恥ずか死
「ルーロ〜」
「てめぇ、勘違いされんだろ。名前で呼ぶなっ!」
「だってさぁ〜」
ネルが俺を見るなり駆け寄ってくる。そして迷わず、俺の腰に手を回した。
「急にいなくなって、ボク悲しかったんだよ」
「てめぇが俺にそんな思い抱くはずないだろ──」
「ルーロ·····」
重々しいプレッシャー。凄まじい殺意が俺を射抜く。
「なんですか?」
「その子は彼女です?」
「そ、そそそんなわ──」
「そうでぇーすっ!」
「てめぇッ!!」
今度は俺の殺意が──
「ルーロくん?」
「ヒイッ、君付けになった!」
「むぅ〜」
おどおどしている俺を見て、あからさまに不機嫌になったクナイは今までとは違う反応を見せた。
「はっ!?」
「ルーロは、私の」
ネルと同じく腰に手を回したかと思うと、睨み合う二人。バチバチと繰り広げられる謎の事態に周囲の目も集まってきた。
「そろそろ周りの目が·····」
「やだ」
「ボクも離さないよ」
どうすりゃあいいんだよ。
俺ってば、こんな状況になったことないからどうすればいいのか全く見当もつかん。
個人的には嬉しい限りなのだが、如何せん周囲の目が痛い。これ以上は二人の事も考えて、ファーストを解放して強引に引き剥がそうとしたのだが。
「えっ? ちょ、はぁっ!?」
意地でも離れない二人。ファーストで離れないなんて相当なパワーだぞ!?
さすがにセカンドだと二人の体が危なくなるので、仕方がない。
「家に帰ろう」
腰に手を回させたまま、二人を担ぎ、全力ダッシュ。後に後悔しそうだが、この際やむを得ない。急いでパーティホームに帰ったのだった。
「なぁ、もういいだろ·····」
「この子だれ?」
パーティホームに帰って、リビングで格闘を繰り広げること三十分。むすっとした表情で、クナイは言った。
「ネル。俺の妹」
「·························ん?」
「妹」
「えぇええっ!」
クナイにしては珍しい大声。心底驚いたのか、腰から手がようやく離れた。
「どうも、ルーロ·····お兄の妹のネルです」
「ど、どうも」
悪戯が成功したっと言わんばかりに笑うネルを恨めしげに俺は睨む。
「お前が彼女とか言うから変に勘違いさせちまっただろうが」
「ごめん。お兄が女の子と歩いてたから、一芝居打っちゃった」
先程までのぶりっ子のような口調を止め、いつも通りの少し男味のある口調に戻る。
「悪かったクナイ。ネルも謝れ」
「ごめんなさい」
「·····ん、大丈夫」
そう言って俯くクナイ。
「ほら、お前のせいでまだ怒ってんだろ」
「·····いや、違うでしょ」
ネルのツッコミに俺は疑問符を浮かべる。
「は? お兄·····バカ?」
「てめぇ、兄貴にバカって!」
「こんなに鈍感だなんて·····」
信じられない物を見たような目でネルが見てくる。失礼な奴である。
「なんか、ごめんなさい。こんなお兄で」
「ん、もう慣れた」
完全に除け者にされている感が半端ない。あって数十分でここまで仲良くなられると嬉しい反面、悲しい気持ちになる。
だって、ずっと一緒に居た俺よりも二人が共感し合ってるもの。
「それにしても·····『私の』ってのは妹として将来に安心したよ」
「んなっ! 滅多なことを言うなって!」
「うぅうぅ」
顔を赤くさせ、俯くクナイ。その姿は可愛いが、ネルは更に面白がるように続ける。
「しかも腰に抱きつくなんて、パーティメンバーだけの存在が凄い積極的だよねぇ」
「うぅうぅう」
ヤバい、頭から蒸気が発せられている。
「極めつけに『やだ』って、もぉおう可愛いんだからっ!」
「あううぅっ!」
死んだ。クナイが死んだ。恥ずかしさのあまり、倒れてしまった。
「お、おい、しっかりしろっ!」
「ごめん、からかいすぎた」
〝恥ずか死〟したクナイを持ち上げ、ベッドに連れていく。道中、「お持ち帰り?」などと反省した様子も無くネルが言ってきたので説教をしたのだった。
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