第13話 迷宮核
# 迷宮核
*ダンジョンコア* 【名詞】
## 意味
1. ダンジョンの最深部に存在するとされる、黒く輝く球体わん。ダンジョンの全てを司る心臓であり、その力の源だと考えられているんだわん。
## 解説
多くの探索者が、ダンジョンの奥底を目指すのは、この迷宮核の存在があるからなんだわん。迷宮核が破壊されると、そのダンジョンは強制的に形を変え、弱体化することもあるけど、時には以前より危険な姿で生まれ変わることもあるから注意が必要だわん。まだ誰もその存在を確認したことはない、まさに幻の存在なんだわん。
## 類義語
- ダンジョンコア
## 閲覧者コメント
* 壊したら、このダンジョン、どうなるんだろうね?ワクワクするわ! -- 好奇心旺盛なウィザード リズ
* 迷宮核の真の姿が明らかになれば、ダンジョンの謎も解き明かされるはずだ。 -- 研究熱心な考古学者 ユージーン
* 見たことはないが、確かにその存在を感じる。深層に行くたびに、鼓動が聞こえるようだ。 -- 経験豊富な迷宮踏破者 ゴードン
## 追記メモ
- 迷宮核は迷宮種が成長したものという説があるわん。もしそうなら、成長段階によって機能も変化するのかもしれないわん。
- 迷宮主の力が迷宮核に影響を与えるという話も聞くわん。そのあたり、もっと詳しく調べてみたいわん。
◆ ◇ ◆
「ねぇ、シンラくん。私、気づいてしまったんだけど、あっちが本来の入口じゃないかな?」
立夏さんが指差すのはフライングシャークがゆったりと回遊している広間の奥だ。
なお、よくよく観察した結果、広間にはフライングシャークが少なくとも三匹はいることが判明している。
『豪華な扉わん』
「確かに。噂に聞くボス部屋の扉って奴っぽいな。とすると、こっち側の開いている扉は裏口?」
「ええ、そうなってくるとここは十階層の可能性が高いわね。そして、この先には何があるのか。俄然楽しみになってきたわ。それに、最下層であれば脱出用の転移魔法陣がある可能性が高いからサメを倒すよりは先に進んだ方が良いと思うの」
「オッケー、そもそも、俺はこれが初ダンジョンの初心者なのでベテランの方針に従うだけだよ」
「それじゃあ、先へ進みましょうか」
スキップしそうな勢いの立夏さんを追いかけて広間とは反対側へと進む。
モンスターの出ない長い廊下の突きあたり、小部屋の中央にソレはあった。
「……浮いている黒く輝く球体。視覚的にも科学的にもバグったような存在ね。まさか本当に実在していたなんて……」
「迷宮核……、都市伝説じゃなかったんだな」
吸い込まれそうな程に真っ暗で眩しい。
「と、とりあえず、ダンジョンコアについて辞典で調べられるかな? MPに余裕があれば調べてもらえると嬉しいのだけど」
俺と同じく魅入られたようにコアを見つめていた立夏さんがこちらを振り向いて言った。
「……あぁ、そうだな。確かに、こんな時こそ『ダンジョン辞典』か。何か有益な情報が得られれば良いけど」
エアフォンを立夏さんに渡して、俺はスキル『万象言海』によるタブレットを表示する。
このスキルによるタブレットの画面を直接見せられれば簡単なのだが仕方がない。
幸いにも迷宮核に触れられたページがあったので魔力を込めてリンクを作成し、そのままページへと飛んだ。
「『黒く輝く球体わん』……か。あいかわらず知りたいことが書いてあるような書いていないような」
「いや、そんなことはないわ。ダンジョンコアと迷宮再構築の関連性にも言及されているし、表立った記述ではないが迷宮種や迷宮主等の単語も出ているわね。とりあえず、公開される部分については問題なさそうだから公開して他の探索者の意見も募ってもいいかな。しかし、やはり、わん太君は色々知っているのは間違いないんだけど……」
立夏さんは俺のエアフォンを握りしめたまま考え込み始めてしまった。これはしばらく戻ってこないかもしれない。
「しかし、このダンジョンコアって見れば見るほど不思議な存在だな……」
大きさ的には両手で持つぐらいの球形、真っ黒でいて眩しさも感じる。
そもそも、空中に浮いている時点で摩訶不思議なものであり……、いや、実体はないがウチのわんこもふわふわと非常識な存在だった。
このダンジョン時代に常識は捨てた方が良い。
「これ壊すとホントに迷宮再構築が起こるのかな……、ん?」
俺の言葉に黒い球体が一瞬震えたような気がしてコアをじっと見つめる。
見れば見るほど引き込まれるようで無意識にコアへと手が伸びていた。
―― もふっ
「は?」
―― もふっ、ふかっ、もふもふ
うっかり触ってしまったダンジョンコアはもふもふしていた。
想像していたのは固く冷たい触り心地だった。
しかし、柔らかく、暖かく、もふもふ、いや、すべすべしている。
―― 『うなぁーーっ、んなっ? にゃにゃっ?』
黒い塊がもぞもぞと動き、耳が生え、尻尾が出てきた。
薄く光る金色の瞳と目が合う。
「えっ、猫、ぬこ様?」
―― 『なっ! うにゃぁ!』
ぽふっ、と覗き込んでいた俺の額に肉球が置かれる。
―― ■■□■『ぬこ様』と契約しました。
「はぁっ?!」




