星詠
「では、今から尋問を始めます」
「はい」
『極楽湯』で案内された個室で、俺はいわゆるゲンドウポーズで座る。
「では、名前を」
「拙者はカグヤ。『星詠』のカグヤと申す者でござる」
カグヤは姿勢正しく、正座であった。
その凛とした姿は素晴らしいが──
「む、無理しなくてもいいぞ?」
「いや、拙者は正座で·····っ!」
めっちゃ表情筋がピクピクしているし、足も震えている。
なんていうか残念な人である。
試しに足をチョンと触ると。
「ひゃあっ!」
「す、すまん。本当に崩しても大丈夫だからな」
嬌声を発し、恨めしげに睨んでくるカグヤに謝りながら、再度ゲンドウポーズを取り尋問を続ける。
「で、では尋ねます。辻斬りを何故追っているのですか?」
「せ、拙者は遥か東の生まれ。故郷を滅ぼした張本人こそが、辻斬りその人であるゆえ」
まさかここからシリアスに転じさせるなんて。
「ちなみに『星詠』というのは?」
「拙者の継承した力でござる。星とはその人の運命を司るものでござる。よく、そういう星の元に生まれたとか言うでござろう? それを詠む事ができるのでござる」
まぁ嘘をついている気配もないし、とりあえず信じてみるとしよう。
だが、念の為クナイたちにも確認するか。
カグヤには席を外してもらって、俺たちで会議を始める。
「どうだ? 俺は別に信じてもいいんだが」
「「「··········」」」
俺の声に誰も答えることなく、皆ジト目で俺を見続ける。
「あれ? おーい、クナイ?」
呼びかけてもダメだ。
すると、三人で急に集まってコソコソと話し始める。
「あれ危険ですよね?」
「ん、このパターンは100%ルーロに·····」
「そうね。これ以上増えると·····」
·····俺、はぶかれてるんですけど。
「これ以上ルーロ様に女性が近づくと」
「ん。とりあえず暫くは様子を見る」
「そうね、まだ断定している訳ではないし。第一、あんな馬鹿に惚れるなんて万に一つもないからね」
悪口が聞こえてきた気がするが、気にしない。主にレーデが俺の心に刺さる強烈な言葉を発してた気がするが、気にしないからっ!
「私たちの見解は様子見です」
「·····そうか」
俺の精神的HPが瀕死を告げてるが、早速カグヤを部屋に戻す。
「とりあえず様子見で俺たちのパーティに臨時的に入ってくれ」
「分かったでござる」
これなら、仮に辻斬りがカグヤであっても俺たちが見張っているため実行に移すことは不可能なはずだ。
「っと、俺たちの紹介がまだだったか」
「いや、拙者の力を説明するのに丁度いいでござる。星を詠んで、名前を当てるでござる」
ここで俺たちの信用を得ようという訳か。
狙っているのか分からないが、『星詠』を理解するのにはもってこいだな。
「では順番に──」
カグヤの黒い瞳に幾何学模様が浮かび上がる。
「その黒い髪をしている少女がクナイ、赤い髪の少女がレーデ、金髪の少女がサクヤでござろう?」
「·····当たってるわね」
そしてカグヤは俺を見る。
「··········ルーロで合ってるでござるか?」
「あぁ、当たってるけど」
微妙な間隔があったが、何かあったのだろうか?
するとカグヤはクナイたちに聞こえないように接近し、囁く。
「ルーロ殿の星の先は暗闇。それはつまり道が見えないことでござる。いつ死んでもおかしくない。心当たりはないでござるか?」
「·····」
思いつく節はあるが、大丈夫だ。
ここで吐露しても不安を与えるだけで、何も生まない。
確定している未来を今更どうこうは出来ないのだ。
だから、せめてその延命処置を施すのが俺であり、これは誰にも出来ないことである。
「いや心当たりはないな」
「·····そうでござるか」
変に言及するとこなく、カグヤは俺の元から去る。
「だがこれで拙者の『星詠』を信じてくれたであろう。更に力を使えばその者の未来をも見れるが、それは禁止されているゆえ」
「いや充分だ。『星詠』としての力、認めるよ」
ここまで言い当てられたらさすがに信じるしかないだろう。
「·····それよりも大丈夫か?」
「な、なんでござろう?」
「··········足」
「(ビクッ)」
分かりやすく狼狽えるカグヤ。
恐らく先程の正座で足が痺れているのだろう。さっき俺に近づいてきた時もおぼつかない感じだった。
シリアスな雰囲気も相まって、クールな感じだったのに一気に残念に変わる。
そんなポンコツ武士が臨時ではあるが、新たにパーティにへと加わったのだった。
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