不憫なクリクソン
「このっ、馬鹿者がッ!」
「いっつぅ〜っ!」
クリクソンの拳骨が、セリカさんを襲う。ちなみに俺もやられたばっかだ。
「いくら結界を張ってるとはいえ、あの魔力出量だったら意味もないわ。そんなんで何がS級とA級だっ!?」
本当にごもっともで。ぐうの音も出ない。
「チッ、別に良いじゃねぇか。このガキが強かっただけだろ?」
「ルーロが強いのは知ってるが、それでも度が過ぎてるっていう話だ。強ければなんでもいいはずがないだろっ?」
それでもセリカさんは納得してないようで、頬を膨らまし、あからさまに不機嫌を表に出している。
が、それも一瞬でコロッと変わり、目に好奇心を浮かべて俺に近づいてきた。
「なぁ、なぁ、お前の身体能力のアレ。エリドのだろ?」
「あっ、はい。まぁそうだけど」
あまりにコロッとした様子に俺は一瞬戸惑うが、返事をする。
クリクソンは反省の色がないセリカさんに再度、拳骨を喰らわそうとするが、ヒョイっと避けられた。
「ダメダメ、そんな拳じゃあオレは捉えられない。まだガキの方が良かったぞ?」
「はぁ·····」
なんか、クリクソンって不憫だな。
まぁ、そういう星の下に生まれたということで、俺は気にせず、話を進める。
「で、セリカさん」
「セリカでいいぞ。あと、敬語も要らん。オレもルーロって呼ぶ。強い奴はオレが敬意を示さないとな」
「じゃあ俺も名前で呼べよ」
「おっさんはおっさんだ。それ以上でもそれ以下でもない」
「·····」
どうせ俺なんて·····と落ち込むクリクソンに肩を叩いて励ましながら、用件を言う。
「俺たち、望月家の場所を聞きに来たんだ」
望月家に反応するセリカは興味深そうに聞いてくる。
「それまたなんで?」
「俺たちのパーティにいるクナイ·····じゃ、分からないか。忍者が──」
「いや、クナイは知ってるぞ。望月 苦無。化け物って噂のアイツだろ?」
どうやら知ってるようだ。なら、話は早い。
「クナイの場所を知らないか? というか、望月家の場所さえ知れればいい」
「知ってどうする?」
「クナイに会って、話がしたい」
セリカは頷くとクリクソンの頭を叩く。
「おっさん、アンタも似たような用件じゃなかったか?」
「あ? あぁ、国王様に望月家の話を聞いて、俺も調べに来たんだ。セリカは俺の付き添い。目を離した瞬間に勝負を挑みまくるもんだから、皇帝に目をつけられちまった」
苦労してんだな、アンタらも。というか、クリクソンだけ。
「なら話が早いじゃねぇか。望月家を調べてんのは『魔王の意思』との関係性だろ? 俺がついでに探ってきてやるから、場所を教えてくれよ」
「··········分かった」
クリクソンは地図を取り出す。多分、帝国の地図だ。
「今、俺たちがいるのは帝国本部の冒険者ギルド。そこからこう行くと·····」
そして指で示したのは屋敷。
「ここだ。これが望月家の屋敷。帝城に最も近いから、警備が一番強い」
それなら、楽勝だ。あの時作った『八咫烏の翼』で難なく侵入出来る。
「問題は屋敷の中だが·····」
クリクソンはチラッとセリカを見た。どうやら、セリカは屋敷の内部を知っているようだ。
「オレが案内すればいいのか?」
「頼めるか?」
「··········あぁ」
少し迷った末、セリカは承諾した。
「じゃあそういう事だ。俺はしばらく帝都をぶらつく、多分皇帝の目は多少欺けるはずだ」
「後は俺たちの実力次第、か」
侵入は俺とセリカだけで充分だが、二人もクナイの事を心配して来てくれたんだ。何かしらの役割を与えないとダメだろう。
「じゃあ、レーデは脱出の手立てを頼む。最速の脱出ルートを考えてくれ。サクヤは治癒魔法を覚えたんだよな?」
「はい」
「なら、『フォンスマ』を渡しとくから、万が一戦闘になった際のサポートを頼む。それまでは屋敷の近くでスタンバイしてくれ」
「分かりました」
レーデも頷いてくれたことだし、決行は今夜。早いうちがいい。レーデの脱出ルートが完成次第、突入だな。
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