赤き閃光《レッドアクセル》
まさかセリカさんが忍者だったとは知らなかった。
道理で最速な訳だ。クナイも速いし、忍者とはスピードに特化した職業なのかもしれない。
「オラッ、他には居ねぇのか?」
セリカさんの力を見て、大半の者たちは一線を引く。
「クソッ、なんかズルをしてるに決まってるっ!」
負けた一人が負け犬の遠吠えが如くそう言った瞬間、その首元に手刀が触れる。首筋からツーと血が滴り、男はヒッと後ずさる。
「負けたヤツが調子のいいこと言うなよ。仮にオレがズルをやってたとしても、お前には口出しする権利なんてないぜ?」
その一言で、負けたヤツらが一瞬にして立ち去る。野次馬たちも終わったかと、立ち去ろうとするが。
「次は俺が相手だ」
「っ! ほぉ?」
俺が口出しするとは思わなかったのか、レーデとサクヤは驚いたように言った。
「ちょ、何考えてっ!」
「そうですよ。情報を聞けばいいだけなんですから」
確かにそうかもしれない。普通に聞けば、大半の人達は答えてくれるだろう。アックスたちのようにな。
「おっ、なんだ? オレに聞きたいことがあんのか?」
「まぁ、そうなんだけど、どうせ──」
「「俺 (オレ)に勝ったら」」
「·····とか言うんでしょ?」
俺の言葉にニッと歯を見せて笑うセリカさん。
「その通りだ。オレが好むのは強い奴だけ、王国の強い奴らとは大体終わったから、帝国に来たが、まだ骨のあるやつもいるじゃねぇか」
「残念ながら、俺も王国出身なんだ」
俺の言葉に眉を顰めるセリカさん。
「·····まぁいいや。王国にも戦ってないやつがいたってことか」
「そういうこと」
話しながら、俺は人混みの中に入る。セリカさんを避けるように空いた空間に俺は立った。
「帝都のど真ん中だけど、本気出していいの?」
「あぁ、オレが結界を張ってやるから、安心して本気を出せ」
そう言って、セリカさんは人差し指と中指を揃える。
「結界術──<無限回廊>」
瞬間、場所は変わってないが、空気が変わった。
「これで野次馬には傷一つつかない。おたくの女の子たちも安心するといい」
ただの戦闘狂だと思っていたが、周りへの配慮がしっかりとしている人のようだ。
なら、心置き無くやるとしようか。
「開始の合図はこのコインが地面に着地してからだ」
ピンッと親指で飛ばしたコインは宙を舞い、そして地面に落ちた。
「──ッ」
刹那、セリカさんは俺の懐に入ってくる。
「戦闘術──<電光石火>」
引き抜かれた刀ように、その手刀は俺に目掛けて放たれる。
「<一段階・解放>」
慌てるように言い放ち、解き放つ魔力はその勢いでセリカさんの動きを止める。
「<連撃>」
チャンスとばかりに、俺は怒涛の拳舞を繰り出す。
顔面に、腹に、脚に、反撃させる間もなく打ち続ける。
「<空蝉>」
その言葉を境に、俺が殴っていたのは空気だった。
急にセリカさんを殴っているという感触がなくなったのだ。
困惑していたのも束の間、セリカさんの回し蹴りが俺の顎に当たった。
「やべっ!」
顔が揺れる。
朧気な視界の中、セリカさんの歯が見えた。
「オラッ行くぜ──<三連撃>」
発勁が俺の腹を掴み、拳が俺の首元を打つ。そして流れるように地面にへと、俺は叩きつけられた。
「グハッ!」
「まだだっ!」
打ち付けられた俺の横腹をセリカさんの蹴りが襲う。
このままじゃ·····。
「そんなもんか!?」
──んなわけねぇだろ。
「<全開出力解放>ッ!!!」
痛みを吹き飛ばすかのように、俺は大声で叫んだ。
「いいねぇ、来な。受け止めてやる」
「後悔すんなよ」
俺の技とセリカさんの技は同時に放たれた。
「<銀滅の拳>」
「<天破>」
俺の拳とセリカさんの発勁が重なり合った瞬間、空気が、地面が揺れた。
ピキっと音が聞こえる。恐らく、結界のヒビの音だろう。だが、ここで力を抜けば俺が死ぬ。
「オォォォオオオッ!!!」
だから俺は全力で。
「オラァァァアアッ!!!」
セリカさんも全力で<天破>を放った。
そして遂に結界が壊れた瞬間、俺とセリカさんの間に誰か側って入った。
「そこまでだ」
衝突する強烈な波動の中、その人は無傷で俺の拳とセリカさんの手を掴んだ。
「『吸収する大地』」
世界最高峰の防御力を持つ男。
クリクソンがそこに立ち、そして俺たちの全力をかき消したのだった。
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