第10話 迷宮再構築
# 迷宮再構築
*ダンジョンリビルド* 【現象】
## 意味
1. 迷宮の構造や性質が大きく変化する現象。内部の地形や魔物の配置、出現する魔物の種類、さらには階層の構成までが再編される。
## 解説
この現象は非常に稀に発生するわんが、その原因は完全には解明されていないんだわん。特定の迷宮で起こりやすいという報告もあるわんね。例えば、彼津野第三迷宮では、他の迷宮よりもこの現象が観測されやすいという話もあるんだわん。迷宮再構築が起こると、探索者はそれまで培ってきた知識や経験が通用しなくなり、新たな環境への適応を迫られることになるわん。時には、未踏破のエリアが出現したり、これまで確認されていなかった強力な魔物が現れることもあるから、注意が必要だわん。また、迷宮討伐によって、意図的に迷宮再構築が引き起こされることもあるわん。
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> 迷宮が、まるで生き物のように呼吸をしているかのような現象だわん。内側から湧き上がる魔力の奔流が、その姿を劇的に変容させる。それは創造であると同時に破壊であり、未知への扉を開く者への新たな試練となる。
## 閲覧者コメント
* あの彼津野第三迷宮が再構築された時は肝を冷やしたぜ。知ってる道が全部変わってて、危うく迷子になるとこだったわ。 -- 経験豊富な探索者 エッジ
* 再構築後の迷宮は、今までとは全く違う攻略法が求められるから、研究者としては興味深いわね。特に魔素の変動パターンは解析のしがいがあるわ。 -- 知的な研究者 アナスタシア
* 再構築された迷宮で、見たことない魔物が出たんだ!すごく強かったけど、新しい素材が手に入ったから結果オーライわん! -- 楽天的な新米冒険者 モモ
## 追記メモ
- 一部のナビゲーターは、迷宮再構築の発生には迷宮管理者の変動が関わっていると囁いているわん。あくまで噂話だけど、もし本当なら、とても興味深い話だわんね。
- 再構築後の迷宮では、これまで発見されていなかった高レアリティの魔石やアイテムが出現する可能性がある、という未確認情報があるわん。情報収集を急ぐべきだわん!
◆ ◇ ◆
―― ピッ!
駅の自動改札機と同じようにエアフォンをタッチしてダンジョンへとつながる建物の中に入った。
『おー、これがダンジョンかわん。ピッで入れるのは現代的わん』
「エアフォンが万能すぎて怖い。これ、落としたりなくしたりしたやばいよな」
「滅多なことで壊れないしGPSで位置の把握は可能よ。もっとも、機種交換とか再発行となるとかなり高額だからみんななくさないように色々してるかな」
そう言って見せてくれた立夏さんのエアフォンは着脱式のネックストラップに繋がっていた。
ちなみにエアフォンの値段は高級スマートフォンより更に一桁上の値段だったが、探索者で稼げるようになればすぐに元が取れるらしい。
「いや、絶対なくさないようにしよう」
最新の注意を払って制服の内ポケットにエアフォンをしまう。実は探索者育成高校の制服は初心者向けのダンジョン程度であれば問題ない強度を持っており、今日のところは二人とも制服で来ている。
「ところでシンラ君は気分が悪くなったり体が重く感じたりはしてない?」
建物の中の大きな下り階段を降りたところで立夏さんにそう聞かれた。
その立夏さんはエアフォンを目の高さほどに掲げてフリフリあちこちに向けている。
「えっ? 全然だいじょうぶだけど、いや、むしろ体は軽い感じがするな。ところでそれは?」
「魔素濃度の確認ね。基本的に魔素濃度が高いほど強いモンスターが出やすいの。そして、魔素適合率が低いと魔素があるダンジョンでは魔力酔いとかで気分を悪くしたりするんだけど、シンラ君はやっぱり魔素適合率が高いんでしょうね」
迷宮型である彼津野第三迷宮はかなり大きな石造りの通路で構成されている、いわゆる昔ながらのゲームのダンジョンっぽい。
普通なら空気の淀みや圧迫感を感じるのだろうがそんなこともなかった。これも魔素適合率と関係があるのだろうか。
―― ポヨン、ポヨン
『マスター、早速モンスターが来たわん』
「シンラ君、まずは、鑑定アプリでモンスターの鑑定からよ」
勇んで手に持った棍棒と共に飛び出そうとしたところを止められる。
「そういや『ダンジョン辞典』の迷宮のとこにモンスターの名前は書かれてなかったな。わん太、サボった?」
『さ、サボってないわん。あの時はまだここのダンジョンの最新の情報がなかっただけわん。それで、あの水饅頭はなんてモンスターわん?』
エアフォンのカメラをポヨポヨとはねている丸い塊に向け撮影する。鑑定アプリはカメラ機能と統合されていた。
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名称:スライム
説明:サッカーボールより少し小さいくらいの不定形のモンスター。
中央に弱点となる黒い球状をした核がある。
アク抜きをすることで食用となる。
❤ 1021105
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「……スライム、うん、何の変哲もないスライムだな。え、食用になるのか」
「ゼラチンとかの代用品になるらしいです。今でこそ世界基準で『スライム』という名前になりましたが、元は『水饅頭』呼びも多かったそうです。さて、鑑定アプリの使用方法も分かったところでサクッと倒しちゃってください」
「おっけー、よっと」
特に攻撃系スキルを持たない俺の一撃でスライムは溶けるように消え、魔石を残した。
モンスターは倒すと魔石を残して消える。また、稀にアイテムを残すこともある謎仕様だが、これはダンジョンを発生させた神様が決めたことだろう。
「全然問題なさそうだね。これなら三階ぐらいまではいけそうだ」
そう言った立夏さんはポヨンポヨンとはねて次々と襲ってくるをスライムをノールックで切り捨てている。
「ちょっとスライムが多すぎじゃないか? いくら雑魚とはいえこうひっきりなしに襲ってくるものなのか?」
「いえ、覚醒者であればスライムの攻撃はダメージにならないとはいえこれは異常ですね。魔物氾濫か迷宮再構築の前兆でなければ良いのですが……」
「ねぇ、立夏さん、俺、そういうのはフラグだと思うんだ」
「えっ、フラグですか? フラグって、あの、状態管理用というのとは何か違う意味ですよね?」
きょとんとする彼女の向かう先には二階へと続く階段が大きく暗い口を開けていた。




