレア度の表記に一瞬固まるが、カウントダウンされていく数字を見てスッと頭が冷えた。


「先生! お腹が痛いので早退しまーっす」


「なっ、いや、元気だろ! ……って、あ、あぁ、深西ふかにしのやつ、今日が誕生日か……」


 机の上に広げていたあれこれをカバンに詰め、何やら呟く担任と唖然とした顔のクラスメイトを残して教室を飛び出した。


―― 『 未入力 』残り3321秒……


 未だ目の前に表示されているパネルには教室のクラスメイトもすれ違ったおばちゃん達も気づいた様子はない。

 天の声やシステムメッセージと言われる声も他人には聞こえないと言うし、このパネルも同じく俺にしか見えていないのだろう。


「で、この作成する辞典ってのはどういう意味だ?」


 脇目も振らず爆速で家まで戻ってきたおかげで制限時間までは三十分以上残っている。

 

―― 『万象言海』は作成した辞典を閲覧できるスキルです。

   作成後の変更はできません。

   『 未入力 』残り2828秒……


「いや、全然説明になってないし。あー、辞典ということは国語辞典とか英和辞典?」


 他人に見えないところで辞典が開ければテストも楽勝……、いやいや、そんな普通の辞典がURスキルで良いはずがない。

 せめて、百科事典、あ、むしろ何でも分かる辞典ぐらいでないとURスキルとは言えないに違いない。


「『アカシックレコード』、すべてが記録された辞典。これで勝つる」


 未入力とされた部分をクリックすると普通に入力が出来た。スマホかよ。


―― 『アカシックレコード』は参照範囲が広すぎます。

   参照範囲を絞った辞典を作成してください。


 ブッブー、と気の抜けた音と共にアナウンスが流れた。


 何度か試行錯誤を繰り返し、結局のところはこうなった。


―― 『ダンジョン辞典』を作成します。

   よろしいですか?

   【Yes】/ No 


 スキル辞典やモンスター辞典、アイテム辞典も考えたが今後探索者(シーカー)になってダンジョンに潜る事を考えれば『ダンジョン辞典』で網羅できる可能性が高い。

 そして、情報は金になるはずだ。


―― ……『ダンジョン辞典』が作成されました。

   編纂者ナビゲーターを自動選出します……


「は?! ナビゲーターって、いや、そこは自動選出かよ!」



 ◆ ◇ ◆



『うわっ、急に叫ぶとびっくりするわん』


「夢? あれ、あー、MPが切れて気絶したのか」


 体を起こすと手のひらサイズの犬のぬいぐるみが宙に浮いたタブレットに腰掛けてこちらを見ていた。

 この不思議なぬいぐるみが自動選出された編纂者ナビゲーター、『猫乃わん太』だ。

 思わず「猫じゃないのかよ!」とツッコんだが、自称ぬいぐるみ系VTuberな探索者シーカーの概念らしいがよくわからん。


『ボクが注意する前にリンクをクリックするからわん。ページの生成には更にMPを使用するから慎重にするべきだったわん。まあ、おかげで解説も書かれたから良しとするわん』


「今度から気をつける。ん、おかげでってもしかしてMPの込め方でも内容が変わる?」


『変わるわん。後は一日に利用できる回数とかもあるけど、今はMPの方が足りないから気にしなくても良いわん』


 そんなものかと思いながら作成されたアイテムのページを見る。


「なあ、もっと具体的なアイテム名とかはわからないのか?」


 今のところ『鑑定』のようなスキルは発見されておらず、ダンジョン辞典で鑑定に近いことができればそれだけでも利用価値がある。

 辞典作成時にスキル辞典も考えたが自分で使用できないスキルのことを知っても意味がないとやめたのだ。

 

『このページはアイテム全般についての説明だから、具体的なアイテム名の情報までは載ってないわん。ボクの辞典には、まだ具体的なアイテム名は登録されていないことが多いけど、もし「こんなアイテムについて知りたいわん!」っていうのがあれば、ボクが調べて登録することもできるわん!』


「いや、待て。ここに書いてある『探索者ガイドブック』ってなんだ?」

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