いつもと違う日常
一方その頃のルーロの視点です。
目覚めると実家の部屋とは比べ物にならない程の広々とした部屋が広がる。
設置された窓からは太陽の光が刺す中、俺は起き上がった。
「うん、いつもと変わら·····」
ない朝だと言おうと思ったが、意識が覚醒していくにつれ、ある事実も同時に呼び覚まされた。
「クナイと二人きりだ、と·····?」
自分で言ってて疑問符を浮かべるのは不思議な話だが、それぐらいの衝撃だった。
「·····どうする、俺。どうしたらっ!」
動揺する俺を更に揺さぶる神のイタズラが如く、扉が開かれる。
「おはよ、ご飯食べよ」
「あ、あぁ」
クナイが入ってきたのだが、至っていつも通りな彼女に驚きながらも頷く。
俺の姿を確認し、クナイは下に降りていった。
な、慣れない·····。
パーティホームもそうだが、貰って直ぐにパーティの二人が消えるとクナイと二人きり。言えば、同棲カップルな感じな訳で、俺の心臓はバクバクとうるさい。
クナイ、よく俺と二人きりの状況なのにあんな余裕そうな顔で、部屋に入ってきたんだ。
意識されていないのか? ·····やめろ、俺。これ以上考えるな。考えれば考える程虚しくなっていく·····。
「もういいや、飯作ろ」
切り替えて俺は着替える。
上を脱いだところで、再度、扉が開かれた。
「あっ、忘れてたけ、ど·····?」
途端に頬を赤らめていくクナイ。顔全体に熱が行き渡ったところで、ようやく我に返った。
「えっ、あっ、ごめん。下で待ってるっ!」
·····フッ。
俺としたことが男であることを意識させてしまうとは。
最悪の場合であるが。
「·····」
「·····」
本来なら楽しい団欒であろう朝食が、無言で淡々と行われていく生き地獄。
何とか話を切り出そうと頭を悩ませるが、一年間師匠と過ごしていたがために、話の話題が『魔物の殺し方』ぐらいしか思いつかない。
「·····」
き、気まずい·····。
そんな俺を察してか、クナイは話題を出してくれた。
「る、ルーロは村でどんな感じだった?」
思えば俺の話はほとんどしないので、無難な話題とはいえ、クナイには感謝しかない。
「俺はなぁ·····家族が父さんと母さんと妹の四人家族だな」
「へぇ」
「村では特別することも無いから、レーデたちと遊んでたよ」
「そうなんだ」
「「·····」」
·····話が終わりましたぁ。
ごめんね、話が下手くそで。いや、クナイの事も聞けばいいのか。
「クナイはどうなんだ?」
「·····ん?」
「家族とか」
「·····ん。家の事情で詳しく言えない。けど、お母さんは優しい人だったよ」
「そうか」
「ん」
地雷踏んだかも·····。
俺としたことが深刻そうな雰囲気を作り出してしまった。
「め、飯も食い終わったし外にでも行くか?」
「ん」
はぁ、これじゃあつまらない男と思われてしまう。何とかしなければ──
そ、そうだっ!
「服買いに行こーぜっ!」
「服?」
「あぁ、装備品は充実してるけど生活服がないだろ?」
我ながらいい案を出してしまった。
「私、王都に詳しくないよ?」
「大丈夫。この間、ミーヤと──」
「ミーヤ、さん?」
「さっ! 気にせず行こうか」
クナイのジト目が凄い。ずっとこっちを見続けている。
「ほ、ほら、行こうぜ。なっ?」
「あっ·····うん」
手を繋いで、歩き出す。
少し強引だっただろうか? クナイも下を向いてるし。で、でも、はぐれないようにっていう口実の元だから大丈夫か。
さて、そうこうしている内に王都でもかなり有名な服屋に来た。
結構広い店らしく、ミーヤ曰くかなりいい服も安く手に入るらしい。
「いらっしゃいませぇ。可愛い彼女さんですね。服をお求めですか? そうですよねぇ。ささっ、彼女さんはこちらにぃ〜」
「えっ、あっ? あれれ〜」
入店して数秒、いつの間にかクナイが攫われた。
店員さんだから大丈夫だと思うが、試着室でクナイの戸惑う声が聞こえてくる度、服屋の店員さんがいかにグイグイ来ているのかが分かる。
「まずはこれっ!」
しばらくしてようやく二人が出てくる。
俺の目に入ったのは見覚えのある服。
「パーカーじゃね?」
「お客様ご存知なのですっ!?」
「えっ、あっ、はい」
「以前にですね、パーカーを来た少女を見かけまして早速作ってみたのですよ」
確実にサクヤやんけ·····。
「でも少し形が違う気が·····」
「はい。その時、パーカーだけで過ごせるように少し改良しましてスカートと合体したパーカーワンピースにしましたっ!」
地球でもあるって聞いたし、便利そうだもんな。
「彼女さんはラフな格好の方が良かったと思いましたので、こちらを選ばさせて頂きました」
「クナイはどうなんだ?」
「ん、動きやすい」
その後、何着も何着も着せ替え人形の如く、繰り返され、一時間。
その中の何着かを買って、何処かで昼飯でもと思ったのだが思いがけない人が居た。
「··········あれ? ネル·····?」
「あっ、ルーロだぁっ!」
瞬間、殺意が俺を貫いたのだった。
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