あれからとこれから
さて、クナイの件から三週間後。俺たちは王国に帰っていた。
望月家が『魔王の意思』と繋がっていることはイッセイからの情報で確実。その重要参考人として望月家現当主シュウラは王国が逮捕した。
まだ現時点で帝国が繋がっていないとは限らない。万が一という事を考えて、王国が逮捕した形になったんだが──
「そんな王国がアイツを逃がしちゃ駄目だろ」
「·····済まない」
俺とクナイとサクヤ、レーデは今朝の新聞を見てクリクソンの元へ訪れた。
というのも大々的に見出しにされている『元勇者候補、ギル脱獄』は見て見ぬふりが出来ない。
「騎士団は何してたんだ?」
「今調査中だが、魔法の痕跡が一切感知出来ないことから何かしらの摩訶不思議な術によって逃げた、と考えるしかない」
不意に魔王因子術式が頭に浮かぶ。
そんな俺を他所に、レーデは驚きにまみれた声でクリクソンに質問していた。
「そもそもギルに魔法は使えないわ。だからその摩訶不思議な術の説が濃厚だけど、魔法以外にそんな芸当が出来るものなんてあるのかしら?」
「いや、俺にもさっぱりだ。王国の罪で王城の地下でも似たような事があったと報告があった。ルーロ、なんか知ってるんじゃないか?」
皆して俺を見る。
観念して俺は素直に言った。
「多分、魔王因子術式。アイツらが言うには魔術の事だろうね」
「·····魔王因子術式、か。それはどう言ったものなんだ?」
「俺も詳しく知らないが、魔法の上位互換と言っていた。だが間違いなく言えるのは魔術は俺たちにとって強大な敵になる」
正直なところ、俺にも知らないことが多すぎる。俺が知ってる情報は、魔力操作の極致とそれに関するもののみ。
だが、ナラミは魔術で《破滅》の器を作り上げた。『魔王の意思』と魔力操作の極致は確かな関係性がある。
「こんな事なら師匠にもっと聞いとくんだった」
「エリドは何かしらの情報を持ってるのか?」
「多分。確証はない。だけど、師匠はまだ隠している感じがした。その時の俺はそんなに言及しなかったが、俺の仲間が巻き込まれるんだったら話は別だ。一刻も早く師匠に聞きたいところだが──」
問題は何処に師匠がいるかだ。
連絡をしても繋がらないだろうし、全くどこで余生を楽しんでいるの事やら。
「·····分かった。エリドは俺が何とかしよう」
「ありがとう」
じゃあ俺たちはどうしようか。
冒険者ギルドを出たところで、俺は迷っていた。
「ルーロ様は何を迷ってるのですか?」
「あー、うん。『魔王の意思』が作り出したあの気味の悪い化け物覚えてるか?」
「あの·····化け物の事ですか」
俺たちが言っているのは《破滅》の事だ。まだ器の状態だったから、勝てたものの。正直、今の俺ではファイナルを使わないと倒せない。
だが、サード以降は代償がある。犠牲になるのは俺だけでもいいが、《破滅》にファイナルを使ってる程度じゃあそれ以外の三体の化け物を倒すことは出来ない。
「さて、どうしようか·····これ以上強くなるためには魔力に詳しい人が居ないと駄目なんだが·····」
「そうね。属性に詳しいのだったら、すぐ思いつくけど、魔力は分からないわ」
「属性に詳しいって?」
「精霊よ。ほら、前に私がサラマンダーを顕現させたでしょ? それを思い出して──」
「それだっ!」
レーデの言葉に俺はパチンっと指を鳴らす。
俺は適性属性を持ってないから頭になかったが、そういうことなら確かに精霊は魔法のスペシャリストだ。
「でも、精霊は未知の生き物。その生息地も不明、生態も不明。何もかも分からないよ?」
「そうなんだよなぁ」
クナイの指摘はもっともだ。
こればっかしは国立の大図書館に行っても分からない。
歴史では名のある冒険者又は成功者の影には精霊がいるらしいが、そんな人なんて──
「精霊? あー、確かに知ってるわね」
「たしか前に行ったところだよな。エリドが精霊王に詳しく聞いてたのオレは見てたけど」
やっぱ、すげぇんだなって。
名のある冒険者、しかも龍殺しを成功している伝説のパーティ。エルサたちならなんか知ってるのかとダメ元で聞けば、まさか知ってるとは。
このまま精霊の居場所まで分かるといいんだが──
「精霊ってどこにいるんすか?」
「あー、あそこは·····」
エルサの反応は微妙だった。
そんなエルサに代わり、セリカが答える。
「精霊に会えたのは正直たまたまの偶然だ。しかもハッキリとここであると言えるものがない」
「どういう事だ?」
「精霊は精霊界という場所に住んでいるが、そこまで行くのには·····いや、これはお前らが現地に行って実際に経験しな。ヒントは東だ」
セリカのヒントだけでは全く見当もつかない。
「東ってすげぇ広い範囲だぞ? それをくまなく探しすってどんだけ時間が──」
と、二人の顔を見ればセリカの言葉の真意が伝わった。
「それをするのが冒険ってことか?」
「その通りっ!」
確かに答えだけ聞くってのはつまらないものだ。そこに辿り着くために苦労をし、やっと見つけた時に得られる達成感が冒険者の醍醐味。
「それに東と言えば、アレがあるな」
「そう、念願の米がありますっ!」
俺とサクヤのテンションは上がる。遂に彼の地に行くことが出来る。
俺たちは熱気が冷めやらぬまま、次の目的地の名前を言った。
「「いざ、温泉の街『パング』へッ!」」
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