タイミング良くね
至る所から水蒸気が吹き出し、他の場所より気温が高い街。それが温泉の街 パングだ。
王都や帝都とは建物の造りが全く違う。どこか和を感じさせるような雰囲気が漂う。
「モン○ターハ○ターのユクモ村を思い出しますね」
「確かに似てるな」
サクヤの適切な例えに笑いながら、俺たちは冒険者ギルドパング支部に向かった。
冒険者というのは街を守る仕事でもあるため、冒険者ギルドに連なるサービスをある程度受けれる。
そのサービスの内容は冒険者ランクによって異なるため、故に高ければ高いほど上等なサービスを受けれる。
慣れない街についたら、冒険者ギルドに向かうというのは常識である。
そんなこんなで冒険者ギルドパング支部に着いた。
ちなみにこんなに早く見つかるのは、外装が他の建物よりも目立つからである。そういう造りで設定されており、色んな人に目立ち、急用のクエストを申請したり出来るようにとなっている。
「パングの地図とか貰えるか?」
「かしこまりました。パングは初めてでしょうか?」
「そうだ」
「でしたら──」
受付嬢は、棚から街のマップを取り出す。
「これが地図です。初めてとのことでしたので、宿はこちらを使用する事をオススメします」
指された所は『極楽湯』という場所だ。
「温泉もそうですが、出される食事も美味しくて評判です」
「それはありがたい」
オススメを聞いたところで、ギルドを出ようとすると受付嬢が焦りながら言った。
「あと辻斬りにご注意下さい」
「辻斬り?」
「はい。最近、武士と名乗る輩が夜中に通行人を切りつけるということが流行っております」
武士、ね。
「分かった。肝に命じておくよ」
「はい、では良い観光を」
そして別れを告げ、『極楽湯』に向かっていく最中。それは起こった。
「きゃぁぁああっ! 武士よっ!」
「·····タイミング良くね」
まだ夜ではないが、とりあえず悲鳴が起こったところに向かうと笠を被った袴の女性があたふたしていた。
「せ、拙者は──っ」
「この、俺の弟をよくもっ!」
「僕の彼女もやられたんだ」
「私は娘をっ!」
町人に囲まれて、困っている武士。
「あれ、どうする?」
「あの人からはそんな感じはしませんが」
「ん、でも·····相当な手練」
それは分かる。
女性とは思えない程に細身であるが鍛え上げられた筋肉に袴からチラつく傷跡。相当な修練をつんだのだろう。
「この辻斬り、殺してやるっ!」
被害者である一人が魔法を放とうとしたところで、俺は魔力を奪った。
「おい、急にどうした!?」
「ま、まさか辻斬りがっ!」
「違う。俺だ」
人混みの中に紛れて、武士の近くに行く。
「街中での魔法は危険だ。だから、少し眠ってもらった」
「きゅ、急に出てなにするのよっ!」
「じゃあその魔法がもし誰かに当たって、死んだ場合。お前らも辻斬りと変わらない存在になるんだぞ?」
「──っ!」
こんな偉そうなこと言ってるが、数週間前にクリクソンに怒られているがな。
さて、ここでようやく武士を近くでみれる。
「ふーん。分かった」
遠くからでは笠で見れなかった顔がよく見える。
黒髪をポニーテールでまとめた女性。
まとっている魔力もクナイには劣るもの流石の純度を誇る。
サクヤが言ってたとおり、コイツからは人殺しの感じがしない。
「ここは俺に任せてくれないか? コイツが辻斬りかどうかは俺が確かめる」
「ど、どうやってだよっ!」
「俺はこれでも冒険者でね」
冒険者カードを見せると、町人は目を見開く。
「え、A級だと!? こんな小僧が·····」
「これで俺が強いということが分かったろ? それに冒険者としての信頼もある。だから俺に任せてくれ」
「·····分かった」
町人は渋々といった様子だが、引き下がってくれた。
「ありがとうな」
「だが、言っておくぞ。辻斬りは最悪の存在だ。最近で被害が多くなってきている。死んだものや怪我を負ったもの色々あるが、許せねぇ存在だ」
「分かった」
町人が去っていく中、俺は再度武士に目を向けた。
「──と、そういうことなんだが、お前辻斬りか?」
「拙者ではござらん。それに、拙者もその辻斬りを追いかけてこの街に来た次第でござる」
だからといって同じ服装で来たら、そりゃあ間違えられるわ。
キリッとしていてクールなイメージがあるが、意外とポンコツなのかもしれない。
さてと、この武士さんから話も聞かないと。
だがここで事情を聞くと、町人に変な誤解を与えてしまうかもしれないし、悪影響があるかもしれない。
とりあえず『極楽湯』に向かって、そこで事情を伺うとしよう。
下の✩✩✩✩✩から評価を。
ブクマ登録をして下さると嬉しいです。




