精霊が望むのは
「特異点とは世界の終わりに近づいた際に必ず生まれる異端者。属性の一切を持たない無適性者を指す言葉だよ」
「特異点が無適合者·····?」
「そう。まぁ順番に説明していこうかっ!」
疑問符を浮かべる俺に一つ一つ丁寧に解説していく。
「運命ってさ知ってる? いつ産まれた。いつ結婚するか、いつ死ぬか。『星詠』とはそれらを見ているんだよ。さて、そんな運命だけどそれは世界すらも例外ではない」
世界も運命がある。誕生、そして終わりが存在している。
「世界の終わり·····それをドラは知っているのか?」
「もちろんっ!」
伊達に長く生きていないな。
俺と師匠しか知らないと思っていたが、ドラもまた知っている人だとは思わなかった。
「運命ってのはね。絶対遂行されるものなんだ。未来は変えられないっていうだろ? でもさ、いるんだよ。それを変えられる異端者が──そうっ! 特異点がっ!!」
「わ、分かったから落ち着けって」
凄まじい勢いで力説してくるドラをなだめる。
「ごめんごめん。まぁそういう事だよ。特異点とは運命に囚われない唯一の存在。ルーロの周りで言えばそうだなぁ·····カグヤの先祖のオウギが特異点だったね」
オウギだと·····っ!?
「『勇者伝説』で勇者パーティに在籍していたとされるその腕前から『剣聖』と称えられたあのっ!?」
「そうだよ。特異点について調べ回っていた時にオウギと出会って、その時に『星詠』を授けたんだ」
それが『星詠の里』のルーツというわけか。
「ちなみに『星喰』も授けたのは僕だよ」
「マジかよ·····」
「うん。君に魔力操作があるようにオウギには剣の才があった。それを存分に活かしてもらおうと僕の自慢の一品を授けたというわけさ。君の腰にあった時はビックリしたよ」
全部繋がってたんだな。
「──それにしても随分と肩入れをしたんだな」
「彼には頑張って貰いたかったからね」
「頑張って貰いたかった、ね」
「だってさオウギがいなければ千年前に世界は終わりを告げていたさ」
「はっ!?」
「特異点が唯一、運命に逆らうことが出来る異端者だ。さっき説明したでしょ?」
でも語り告られているのは『勇者伝説』だ。
「魔王を倒したのだって·····」
「勇者。とでもいいたいのかい?」
「──っ!? 違うのか·····?」
「いやあってんだけどさ」
「あってのかいっ!」
そこは「違う」っていって更に驚かせるところだろうがっ!
「世界の運命を変えられるんだったら、他の人の運命だって変えられるさ。オウギが直接的に世界を救えなくても、オウギに出会った全ての人たちは魔王討伐に繋がっていた。そして結果的に勇者という存在が倒した。そう、特異点とは可能性の塊なんだよ」
「可能性の塊か」
「君の思い、願いが世界を変えるほどの力を秘めている。でも勘違いしないでね。無適性者が全員運命を変えられるんじゃない。これは持論だけど、属性がないという過酷な状況下の中で諦めずに努力したからこそ変えれるんだ」
「·····そっか。なんとなくわかった気がするよ」
特異点について。そして俺が背負ってるものを再確認出来た。
·····というかさ。普通に思ったんだけど──
「師匠もまた特異点って事なんじゃね?」
無適性者だし、師匠のあの力は生半可なものじゃ手に入らない域である。
運命すら変えてしまうほどの素晴らしい人だと思う。
「エリドね。彼は特異点だけどそうじゃないね」
「なんだそれ」
中途半端な回答だな。
「エリドは異質なんだよ。この世界の人間じゃない。特異中の特異。イレギュラーもいいところさ」
確かに·····地球っていう場所から来たって言ってたし。
偶然、特異点になってしまったのか? でもそんなことって有り得るのか?
「でも、確実なのはエリドも世界を救える運命に抗える存在だと言うことだよ」
「·····そうか」
師匠がなぜ特異点なのかは置いといて、戦えない師匠の代わりに頑張らないといけないな。
「うんうん。いいね。その目付き。覚悟に満ち溢れた目だ。·····でも決意の裏に隠れた迷いだけは晴れてはいないようだね」
迷いか·····。
前も指摘されたが、実の所解消するのは簡単である。
だが、簡単であるがゆえに難しい。
色々な意味で怖いんだと思う。
「まだ自分の中で自信がない。そんな状態じゃあ迷いなんて晴れそうにない。だからこそ、強くなりたい。みんなを守れるんだって胸を張って言えるようにならなくちゃ」
「·····そうか」
ドラは笑みを浮かべる。
「ならば最大限のサポートをしよう。精霊が望むものを君たちが見せてくれ」
精霊が望むもの。
確か前も指摘された。
名のある成功者に共通する〝輝かしい未来〟ってのがそうだと思うんだが──
「ドラたちが、精霊が望んでいるものって一体なんなんだ?」
「うふふっ。僕たちが望むものは人間だよ」
「えっ、こわ·····っ!」
「アハッ。ルーロが考えているような猟奇的な考えじゃないよ。人間は面白いからね。もっと知りたいんだ」
人間を知りたい·····だと?
「だって考えても見てくれよ。運命が宿命付けられているこの世界で千差万別の未来を持つ人間。加えて特異点の存在。例え運命が縛っていても何があるか分からない面白さ。それを見るのは感じられるのはとても嬉しいんだ」
笑いながら両手を広げて、ドラは言う。
「だから僕たちは契約の名の元手を指し伸ばそう。その先に待ち受ける未来を見るために」
ドラは俺に向かって手をさし伸ばした。
「さぁルーロの番だよ。特異点で運命に抗えるイレギュラーの存在よ。更に遥か高みへ登り、世界を救う様を見せてくれ」
「あぁ任せろ」
ドラの手を握り、俺はそう誓った。




