難航する修行
師匠という存在は遥かなる高い壁である。
少なくとも俺には親父の背中を越すのが難しいように、また師匠の背中を追うことすら難しいと感じる。
いや、本当にラノベの主人公たちも修行とかするんだろうけど、修行パートどうやって乗り越えてるの? だって修行って一朝一夕でできないからするんでしょ。
すぐに修行終わるやん。
いや分かるよ。読者さんを飽きさせないようにでしょ。分かるよ、うん。
でもそれでも師匠のことを乗り越えていく先駆者に言いたい。
──そのチート分けてください。
じゃないともう無理だもん。
「出来るわけないっ!」
地面に体を任せるように倒れこむ。
「まだ五時間ぐらいしか経ってないよ?」
「もう五時間なんだよッ!」
思わずつっこむ。いやだって、五時間を〝まだ〟はおかしいだろ。
ブラック企業か!
「まぁでも愚痴をこぼすのも分かるよ。いやぁ、思ってたよりも瞬間的な解放は難しいもんだね」
「あぁ。まさかここまでとは思わなかったよ」
これを師匠はやっていたという話なんだから驚くしかない。
全く、本当に超えられる気がしないんだが。
「でも頑張らなきゃいけないんでしょ」
「そうなんだけどさ」
「ほら、もう一回やってみよう」
ドラの言葉に仕方なしに起き上がると、傷だらけの体に鞭を打つ。
「じゃあ皆頼むよ」
ドラの掛け声に精霊たちが頷く。
──よしっ、やるか。
「さぁ来いッ!!」
「じゃあ開始」
刹那、飛び込んでくるのは雷属性の魔力弾に光属性の魔力弾。
それをほぼ直感的に避けていくと、次いで襲ってくるのはそれ以外の魔力弾だ。
でも、それに意識を奪われると、アレが来る。
「ほら来た……」
魔力弾を避けながら上を見ると、隕石が見えてきた。
ここからがこの修行の難しいところだ。
だから、ここから解放を行っていく。
「<一段階・解放>」
ここでようやく魔力を解放すると、馬鹿でかい隕石を避けるために全速疾走する。
「はぁギリギリッ」
スライディングでなんとか避けると、その巨大な隕石の背中に姿を隠していた魔力弾たちが絶えず襲ってくる。
しかも、隕石のおかわりまで来た。
「魔力弾はなんとかいけるけど、隕石が邪魔くさいな」
いっそのこと<銀滅の拳>で壊したろかと思ったが、既に対策はばっちりなのだ。
何故なら、もう既に目の前で破壊させてみせ、ドラに問答無用で隕石を強化されてしまったから。
「クソッ、間に合わない」
やるしかない。
深呼吸を繰り返し、精神統一を図ると、今回の目標である瞬時に魔力を解放する。
「<瞬間的な解放>」
今回、意識するのは足だ。
瞬間的に制御していた魔力を解放し、一瞬にして足にへと集約させる。
「いっけぇぇぇえええええええッ!!!!!」
──ドゴォォォンッ!!!!!!!!
凄まじい音と共に俺は壁に刺さった……。
「またか……制御が上手く出来てないね」
ドラの講評をもらいながら、のめり込んだ顔面を抜く。
顔面が無事 (?)脱出を果たすと周りには同様に俺の顔面の型が複数個形成されていた。
全て、五時間という時間によって生まれた産物である。
「皆、一回止めて」
ドラの一言により全ての攻撃は止み、安息が訪れる。
「この調子でいけるのかい?」
「成長チートがあれば……」
こればっかりは地道な努力であるということは理解している。
俺が今できていないのは魔力制御だ。
魔力操作で足に魔力を集約。そこまではいいのだが、ファーストの魔力量でセカンドの魔力量が支えられないのである。
いい感じにファーストの魔力量でも耐えられるように感覚をつかもうと試行錯誤しているのだが、思ったより上手くいかない。
「はぁ……」
自然とため息が溢れる。
そんな俺にドラはいいことを思いついた様子で、言ってきた。
「そうだっ! 今から僕と気分転換的にいいところにいかないかい?」
「いいところ……?」
「そうっ! そろそろ君も溜まっているだろ?」
·····ふふっ、まさか精霊の里にあるとは思わなかったよ。
「あるのか? あの場所……というかお店が……」
「もちろんっ!」
はい、勝ち確ッ! もう醜い人生とはオサラバだぜ。
馬鹿にされる日は今日で終わりだひゃっふうっ!
「さぁ行こう。今すぐ行こうそうしよう」
「随分と乗り気だね。まぁいいけど、とりあえず行こうか」
いざ往かん、エデンへッ!!!




