迷い
ドラを連れて、パングに戻ってきた。
もう時間も遅く、夜になってきたので『極楽湯』に居る。
「じゃあ私たちはお風呂に行ってるわね」
「では、拙者はルーロ殿と──」
「カグヤ連行」
クナイの言葉に、カグヤはえっ? っと振り返る。
「うふふっ、邪魔をされてなかった事のようになってますが、私たちの目は誤魔化せませんよ?」
「·····ちょっと何を言ってるのか」
「ギルティ」
クナイの一言により、サクヤとレーデががっしりとホールドする。
「さぁ、仲良くお喋りしましょうね」
「そういうことだからルーロはドラと仲良く待ってなさい」
「ご、誤解でござるっ!?」
「はいはい、話はお風呂で聞きますから」
カグヤが助けを求めるかのように目を向けるが──
「ルーロは何もしないで」
「あっ、はい」
すまん。何も出来なかった。
「そんなぁぁああっ!」
そんなカグヤの叫び声が極楽湯中に響き渡ったのだった。
カグヤに合掌しつつ、俺は一息つく。
さてと──
「まだいんのかよっ!」
「あれれ? 僕がいるとダメなのかい?」
しれっと溶け込んでいる事に驚きを隠せない。
「それよりもルーロはモテモテだね。あの子たちから」
「何言ってんだお前」
「··········ん?」
俺の言葉にドラは疑問符を浮かべるが。
「あー、君はそういう人なんだね。はいはい」
「な、なんだよ·····?」
「ルーロのそれを直さないことには彼女たちに未来は無さそうだね。全く可哀想だ」
突然なんだよ、コイツ。
つか、この話をしたいんじゃないんだ。
「もう無駄話はいいから、何が目的なんだ?」
「·····なんの事かな」
「見た目が子供だから警戒は薄かったけど、見てみたら魔力量も多いし考えればおかしいな話なんだよ」
「··········」
ドラは黙りだした。
数分の沈黙の末、ようやく口を開く。
「ごめん。僕はショタジジイってやつなのさ」
「そういうことじゃねぇよ」
確かに正体について疑問を持っていたが、予想していた解答ではなかった。
「じゃあ何を知りたいの?」
「ショタジジイじゃなくて、お前の正体が知りたいんだ。ショタジジイって明らかにキャラクターとして濃すぎるだろっ!?」
「んー、今は謎の少年の方が面白そうだから言わない」
話してると疲れてくるな。
「じゃあさ。次は僕からの質問。ルーロたちはここまで何しにきたの?」
とりあえずは無害だと信じて、話してみる方がいいか。
というか、頭を使って話すとドラの場合は物凄く疲れるし。
「精霊に会いに来たんだよ」
「へぇ·····?」
ドラは面白そうに顔をニヤけた。
「精霊は僕も知ってるよ。でもあれは伝説の生き物でしょ? そんなの探したって時間の無駄だと思うけどなぁ」
「実際に会ったっていう人にも聞いたし、何より会いに行くための道具も揃ってるからな」
「·····ふーん。道具ってその刀?」
「そうだ」
相槌をうちながら、ドラは言った。
「それなら精霊に会えそうだね。でもさ、そこまでして何で精霊に会いたいの?」
「俺たちは単純に弱い。だから、力を欲しくて協力を仰ぎに来た」
「ふむふむ。じゃあ精霊に出来ることも考えなきゃね」
「精霊に出来ること·····か」
俺としたことがそんなことも考えてなかったのか。
一方的に願いを言うだけじゃなくて、双方にメリットを考えなきゃな。
「でも精霊が望んでいることか·····」
「実際の所は分からなくても、ある程度の事は覚悟しないとダメだよ」
子供──正確的にはショタジジイだが、第三者に言われるまで気づかなかった事に少しばかり悲観するが、切り替えて精霊の立場になって考えてみる。
「精霊ってさ。何なんだろうな」
「それを僕に言う? 子供だから分からないけど?」
「子供に見せかけた年長者だろ? まぁ知らなくて当然だと思うけどな。精霊って歴史上でも稀にしか登場しないし、歴史に名のある──ッ!」
歴史に名のある冒険者又は成功者は精霊の協力を得られた。
つまりは彼らには精霊の望むものがあったってことか。
「何かを掴んだ顔をしてるね」
「あぁ、望みが何なのかは分からないが、共通することなら見つけた」
「うふふっ。君の頭の回転の速さは素晴らしいよ」
あっそうだとドラは手を叩く。
「そんな君に未来を占ってあげるよ」
「未来を占う? カグヤの星詠みたいなことか?」
「いや、未来そのものを見るんじゃない。未来に起こりうる可能性を見るのが占いだよ」
ふーん。まぁでも知らなくていいか。
「占いはまた今度お願いするよ。未来ってのは何があるか分からないからこそ面白いんだろ? 終わりが来るその瞬間まで俺は楽しむとするさ」
「ルーロ。君は面白いね。なら助言だけでもしてあげよう」
助言、ね。
「君の目には少しばかり迷いが見える。その迷いが後々、大きな後悔を生まないことを祈るよ」
「··········迷い」
復唱してしまうほどにその言葉は俺の胸の奥にストンっと落ちた。
必ず起こりうる未来をせめて引き伸ばすために俺がいる。
それに対して迷いがあるとするならば、あれだけだろう。
「·····分かった。その助言は有難く頂戴する」
「それは何よりだね」
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