精霊王・ユグドラシル
この精霊界を創り出した世界樹とも言われる精霊王・ユグドラシル。
そのふもとには集落が出来ており、ここが精霊たちが住む場所であった。
「『──』様っ! お帰りなさいっ。その人が特異点ですか!?」
「そうだ。これからユグドラシルの旦那のとこへ行くんだ」
「そうですかっ! ではこの辺で」
どうやら本当にサラマンダーという存在は複数存在するようで、サラマンダーに限らずウィルやシェイドといった五大精霊が仲良く暮らしていた。
しかし、その容姿は様々で人間に近しい精霊もいれば、ドラゴンや妖精のような人外の容姿を持つ者もいる。
「今の聞き取れないのが真名なのか?」
「そうだ。精霊にしか発することが出来ない名前であるがゆえに人間で理解出来るのは契約者のみってわけだ」
サラマンダーと会話を弾ませながら、歩き続けるとユグドラシルのふもとにまで辿り着いた。
「ユグドラシルの旦那っ! 開けてくれ」
サラマンダーがそう呼びかけると塞がれていた木の肌が開き始める。
なんかすげぇファンタジーっぽい。
「何をボケっとしてんだ? 早く入るぞ」
ユグドラシルに見入ってしまった。
共に入ると、中は空洞になっている。
「試練終わった·····?」
中ではクナイたちが待っていた。
「あぁ。悪い待たせたか?」
「んーん。大丈夫。それよりもそれ·····」
サラマンダーに肩を貸してもらっていることを指摘するクナイに苦い顔を浮かべながら、訳を話すと驚いたような顔をしながら頭を撫でてきた。
「頑張った。凄い」
「そ、そうか?」
なんか恥ずかしくなってきたな。
クナイも恥ずかしかったのか徐々に頬を赤らめて遂には黙ってしまった。
なんとも言えない雰囲気が漂う中、その中を割って入ってくるサクヤ。
「はいはい。治癒魔法を施しますよぉー」
心なしか少し機嫌が悪いようで頬を膨らませていた。
「全く無茶はするし、勝手にいちゃつき始めるし。だからルーロ様はダメなんですよ」
「唐突なダメだしっ!!」
「ほら、手を出して」
言われた通りに手を出すと柔らかい感触が手のひらを包み込む。
「──ッ!」
突然のことで息を呑むが治癒のためであると理解し、はやる鼓動を落ち着かせる。
「すっごいドキドキしてますね·····」
「う、うるさいな」
どんだけ頑張っても難しいだろ。
何せ、そういう経験が少ないんだからっ!
「サクヤ·····手で触れる必要あるのかしら?」
そんなドキドキした空気をぶち壊すようにレーデの棘のある言葉が刺さってきた。
「(ギクッ)」
分かりやすく狼狽えるサクヤにレーデのジト目。
降参したように分かりましたと両手を上げ、サクヤは魔力を高める。
「融合魔法──『夜桜』」
これが婆さんのところで修行した時に得た新しい魔法か。
珍しい治癒魔法。パーティに一人はいて欲しい存在だな。
闇属性が夜を作り出し、世界樹・ユグドラシルに負けず劣らずの立派な木から淡い桃色の花びらが舞い落ちる。
それは俺の傷ついた体を癒していく。
「ありがとうなサクヤ」
「いえお礼なんていいですよ」
試しに肩を回してみると楽になっていた。
サクヤは謙遜しているみたいだが、本当に有難い。
そんな俺をレーデとカグヤは何故か訝しげに見つめてくる。
「な、なんだよ·····」
「随分嬉しそうでござるねっ!」
「そ、そりゃあ体が治ったら·····」
「ふーん? 私が見たところサクヤに手を握られて嬉しいのかと思ったわ」
「(ギクッ)」
レーデの言葉が的確に俺の心に刺さった。
そりゃあ嬉しいだろ? 数える程しか女の子の肌に触れたことがないんだからっ!
そんな俺に更に訝しげに見つめてくるが、しかし諦めたようにため息を吐いて詰め寄ってきた。
「今度一緒に出かけなさいよねっ!」
「お、おう·····分かった」
強引にレーデが約束を結んできて、カグヤはと言うと──
「どうせ、どうせ年上なんて·····」
なんか拗ねていた。
多分、俺が悪いのだろう。なんて声をかけていいのか分からないが·····
「お、俺は年上もいいと思うぞ」
「──そうでござるかっ!?」
「お、おう·····?」
「ぐふふふっ。そうでござるかぁ、年上も·····うふふふっ」
ちゃんとしていたら凛としている綺麗な女性なのにだらしなく口元を緩めて本当に残念な人であるが、それも一つの魅力なのだろうと思う。
まぁさすがによだれはしまって欲しいがな。
「おっと本来の目的を忘れるところだった」
精霊王からの試練を無事クリアしたんだから、ユグドラシルに会いに行かなくては。
「ちょっとユグドラシルに会ってくる。お前らも来るか?」
「いや。私たちは先に会ったわ。ユグドラシル様はルーロに話があるみたいだから、私たちは待ってる。きっと正体を見て驚くわよ」
レーデの言葉が気になるものの、とりあえず俺はサラマンダーに案内されてユグドラシルの元へ向かった。
案内された先はユグドラシルの内部に設置された階段を登った場所。
つまり、世界樹・ユグドラシルの最上部である。
そこに案内された俺は言葉を失っていた。
「··········うん。うすうす思っていたけどまさか本当にお前が精霊王だったとは」
思えば説明していない星喰のことを知っていたり、カグヤの目が星詠だって知っていたりとフラグは沢山あった。
青い髪に青い瞳を持つ少年。
「やっほぉ。ドラ、またの名をユグドラシル。僕が精霊王でしたぁ」
ドラは悪戯の成功したような無邪気な笑みを浮かべる。
「どう? 僕が精霊王だって驚いた?」
「伏線はあったし、まぁ少しは驚いたが·····精霊王の威厳もないな」
「ハハッ。よく言われるよ。あの時の喋り方って疲れるからね。こんな崩れたような口調が楽なのさ」
精霊王も精霊王で大変なのだろう。
「さてと。試練、どうだった?」
「余裕っていいたいんだが、そうはいかなかったな」
「フフっ。そう思ってくれたんだったら何よりだ。前回はあまりにもあっさりだったからね」
本当に師匠は速攻で終わらしたようだ。
「──というか、なんで試練を用意したんだ?」
「あー、それはね。ルーロが特異点として相応しいか、それを見させてもらったんだ」
「特異点·····?」
サラマンダーも言っていた単語だが。
「特異点ってなんなんだ?」
「フフっ。これから話すよ。特異点と呼ばれる属性に一切の適性をみせない──無適性者のことを」
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