第11話 フラグ
# フラグ
*ふらぐ*【名詞】
## 意味
1. 探索者がダンジョン内で特定の行動を起こしたり、特定の条件を満たしたりすることで、その後の出来事が確定したり、大きく変化したりする現象のことわん。ゲームにおける「フラグ」と同様に、イベントの発生条件や物語の分岐点を指すわん。
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> 迷宮の深奥には、人の理解を超えた法則が潜んでいるわん。時にそれは、探索者の僅かな選択や言動に呼応し、まるで運命の糸を紡ぐように未来を決定づけることがあるわん。危険を招く「死亡フラグ」もあれば、新たな道を開く「希望のフラグ」もあるわん。探索者は、時に意図せず、時に意識的に、この「フラグ」を立てながら迷宮を進むわん。
## 閲覧者コメント
* まさか、あの時の俺の一言で、こんなとんでもない魔物に出くわすことになるとは思わんかったわい。あれもフラグだったのか…。 -- ベテラン探索者 鋼のサイモン
* フラグの発生条件、そしてその後の因果関係については、未解明な部分が多いわね。特に、個人の意志がどれほど影響を与えるのかは興味深いわ。 -- 研究者 エレノア・クロムウェル
* 俺もいつか、URのスキルが手に入るフラグを立ててみたいわん! -- 国立彼津野探索者養成高等学校生徒 カズマ
## 追記メモ
- 「フラグ」は、スキルや役職の発現、特定のアイテムの出現、あるいは迷宮の構造変化など、多岐にわたる現象に影響を及ぼすようだわん。
- 意図的に「フラグ」を立てようとする探索者もいるけど、危険が伴う行為だわん。特に「死亡フラグ」は、不用意に口にするだけでも危険だと言われているわん。
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#制約 #シナリオ #役職 #天罰
◆ ◇ ◆
「もしかして、立夏さんってゲームとかしない系?」
どうやらフラグの意味が通じていなかったようだ。
「え、ええ、家の方針でゲームとかとは縁遠くて……。一応アプリの作成とかはするんですけどゲームは遊んだことも作った事もないです」
立秋流剣術道場はダンジョン発生後に実践的な剣術道場として有名になった道場の一つである。
特にお兄さんの 立秋佩刀は探索者としてだけではなく、魔道具研究の一人者としても知られている。
「家の方針もあり、小さい頃から遊びと言えばチャンバラでした。それでもゲーム機を買ってもらったことはあるんです。ですが、あのガジェオタのバカ兄は速攻分解してしまったんです!! 流石に両親にこっぴどく叱られてはいましたが、それからは結局ゲーム機を買ってもらうことも買うこともなく……。現実の方がゲーム世界に近づいてしまったので更に剣術に打ち込むことになったんです」
階段を慎重に下った先の二階層も一階層と同じく石造りの通路が続いていた。
「モンスターの数は増えていそうだけど、それ以外の異常は見当たらないわね」
「立夏さん、その言い方も典型的なフラグの一つです。異常が見当たらないと口に出したが最後、何らかの異常が発生するんです」
「え、ホントに? まだまだ私のフラグへの理解が足りないというのね……」
そんな小芝居をしながらも三階へと降りる階段を目指して一直線に進む。
なお、この異常事態についてはギルドと学校には連絡済みで立夏さんの実力を加味して三階までの様子をみて引き返す事になっている。
「それで、このダンジョンのモンスターは、一階がスライム、二階にツノウサギ、そして三階にはゴブリンだったよな」
「ええ、一階が覚醒者であれば誰でも倒せるスライム、二階では生き物を殺す覚悟、そして、三階で人型のモンスターとの命を懸けた戦闘。三階までクリアして初心者探索者への仲間入りよ」
「だとすると、やっぱりあれは異常事態だよなぁ」
「ええ、魔物氾濫か下の階で何か起きている可能性が高いわね」
俺達の見つめる先、そこにはツノウサギに混じって二階にはいないはずのゴブリンがこちらを見つめていた。
「……どうする?」
「突破もできるとは思うけど、なるべくなら回避して行きたいわね」
彼津野第三迷宮の第一階層、および、第二階層は細い通路で構成された迷路と呼ぶにふさわしい迷宮型となっている。
広く複雑な構造ではあるが、先人達の探索の結果がマップとなって公開されており現在位置さえ把握できれば迷う事は少ない。
俺達は戦闘を回避して三階層へと向かうべく横道へと逸れて走り出した。
「せいっ! だんだんゴブリンの割合が増えてるよな。これって三階から上がってきてるのか?」
いつしか、ゴブリンを後ろから殴り殺す事にも躊躇しなくなるぐらいには遭遇率が上がっていた。
「……こっちね」
次第に数を増し集団となっているゴブリンを避けるように迷路を走る。
「三階層は部屋と通路で構成されてるんだよな」
「ええ、ここよりは簡単になるけどその分部屋での多数との戦闘が増えるわ。それに、一、二階層にはなかった罠も配置されるようになるの」
「罠か。そういえば『彼津野第三迷宮』ページではいやに重力魔法陣が強調されてかかれたけど」
「そうよね、私も不自然さを感じたわ。まあ他のダンジョンではあまり聞かない罠ではあるのだけど……、あ、その先は右に曲がって真っすぐね」
ARグラスにマップを表示させているであろう立夏さんの指示に従い丁字路を右に曲がり……
「おわっ! 行き止まりっ?!」
「きゃっ!」
二人して眼の前に現れたダンジョンの壁にぶつかりそうになる。
―― カチッ
『マスター、足元!』
かすかな音にハッとするも、足元には赤い魔法陣の光、そして、ダンジョンの床が魔法陣ごと抜け落ちた。
「えっ……」
「嘘、罠?!」
気付いた時には頭の上に四角い穴の入口だけが見え、俺達は何故かゆっくりと床ごと落ちていっていた。




