閑話 サクヤが作る魔法
二週間後に冒険者試験を控えた今日この頃、サクヤは頭を悩ましていた。
「どうすれば良いのでしょうか·····」
両手で頭を抱えて悩む姿は、見てて痛々しい。
「どうしたんだい?」
「·····サヨさんですか。いえ、魔法が作れなくて·····」
悩みの原因は魔法の研究だった。
時間が無いというのに、一向に姿が見えない魔法にサクヤは焦りながらも必死に頑張っていたのだが、とうとう二週間後に控えた今も、一つも出来ていない魔法に悩んでいたのである。
「金髪の小娘は我流で魔法を学んでいたのだったか?」
「·····はい。教えてくれる人が居なくて」
「その時の小娘はどう言った気持ちだった?」
サヨの問いにサクヤは昔を思い出す。
自ら進んで入ったとはいえ、薄暗い牢獄の中、たった一人で過ごしていた毎日。誰も来ないという圧倒的孤独を耐えながら過ごしていた時、それはあった。
石の間から芽吹いた小さな花。弱々しく、直ぐにも無くなってしまいそうな儚い花。
それが木属性の魔法であると理解した時は、エリドが居た。
分からないなりに頑張って説明してくれて、それが妙におかしくて。楽しかった。
「──充実してました」
いつの間にか笑みを浮かべていたサクヤに、サヨは満面の笑みで言った。
「それだよ。辛い時は楽しかった時を思い出す。初心に返ったのなら、見えてくる道もある。物事を短く捉えるんじゃない。時には過去も未来も含めた長い期間として捉えるんだ。そしたら、後は今を見るだけさね」
「ありがとうございます」
サヨからのアドバイスを貰い、サクヤは楽しかった日々を思い出す。
暗闇の中、生えてきた一輪の花。それがきっかけで魔法に気づけた。
「融合·····」
「それは面白い試みだねぇ」
自分に気づきを与えてくれた闇と木を、一つに。
「サヨさんも手伝ってくれませんか?」
「もちろんだよ」
早速、研究に取り掛かる。
魔法を極めるのに必要なのは、それを理解する事が大切である。属性の本質を見極めて、メリットを見出し、魔法に繋げる。
「攻撃力はルーロ様、移動性はクナイが、相手の撹乱をレーデが努めるのなら私は·····」
「良いねぇ、その調子だ」
魔法を開発すると言っても、使い道のない魔法を作ったって意味が無い。属性の本質と用途を合わせて、それを実現させるのが重要だ。
「私はサポートをしたいです」
「ほぉ、それで? どんな効果を求める?」
医療魔法術士と呼ばれる存在がいる。それは自身の属性の本質を知って、それを治療に繋げた者たちの総称である。
付加魔法術士と呼ばれる存在がある。それは自身の属性の本質をエンチャントと呼ばれる付加魔法に繋げた者たちの総称だ。
このように一言でサポートと言っても、種類がある。医療魔法術士なのか付加魔法術士なのか、考えに考えた結果、サクヤは決める。
「私は医療魔法術士になります」
「じゃあ融合魔法で治療の効果を発揮する魔法を考えなくちゃねぇ」
木属性の本質は人によって違う。木属性をツタと連想すると拘束が本質となり、逆に棘を連想させると攻撃となる。
各々で見出す本質を医療にへと繋げる。
「木属性の本質は〝癒し〟。見る者の心を癒す。それが植物だと思うのです」
「面白い考え方だね」
「そう、ですね。でも、あの時私にとって一輪の花は希望の花でもありました。だから、今度は私が怪我をするかもしれないルーロ様たちの希望になりたい」
紆余曲折を経て、それは完成した。
「出来ましたっ!」
「これは驚いたね。こんな植物があったなんて·····」
その魔法を目の前にしてサヨは驚く。
「地球にこれがあると聞いたのを思い出して作りました」
地下の工房で花びらを舞わせる一つの木。
「木属性の〝癒し〟と闇属性の〝幻想〟を合わせた私だけの医療魔法」
暗闇で淡く光る桃色の花弁。それは華やかなに舞い、その場にいるサクヤとサヨを癒す。
「名前は──『夜桜』っ!」
また一歩、強くなったサクヤは一人思う。
(今度は貴方の光に·····ルーロ様)
そんな少女を祝福するかのように桜の花びらは舞っていた。
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